156: 光と闇を活かす?⑤ ~ヒントを……!~
ギルマスか他の熊か、どっちが捕まったのか聞いたけど、今は雲が出ていて判断しにくく、はっきりとわからないそうだ。
そんな、どうすれば……!? と焦った私だけど、よく考えれば私には『探索』スキルがあるではないか。
確認してみたところ……大丈夫!
ギルマスは新種の魔物からもう少し南にいて、さっき対峙していたグリーンベアを倒し、次の魔物と戦闘しているようだ。
よかったー。
いや、これで安心してはいけない。
現在すっかり月が隠れてしまって、新種の魔物がどんな動きをしているのか、それどころかどこにいるのかもよく見えないのだ。
『探索』スキルと、新種の魔物にべったりくっついているファンタズゲシュトル亜種の、ぼんやり輝く姿を頼りにするしかない。
団長さんに言われたように、私は本日、新種の魔物から投げられた魔物を一切防いでない。指名依頼をされたのにこんな体たらくではいけない。
今度はバッチリ、ガッチリ防がなくては。
これでまた通り抜けるようなことがあったら、障壁魔法使いの立つ瀬がないではないか!
『壁張り職人』という称号もなくなってしま……いや、それは気にしなくっていいや。
とにかく。
まずは障壁の広さ……よしっ、広範囲!
高さも……よーしっ! 団長さんが混乱中にくるくる回っていた高さくらいだ。
頑丈さも……ぃよーーっし!
騎士の皆さんも冒険者の皆さんもがんばっているのだ。私もやるぞ!!
さあーー! 来ーーい――!!
新種の魔物の動きは……うっすらもわからないけど、『探索』スキルを使って、投げられたグリーンベアがどのような動きをするかで微調整しよう!
「目視困難だが、新種の魔物がグリーンベアを放った様子あり!!」
確かにかすかに何かが迫って落ちてくる音がするし、『探索』スキルでもそれを確認できる。
(よしっ、方向も範囲内、高さもそれほどない! ばちーん、とはじくぞ! ……あれ?)
しかし、バチーンと音がすることはなかった。
――ガサッ、ぼすっ……。
耳をすまさないと聞こえないくらいに、私たちから遠くに落ちた音がした。木の枝を引っかけてから落ちたような音だった。
つまり新種の魔物は今回、飛距離を伸ばすことはできなかったということだ。
すかさず近くの人たちがグリーンベアを討伐しに行く。
この流れは目で確認できず、私の耳や『探索』スキルで得た情報だけだ。
それにしてもなぜ、ここまで飛ばなかったのだろうか?
前に熊を投げてきたときは城壁を軽々超えてきたのに……。それに、蛇のときは今よりもっと遠くから投げて、正面ではなく北寄りに投げて城壁にひっかかるまで飛ばすことができた……。
今のは、『羊の闘志』さんたちが新種に攻撃してくれたから威力が弱まったのかな?
いや、『探索』スキルでは近づいた様子はなかった。もちろん、遠距離攻撃をした可能性もあるけど……。
あとは、新種が投げるときにつまづいたとか?
他に可能性はないかな?
私は胸壁に前のめりになり、新種の魔物を見る。……ファンタズゲシュトル亜種の姿しか確認できない。
『鑑定』スキルは、遠いと詳細な内容を確認できない。でも、何とかして新種の魔物のことをもっとよく見たい。
体力や力の値で『羊の闘志』さんたちの役に立つ情報や、何か隠された事実があればいいなと期待しているんだけど……。
収納魔法に何か役に立つ物は入ってなかったっけ?
んーっと、こういうときに役立つのがハートのメガネだったけど壊れちゃったし……。
いや、待った!
本当に壊れたのかな?
確認してみよう!
――ポロポロ……。
…………。ハートのメガネを出すと、さっきのアルゴーさんの鎧のようにレンズのかけらが落ちた。
あ、結構ダメそうだなぁ。
いや、一応かけてみて、残ったレンズで何か見えないか確認しよう。
「受付さん、壊れたメガネを着けていたら危ないですよ」とゲンチーナさんに注意されたけど、重要なことが隠されているかもしれないのだ。
一番ひび割れの少ない部分――親指の爪の先しか面積がないけど、これが無傷で残っている一番大きいレンズのかけらだ。――これでヒントが見れないか試みた。
……んーー? 『弱』……?
何だろ?
もっと右にずらせば内容が……、ん~~、う~~ん!
見えない!
メガネをかけず、本体を横に……って。
「あっ」
一番大きく残っていたレンズが落ちてしまった!
パリーンと粉々に砕けてしまった……。
レンズのかけらでは、これが限界か……。
おまけ: 136話より
サブマス「第2問。ギルドマスターが熊になって捕まえた、貴族の四男坊の家名はなんだったかな?」
シグナ「パリパリリボン!(ピコーン!」
コト「あれだよ、――ぶもももも!!」
ワーシィ「コト、うちの髪!!」
サブマス「ブッブー。答えはブゥモーでした。コトくん惜しかったよ!」
コト「ぺっぺっ! 次は答えて町に戻るっす!」