表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/231

165: お帰りなさい⑤ ~ダイナミックただいま!~


 私は回されているバルカンさんから、仲間たちのほうへ視線を移動することにした。

 きっと「いやいや、リーダーはああ言ってるけど助けてくれ!」と懇願しているはず。……ところが仲間たちの反応は、全員「手を出すなよ?」と顔に出ていた。


「うちのリーダーは頑固と頑強が売りなのさ。少しの援護もいらないよ!」


 マルタさんは斧を振りながら大声で答える。

 バルカンさんが投げられないように新種の魔物の行動を牽制しつつ、私には釘を刺しているのだろう。

 え~と、新種という大変珍しい魔物との戦いであり、自分たちのパーティーだけで倒したいという思いはわかるけど、この状況でも援護はいらないと……?

 マルタさんや仲間たちは、そんな私の戸惑いには目もくれず新種の魔物と対峙する。


「さっさと手を放しな!  オラァァ!!」

「フォッフォ、足ががら空きじゃぞ。そのまま持っていてもよいことはないぞい!」

「うちのリーダーを簡単に投げられると思うな」

「リーダーもねばりが大事だわ。やられちゃったら、うちのパーティー名が『もこもこ羊たたかうぞ♡』になってしまうわよ。フフフ」


 仲間たちはバルカンさんが投げられないよう、囲んで妨害している。

 あまり後ろに回り込むとファンタズゲシュトル亜種がいるので、新種の魔物の正面からその横にかけての範囲内ではあるけど、おかげで回す速さが弱まり、しまいにはただ持つことしかできなくなっていた。

 バルカンさんも少し余裕を持てたようで、「さては、『もこもこ』が、気に入ったなぁぁ?」とはっきり言えている。

 私は『もこもこ何たら』がかわいいなぁと思ったけど、今は気にしないでおこう。


「俺のことは気にするな! もし投げるようなら必ず隙ができる! そんときぁこいつの首を叩っ斬れぇぇ!!」


 バルカンさんは自身が投げられてしまった場合のことも考え、残りの仲間で始末をつけるよう指示を出す。

 バルカンさんも脱出を試みているけど、どうやら剣が引っかかっているようで難しそうだ。遠距離武器は掴まれた際に落としている。


 それじゃあ私は、もし投げられてしまう事態になったとき、せめて遠くに飛ばされる前に近場に障壁を張ろうか?

 いやいや、新種の魔物は力が上がっている状態だ。近距離だと「ビターン」と音がするだけでは済まない。

 じゃあ、バルカンさんが真正面からぶつからないように、障壁に角度をつけて調整……なんて器用なことをする時間的余裕はないか。

 団長さんの風魔法を頼るには、ここから城壁までの距離からして連携がとれないし……。

 それなら、そもそもの原因であるファンタズゲシュトル亜種の謎の応援を止めようか?

 ファンタズゲシュトル亜種の様子は……と張り付きが見える場所にまたそっと移動したのだけど、どうにも無理そうだ。

 新種の魔物の後ろにぴったりくっついているから、そのあいだを障壁で阻めるか怪しいし、今手の内を見せて障壁を警戒されたら、このあと閉じ込める作業が困難になるかもしれない。

 それにしても新種の魔物はあんなに近くで応援されて、背後霊に憑かれているように見えるんだけどうっとうしくないのだろうか……。まぁ、応援というより力アップボイスみたいなものだけど。

 上空は……雲の形と進む方向から、まだまだ暗くはならなそうだ。

 バルカンさん以外の()()はねばれるだろうか。

 腕を振り上げたらさすがに横から障壁ではたいて…………ん?

 私、数え間違えた?


 ――バルカンさん以外の、五人(・・)――?


 バルカンさんは魔物に掴まれていて……、それを阻止する仲間たちは四人で……。

 ――でも。


 それでも私にはわかった。

 なぜなら他の魔物がいないか、先ほどから『探索』スキルを使っていたから。

 魔物に捕まっているバルカンさんを抜かした仲間の五人目――つまり、『羊の闘志』六人目は北から走り寄ってきていた。


 すぐそこだ。

 バルカンさんを掴んだ新種の魔物の腕が振り上げられ、周囲の仲間たちが焦りを表したとき、道に生えてある木の奥がギラリと光る。


「――リーダーを、放しやがれー!!」


 ここにいる者たちが、バルカンさんが飛ばされると覚悟したであろうその瞬間、投げられる音とは程遠い明るい声と、何かを切り裂く鈍い音が響いた。

 私には、彼が木の陰から瞬時に躍り出て、剣を振り切ったのが見えていた。

 それは学園生が来るずっと前、召喚石事件よりも、インペリアルトパーズジャガーが迷い込んだときよりも前に、王都に旅立った『彼』だった。


「ただいま~!! これぞ、英雄のご帰還だぜ~!!!」


 その彼が着地して、自分の仲間たちに元気に挨拶する。

 この、調子が軽くて周りを明るくする雰囲気が、とても懐かしい。


 お帰りなさい。

 やっと帰ってきましたね。――ゲイルさん!



コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』

chapter39が更新されました。

今日はヤキトリだ!――では済まなかった……。

下記のよもんが様のサイトへ、ぜひお越しくださいませ。


スマホサイト マンガよもんが 転生した受付嬢のギルド日誌

https://www.yomonga.com/title/883


(コピペのお手間をかけます)


――・――

『もこもこ羊たたかうぞ♡』の話題は、137話にて……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コミカライズ5巻は4月5日発売!

コミカライズ5巻&書籍情報

コミカライズ4巻は6月3日発売!

コミカライズ4巻&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

――・――・――

コミカライズ1巻発売中!

書下ろしマンガも入ってますよ!

コミカライズ1巻&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

↓こちらは2~3巻

コミカライズ2巻&書籍情報

コミカライズ3巻&書籍情報

☆☆

コミックは、ただいま連載中です。

お手数ですが、↓下記のアドレスをコピペして、スマホでご覧ください。

https://www.yomonga.com/title/883

☆☆

↓下の画像は小説1~2巻の情報です。

カバーイラスト&書籍情報

2巻のカバーイラスト帯付き&書籍情報

お店で本を探す際、こちらの画像をご参考くださいませ。

◆◆

↓ランキングに参加中です。

押していただければ幸いです。


小説家になろう 勝手にランキング

◆◆

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ