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160: 光と闇を活かす?⑨ ~『魔物図鑑』に載せるために~


 周囲がどよめく。


「……あなたは、光魔法は使えませんよね?」


 騎士団長さんは訝し気に私を見る。


「もちろん使えません。ですが――捕まえることはできます!」


 周囲の騎士たちの視線もビシビシ感じるけど気にしない。


「先ほどは、新種の魔物を追いたいかのごとく言ってしまってすみません。ですが私、よく考えてみました。そしてこの考えに至りました。『新種の可能性のある魔物』は、あの大きな猿だけではなかったんです! 私はオバケ――もとい、ファンタズゲシュトルも亜種だと疑っているんです」


 亜種だと確信しているけど、これは『鑑定』スキルの表示で簡単にわかるものであって、他の人ではよく調べないとわからない。だから「疑う」にとどめておく。

 続けて力説した。


「それならば捕まえて、皆さんと近くで見物し、真偽を確かめたほうがいいはずです!」


 大勢で検証するという行為はとても重要だ。


「うちのギルドマスターが会議のときにお伝えしましたが、新種の魔物や既存の魔物の亜種が現れた場合、一定数の目撃証言と姿絵が必要です」


 実は戦闘前の会議では、魔物の数や、配置の確認や、アルゴーさんの奇行的突撃が行われただけではなかった。

 我が冒険者ギルドのギルドマスターも、新種の魔物が現れた際、倒すときの留意事項などを話していたのだ。

 というのも新種の魔物が現れた場合、いくつか決められた項目を報告し、提出物を出すことで、『魔物図鑑』に載せられることになっているからだ。

 新種だと思われる魔物の身長・体重、行動の特徴などを報告し、姿絵とその魔物の特徴がわかる体の一部を提出することでそれが叶う。


 だから、できるだけ新種の魔物を『奇麗』に倒すよう、くれぐれも木っ端みじんにするような大技はやめてくれるよう、ギルマスはあの会議で伝えていた。

 もちろん危険を冒してまでこだわらなくてもいいけど、現在その魔物に当たっている彼ら『羊の闘志』は、可能だと判断しているはずだ。

 先ほどから新種の魔物狩りがはかどらないのは、ファンタズゲシュトル亜種の動きもあるけど、『羊の闘志』の皆さんも、何とか原形をとどめるように『奇麗に』倒し、『魔物図鑑』に載せたいと考えているのだろう。あ、あと額のペリドットのこともあるだろうし。


「今『羊の闘志』たちが当たっている新種の魔物の他に、ファンタズゲシュトルもいつもとは違う種類と考えられます。だから、ぜひ捕まえて皆さんで観覧し、『魔物図鑑』に載せる手続きを踏みたいのです!!」


 タチアナさんももう近くにいないから、捕まえてもうるさくないし、ゆっくり観察できる。


「特に一定人数の目撃証言というのは、『至近距離で』ということが大事になります。ですがあそこにいるファンタズゲシュトルは攻撃範囲が広いし、捕まえてもちょっとの隙間で出てきますよね? それを解決できるのが私です!」


 あの混乱ボイスは障壁で防げるし、そもそも私には効かない。障壁も、隙間なくぴっちりと閉まった箱障壁を作れるのだから逃げられることはない。


「しかもご覧ください。空模様を!」


 明るくなったり暗くなったりを繰り返していた空は、風の流れからしてこのあとは曇りが続くと思われる。


「急いで行かないと、こっちが不利になりかねません!」


 団長さんが腕を組み、渋い顔で城壁に下り立つ。


「しかし新種の魔物に大型の魔物を――特にグラスアミメを投げられたときのためにも、あなたはここにいて……」

「アルゴー・ネプトがグラスアミメサーペントに到着! 新種の魔物から離しつつあります!」


 団長さんが心配事を最後まで言う前に、ジッキ・ヨウさんの報告が響く。

 遠くから「メロディーのコート!」とか聞こえた気がするけど、空耳だろう。


「……しかしですね」

「あ、そういえば!!」


 まだ渋る団長さんに引き止められる前に、さらにおいしい情報を足す。


「討伐者のお名前も、『魔物図鑑』に載るんですよ! 当然、団体名――我が町の騎士団のことも!」

「…………」


 周りがざわめく。

 会議に出席してない人にとっては、初耳かもしれない。


「うちのギルドに『魔物図鑑』を収集している者がおりますけれども、何十年どころか何百年前の物まで持っているんです。つまり何百年も、何千年もその記録が残るということです! すごくないですか!?」


 フェリオさんのお家の、天井まで届く本棚を思い出した。

 あの中の一冊に入ると考えると誇らしい。


「私がファンタズゲシュトル亜種を捕まえれば、アーリズの騎士団のお名前が広く国内外まで知れ渡ります! アーリズに住む者として私も鼻が高いです!!」


 すると団長さんの周囲が、声を上げてくれた。


「行かせてあげてもいいじゃん!」

「団長、ええやないですか!」


 カップル騎士二人がまず賛成してくれた。

 他の騎士たちも賛同してくれている。――しかし、団長さんの冠羽は逆立った。


「貴様らーっ、騎士の本分は領地を守ることですよ!! それを、名前を売りたいなどと! 恥を知りなさいっ!! ――シャーロット嬢、うちの者たちを担ぎ上げても無駄ですよ。あなたは、ここで、城壁の守りです!!」


 げ、しまった。逆効果だったか。最後は区切るように叱られちゃった。

 冒険者は名前を売ることに重きを置くけど、騎士の立場は違かったね……。


「団長! 北から緊急報告!」


 私は別の理由を探さなくては、と考えるもまったく思いつかなかったとき、別の報告部隊さんが団長さんの注意を引いてくれた。

 私もどう重要な報告なのか気になるけど、この隙に下りちゃおう!


「行ってきまーす!」


 団長さんと私のあいだには、さっき団長さんに詰め寄った騎士の皆さんがいる。

 身動きが取れないのをいいことに、私は先ほど作った城壁の下まで続く障壁階段を走り下りた。

 さっき作っといたから一直線に走り抜けよう!


 ……あれ? なんか忘れてないっけ?

 たたたっと走ると、途中で片足が――すこん――と、抜けた。


「――――っ!??」


 障壁階段が……途中で、ない――――?!?!?


 あれ、

 私、……階段、

 最後まで作ってなかった……っけ……?


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