170: お帰りなさい⑩ ~まだ終わってません~
さて隣のオバケのことは放っておこう。
目の前の戦闘で変化がおこりそうだからだ。
バルカンさんはマルタさんたちに視線を送った。
ゲイルさんの行動を逆に利用することにしたようだ。それは彼が再度攻撃をして外したあと、彼に追い打ちをかけようとする新種の魔物の横から、マルタさんが飛びかかったことでわかった。
マルタさんは新種の魔物がゲイルさんに攻撃することを見越していたようで、魔物の右側から攻撃をする。
「ゲイルにできて、あたいにできないわけがないからね!」
マルタさんは残った右腕を狙う。
その攻撃を新種の魔物は避けたものの、その動きによってゲイルさんが何かを発見した。
「おっ、手のひらケガしてるぞ! もっと傷口広げてやるぜ~!」
たぶんアルゴーさんが城壁に投げられる前に、突き刺したときのものだろう。
そこをゲイルさんが狙いを定めて同じ位置に攻撃する。
新種の魔物が手から血をまき散らし、動きを止めた。
ほんの少しではあってもその停止は、新種の魔物にとって致命的なものになった。
「――ンブゲエェェェ゛!!」
後ろに回ったバルカンさんが、新種の魔物の背中を踏み台にして、首の後ろに剣を突き刺したのだ。
新種の魔物が悲鳴を上げながら右手を後ろに回そうとするも、それを仲間たちが外から魔法で阻む。
そのおかげで、ゲイルさんとマルタさんも攻撃がしやすくなった。
バルカンさんが素早く退くと、ゲイルさんは新種の魔物の左から、マルタさんは右へと回り込み二人交互に新種の魔物の首へと刃を閃かす。
先にゲイルさんがその魔物の首を半分ほど切り裂いた。
続いてマルタさんがそれだけでは済まさないと斧を振り下ろして、残りを切断する。
私はそこまでをばっちり見てしまい(目をそらし遅れちゃった……)、あとはその首が落ち、液体がしぶきをあげた音、残った胴体が倒れた振動が響いた。
「おーっしゃ~~!」
「やったね!」
私は一度目をそらしたものの、ずっと目を背けてはいけない理由があるのでそろりと前方を窺う。
力なく倒れた新種の魔物を前に、ゲイルさんが雄たけびを上げ、マルタさんが斧に付いた血を払っていた。
「――だいぶ長引いちまったが皆、今回はいつもより慎重に戦わないといけなかったところ、よくやってくれた。新種の魔物を倒せたのは皆のおかげだ!」
バルカンさんがメンバー全員を称え、喜びを分かち合おうとしている。
近辺では、ファンタズゲシュトル亜種をどうにかしようとしていた騎士団の人たちや、『羊の闘志』が戦闘続行不可能になったら加勢や交代をしようと狙っていた冒険者たちもいて、こちらに集まろうとしている。
私としては彼らの功績を称えたい。
でも――。
「……ふぃふぃ、……ふぃふぃふぃふぃ……」
私の隣では、自分のボスが倒されたというのに、ファンタズゲシュトル亜種がひっそりこっそりと含み笑いをしているのだ。
攻撃性のないただの笑い……。この笑いの真意を、私はわかっている。
ファンタズゲシュトル亜種が、なぜ忍び笑いをしているのか。――新種の魔物が持つ、あのスキルが関係しているのだ。
「シャーロットも、そこのオバケを閉じ込めてくれてありがとよ!」
「――バルカンさん、皆さん! 喜ぶのはまだ早いです! まだ戦闘態勢を解いてはいけませんっ、そこから離れてください!! ――まだ、終わってません!!」
彼らの気を、絶対に緩ませてはいけない。
だから私は鋭く言い放った。
おまけ:学園生くいず
カラク「次の問題はボードに書いてね。問題! フォレスター王国の主要な町を書きなさい」
カラクの横で、大人冒険者が何やらコミックchapter42の宣伝ボードを掲げる。
カラク「君たちが書いているあいだにコミック更新のお知らせだよ」
コト「絶対、答えて……ん? あ、アレ見て!」
ワーシィ「何や! 時間制限が……あ!」
シグナ「ちょっと! 状況わかってるの?! ……え、まさか!」
そこには、とある1pが載っていた……!
コト、ワーシィ、シグナ「えっ、ボクたち・うちら・私たちが載ってる!!!」
三人はキャーキャー言いながら、『キラキラ・ストロゥベル・リボン』のデビューだー!
と喜んだ。
カラク「……はい、タイムアップ! こらこら、問題に集中しないとだめじゃないか」
コト・ワーシィ・シグナ「んな~~! 大人はズルイ(っす)!!」
――気になった方はぜひご覧いただければ嬉しいです。
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