164: お帰りなさい④ ~バルカンさ~ん~
うーん……このスキルもあるのか、これもまた珍しいし、発動したら結構大変――面倒だ。
(すぐに『羊の闘志』の皆さんに……いや、今は言えない。今それを伝えるのは不自然だ)
これから起こることは彼らに今、伝えられなくても間に合わせられる。彼らを援護することはできるはずだ。
とにかくやはり、城壁から下りてきてよかった。
新種の魔物がファンタズゲシュトル亜種にさせていることも、城壁の上からでは難しかったし、遠くからでは知り得なかったスキルを発見できたのだから。
それにしても、新種の魔物がファンタズゲシュトル亜種の支援がないと、木さえ持ち上げられなくなったというのはなぜなのだろうか。
戦いの序盤では熊どころか大蛇を飛ばしていたのに……。
そういえば私は、新種の魔物が来たくらいに体力や力の数値を千里眼メガネ越しで見ている。
そのときからは体力があきらかに減っている。――疲れが出てきているということだ。
最初に見た数値をはっきりとは覚えてないけど、戦いで――『羊の闘志』の皆さんの奮戦によって徐々に削られていったのだ。
もしかしたらファンタズゲシュトル亜種を前に出すのは、新種の魔物自身は周囲の様子を窺いつつ、その間戦わなくて済むから体を休めるという事情もあるのかも……?
そういうことなら、最後まで『羊の闘志』の皆で片付けたいだろうからまずは任せよう。
私はファンタズゲシュトル亜種を捕まえることに集中すればいい。
そのオバケは声援を新種の魔物に向けつつも、私をたまに見ている。
とりあえず今は暇だから、曇りになったらこっちに来てくれるようにびびっているように見せておこうかな?
「やだぁ、怖~い!」
おっ、見てる見てる。
暗くなったらタチアナさんを参考にして「キャー! オバケ~!」と叫ぶ用意もしておこう。
そうだ、叫ぶ場所――捕獲場所も考えておかないと。
ファンタズゲシュトル亜種を捕まえる障壁は、ほんの隙間もないようぴっちり作らないといけないうえに、障壁を作るときは障害物がない場所でやらないといけない。
つまり木の枝や葉などが密集するところでは作りにくいということだ。
できれば通りにいるあいだに捕まえておきたい。
ところが捕縛の順序を考えているとき、切羽詰まったマルタさんの声がした。
「リーダー!!」
バルカンさんがいったいどうしたのだろう……。
私は今まで注視してこなかった『羊の闘志』たちの戦闘を状況を見た。
すると、なんとバルカンさんが新種の魔物に足を掴まれていたのだ。
私は当然、新種の魔物に近寄った。さすがに助けが必要だろうから。
新種の魔物の頭から障壁を落とそうか、掴んでいないほうの腕側から横にはたこうか……。
しかし障壁を用意する私に反して、肝心のバルカンさんはこう怒鳴る。
「シャーロット! いいかぁ~!? 絶ぇっ対ぇぇ、手ぇ出すんじゃぁぁねぇぞ~~~ぉ!!!」
回されながら大声を出し、舌をかまないか心配になるくらい声がぐるぐる回っている。
バルカンさん、足を掴まれて振り回されているのに、助けが必要ないわけないじゃないですか……!
コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』
chapter38が更新されました。
メロディー、ドン引くの回。
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(コピペのお手間をかけます)