173: 再戦③ ~手伝うだけですが…~
彼ら『羊の闘志』たちが言わんとしていることは、もちろんこのこと。
戦う者たちの暗黙のルール『先に出会って仕掛けたパーティーに、その魔物と戦闘する権利がある』という主張だ。
「……で、でも、今さっき倒しましたよね? いくら復活したからといって、そのまま継続しなくても……さすがに二回目の戦闘ということになりますし、人手を増やして早く倒したほうがいいと思うのですが……?」
私は障壁を消すことなく訴えた。
いくらなんでも頑固というか……頑張りすぎでは……?
それに、私にはわかります。体力も魔力も、皆さん結構減っていますよね?
戦闘中、傍から見ればおちゃらけていた様子でも、長時間魔物の進行を止めながら戦っていたことは知っています。
さっき新種の魔物の首を飛ばしたところで戦闘を終えるつもりだったはずだから、相当疲れてますよね。
「二回戦だろうが三回戦だろうが、これは同じ魔物だ。なら、俺たちがまた最後までやらねぇとな」
「え、あの……、『羊の闘志』さんの実力をまったく疑ってないことは先に申し上げておきますが……、それでも私の障壁があれば、この二回戦目でもさらに奇麗に倒せるんじゃないでしょうか。あんな大きなペリドットなんですから、今回も奇麗な状態で手に入れたくないですか? もちろん、私が手に入れたいわけではないです!」
私が少々必死なのは、少しでもフェリオさんのご機嫌を取……興味を、私からペリドットへと逸らしたいからだ。
フェリオさんには私の秘密がバレているし、『魔物を町に入れない』という約束が少々微妙な今(すぐ倒されたとはいえ蛇も熊も入ってきちゃったし)、ぜひここは、二つとも奇麗な状態でギルドに持ち帰りたい。
フェリオさんに見逃してもらいたい……!
「……やけに熱心だな。シャーロットも『魔物図鑑』に名前を載せたいのか?」
えーと、バルカンさんたちに真相を伝えたら呆れられそうだから黙っておくとして……。
それより私「も」ということは、バルカンさんたちは『魔物図鑑』に載せることを意識していたようだ。
う~ん……、新種の魔物退治に関わるとなったら、私の名前も『魔物図鑑』に載っちゃうのかな……? そりゃぁ載っちゃうよね……。
え~と、それはまずいんじゃないかな? よくない……。
私だってそこの新種の魔物ばりに変わったスキルを持っているから、変に目立っていろいろバレたら困る……。
では最近地味にやっているかと思い返してみたら、そうでもないような気もするけど……、とにかくっ図鑑に名前が載ると間違いなく注目される。その可能性があるのは確かだ。
「いえ、図鑑に名前を載せる気はないというか、むしろぜひ載せないでいただきたいですけど……」
それよりも今、「注目」「目立つ」……に何かがひっかかったような。
……あ、そうだ。
「そ、それより、早く終わらせてコトちゃんたち、学園生たちを助けたほうがいいと思いませんか?」
ガン無視されている新種の魔物が、宣伝したそうにこちらを見ている。
新種「キィーィエ!(12月3日に三巻だって~! 俺も出せー!)」
オバケ「ふぇフェふぇ!(「出せ」って、『障壁から出せ』と『マンガに登場させろ』をかけてるんですな? うまい!ザブトン一枚ですぜ!)」
シャーロット「なんだろ? 盛り上がってる……」