176: 再戦⑥ ~障壁が、通用しない~
障壁が壊れなかったため、新種の魔物はさらに頭を後ろに反らした。背中から思いっきり反って、新種の魔物の真後ろにも張ってある障壁にぶつかるギリギリまで反らしている……!
それからためらうことなく頭で――硬い部分であるペリドットを使って、障壁に頭突きしようとした!!
「ギャーー!!!」
私は思わず障壁を消した。
全部、消しちゃった……。
もう、慌ててしまって……、怖くて……!
新種の魔物の頭突きは、障壁を消したことでスカッと空を切る。勢いをつけていたので前につんのめっていた。ということは今の攻撃は、ペリドットに当たらなかったということだ。
ね? そうだよね!?
ただ、新種の魔物は足を踏ん張って転ばなかった。
障壁がなくなったことにニヤリと笑い、「キャーーッキャッキャ!」と喜ぶ。
その額に、光が反射した。ただその反射の仕方は少しおかしい。
原因はすぐわかった。
顔がこちらに向いていたし、かすかな月明かりでそれが見えたから。
――ペリドットが……、
ペリドットが、やっぱり割れていたのだ……!
「うわ~、自分の額の石が壊れても気にしね~のか~」
「シャーロットの障壁もこういうときは使っちゃだめなんだね。……結構、イってるね」
ゲイルさんとマルタさんが気の抜けた声を出した。
マルタさんの「イってるね」は、ペリドットの割れ具合のことに違いない。
他の二パーティーからも「うわ~」や「マジかよ……もったいなっ!」と落胆をふくんだ声で叫ばれた。
「知恵のある魔物とはわかっちゃぁいたが、額の硬い宝石部分で障壁を壊そうとするとはな。……よし、わかった。お前ぇらも戦闘に加わってくれ!」
バルカンさんは他の二パーティーにも参戦を許可した。
『羊の闘志』のメンバーたちもリーダーの決定に逆らうつもりはないようで、文句は出なかった。
二パーティーは喜び勇んで新種の魔物の元に駆ける。
彼らは「おぉぉ~!」と雄たけびを上げ、「シャーロット大丈夫だ、これ以上壊れないように丁寧に戦ってやるからな!」と私を一応励まし(てくれているのかな?)、「名声を手に入れるんだ!」「名前を売るチャンス!!」と明らかな本音を叫んで新種の魔物と相対する。
彼らは打ち合わせをしてないのにもかかわらず、落とされた魔物の首から本体を離そうと少しずつ遠くへ誘導していた。
「……おい、シャーロット! 放心するのはあとにして、その落とした首と腕を守っていてくれ!」
バルカンさんは転がっている新種の首と腕を指差した。
そうだ、さっき彼が仲間と落とした首には奇麗な状態のペリドットがついたままだ。
あれは絶対に守らなければ!
って、私は放心していませんよ。
ただ……、ただ皆さんの動きを見ていただけです。
避難所で読んでいた二人と、唸っている一人。
メロディー「まぁっ、三巻ですって!ご覧くださいまし、表紙でシャーロットさんが空を飛んでいますわ!」
フェリオ「12月3日、金曜発売」
タチアナ「う゛ん~……。とらのあな……メロンブックス……特典が……っ」