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159: 光と闇を活かす?⑧ ~んーとえーと~


 私はびっくりして双眼鏡から思わず目を離した。


「壁張り職人、遊んでないで、さっさと返しなさい!!」

「遊んでいたわけでは……わっ、お返しします!」


 いたって真面目に報告していたのだけど、団長さんの目がくちばし並みに鋭かったので、すぐお隣に返した。

 ジッキ・ヨウさんも勢いよく私の手からもぎ取り、新種の姿を追っている。


(え~と、新種のほうに行こうかな)

 この場からささっと逃げようと、城壁から地上に続く階段を作ろうとしたんだけど……。


「駄目です」

 団長さんが私の進むほう――つまり城壁の前方に立ちはだかった。

 羽を広げて目の前に立たれると、かなり圧迫感がある。

 さっき双眼鏡の前に陣取られたときもだけど、彼は飛んで、とおせんぼしているのだ。


「貴女は、今夜、城壁の守りだと先ほども言いました。まさか忘れたわけではありませんね? ここから離れるのは許しません!」


 このまま階段を作って前方に走り出しても、空を飛べる団長さんのほうが有利だからすぐ戻されてしまうに違いない。

 何とか納得していただいたうえで、城壁を下りる方法はないかな?


「え~と、その……これには理由があってですね……」

 ん~と、えーと……新種の魔物の姿を近くで見る、何かいい言い訳はないかなぁ。

 こういうとき強引に行くのなら……。


「私が行ったほうがいいと思うっす!」

「は?」

「あっ、いえ、間違えました……ま、また明るくなりましたね~」


 雲の切れ目によって団長さんの表情がよく見える。……怒りがとても伝わってくるなぁ。

 コトちゃんの『閃き』スキルを真似してみたんだけど、突然こんなこと言われては、そりゃあ怒るよね。


「えーと、アルゴーさんも言っていたじゃないですか。新種の魔物に剣を突き刺せたのは、月が出てないときって……」

「それがどうしたというのです」

「もしかして……、あの新種は闇に弱いのかなぁ~って思いまして。あっ、ほら、ご覧ください! 今は月が出ていますよね? 木を振り回していませんか!?」


 新種はさっきの仕返しとばかりに『羊の闘志』を相手どって、上から下へ、右へ左へと木の幹を振り回す。

 五人は固まらないように散りつつ、新種から一定距離を取っていた。

 遠いけど動きが大きいからよくわかる。

 と、そこにまた雲が月を隠す。


「新種の魔物の様子に変化あり! 持っていた木を落とし、拾おうとするも……なかなか持ち上げることができないもよう!」


 私から双眼鏡を取り返したジッキ・ヨウさんが、情報を伝えてくれる。


「ほう、闇に弱いというのはあながち間違いとは言い切れないようですね。それならなぜ、夜に進行してきたのかは謎ですが……。ただ、そういう可能性があるなら、光魔法使いたちを集合させて照射させる計画は、いったん様子見のほうがいいかもしれません」


 どうやら新種の魔物にまとわりついているファンタズゲシュトル亜種を倒すのに、一斉に光を当てる作戦を考えていたようだ。

 でもその行動で、新種の魔物が想像以上に活気付いてはいけないと練り直している。

『羊の闘志』側にも、今の情報を伝えるよう指示もしていた。


(よし、団長さんが指示を出しているあいだに……)


 本当に闇に弱いかは、もっと近づかないとわからない。

 私は今のうちに、城壁の上から下へ階段を作るように障壁を張った。……んだけど、半分も作らないうちに、団長さんの怒声が飛んでくる。


「――かといって、貴女が向かう理由にはなりません! そこの障壁をしまいなさい!!」


 見つかってしまったので、階段障壁を作るのをやめた。……やめるだけで、消しはしなかった。

 また隙を見て作っていこう……。


「貴女、落ち着きがないですよ。新種の魔物の姿が近づいて、冒険者の血が騒いできましたか!?」

「いやっ、そうではなくて~、えーと……」


 新種の魔物を見に行きたいです、という単純な理由では納得されないのはわかりきっている。

 んーと、……あっ、そうだ。

 ここは騎士団の困りごとを解消させる方向で行こう!


「この状況ですと、やっぱりあのオバケがまとわりついているのを、何とかしないといけないじゃないですか。でもそちらもこれといった打開策が見い出せないということですよね? ――そこで、私です!」


 私は最後、なるべく自信満々に見えるように堂々と胸を張った。



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