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155: 光と闇を活かす?④ ~安定の勘違い、そして騙し~


「団長、思い切りましたね~」


 ファッサさんはアルゴーさんが消えた森を見る。


「あれは新しいスキルが目覚めたのかもしれません」

「えっ!」

 私は思わず大きい声が出ちゃった。団長さんは『鑑定』スキルに近いものを持っているのだろうか?

 ……うーん、それらしいものはないけどなぁ。

 団長さんは難しい顔をして続ける


「スキルというのは生まれつきのもの以外に、何度か同じ行動・同じ感覚を通じて手に入ると考えられています。他にも何かの拍子に備わるものがあり、その場合はスキルを新たに得るとき、おかしな行動をする者もいるとか……。その点アルゴーは最近ソワソワしたかと思うと、冒険者ギルドに走っていくことが頻繁でした。――ああ、その件ではご迷惑をおかけしました。今後はそちらのご迷惑にならないようにします」

「ぜひお願いします!」


 おっと、「そんなことないですよ~」と言う前に、はっきり本音が出ちゃった。


「……その奇行が目に余り始めたと思えば、つい先ほどは寮のドアを壊し、見習いの頭を掴んだときは頭蓋骨にヒビが入るほどだったそうです。これは――、力が上がる、または先ほどの軽傷の様子だと、防御が上がるスキル……もしかしたらその両方が開花したと考えられます」


 だからそれを活かして、グラスアミメサーペントを倒してもらおうとのことだった。

 スキルについては正確には、力・耐久・速さが上がる謎の『愛のチカラ』スキルというものだけど、もちろん黙っておく。


「スキルは開花したかもしれないっすよ。けどアルゴーがおかしいのは、今に始まったことじゃないかと」

「結婚してからずっとおかしいからなー。その前とは別人や」


 ファッサさんとムキムさんが、アルゴーさんの消えた方向を見てつぶやく。


「え、アルゴーさんのアレ、結婚してからですか……」


 確かにおかしな行動と言動は全部メロディーさん関連だから、結婚してからなのだろうけど、その前はどんな人だったのかな?

 私がアルゴーさんを知ったのは、メロディーさんがギルドで働きだしてからだ。その前の彼を知らない。

 二年前に領主が変わったときにこちらの騎士団も一緒に来たのだから、アルゴーさんは二年前からアーリズにいたことになるけど……。

 それまで彼に注目してなかったってことだから、意外と地味な、印象の薄い人だったのかなぁ? 想像できないけど。

 メロディーさんがギルドで働くことがなかったら、今でもまったく接点のないままだったかもしれない。


「こういう例があるのです。チャーラオ、グォーリー、貴様らもさっさと結婚しなさい。スキルが開花するかもしれませんよ」


 団長さんが二人に結婚を勧めている……。

 あれ? ということは、団長さんは二人を応援している感じなのかぁ。

 ファッサさんとムキムさんて、付き合っているんだもんね。


 ……ってそれはいいとして、今、頭蓋骨が云々と聞いた気がするけど……。

 あの金髪騎士見習いはちゃんと生きているのかな?

 いただいた矢で脅……げふんげふん、話だけでもしたいんだけど、彼が話せる状態じゃなかったらどうすれば。


「んじゃっ、壁ちゃん、おいらはど……」

「団長さん! イパスンさんは無事なんですか?」


 ん? 壁って聞こえた? ま、いいや。

 それよりも標的の、イパスンこと四男一行の一人!


「……壁張り職人、こっちへ」

「え、はい……」


 団長さんに呼ばれ、小走りに近寄る後ろで「壁張りちゃん、イパスンよりわいと……」とムキムさんがスカッと空を切る音が聞こえた。

 振り返ると腕を交差していた。どうしたんだろ? ま、いいや。

 団長さんに近寄ると、かなり小声でささやかれた。


「壁張り職人。――アルゴーから聞いてますよ。貴女も知っている(・・・・・・・)ということを」


 焚きつけたアルゴーさんから、私が情報源であることをすでに聞いたようだ。

 私も小声で訴える。


「団長さん、そちらのお身内にいらっしゃったことで、団長さんもとても心を痛めていると思います。でも、この戦闘が終わったらイパスンさんに一度会わせてもらえませんか? 私の矢のことは……たぶん彼の主人を逃がしたかったから撃ってきたのだとしても、マーサちゃん……子供をダンジョンに放り込むなんて、『どういうつもり』だったのか聞きたいんです」


 あの騎士見習いに話を聞いたあと、とても理解できない、くだらない理由であれば、孤児院皆の分を込めて一発くらわせてやりたいところだ。

 そして、それを考えた人が誰なのかも重要だ。

 騎士見習いなのか、やはりあの四男か、はたまたあのお付きの人か……。

 ただ、あのときの怒りが冷めた今、他の場合もあるのではないかとも考えるようになった。――または、別の理由があったのではないか、と。

 洞窟の入り口付近にマーサちゃんの物が落ちていたのはたまたまか、わざとか……。

 あの騎士見習いたちのことは王子が見張っているようだけど、団長さんは『カイト王子』と認識していないようだし、なんとか団長さんのお力をお借りできないだろうか!?


「……壁張り職人、その件もこちらで調査中です。手を抜くことは決してありませんので、調査をお待ちください。貴女は矢を射られて立腹しているでしょうが、その矢が貴女の手元にあるだけでもよしとしてください」

「……はい…………。え、矢、は持ってません……けど」

「ああ、そうでしたね」


 鎌をかけられたんだろうか。

 あぶな。誘導尋問に引っかかるところだった……!

 団長さんの視線が突き刺さっている。ここで視線を外したら負けな気がする……!

 もしかして、私のことをかなり怪しんでいるってことだろうか??


「それよりも。貴女は今夜、調子が悪いようですね。ファンタズゲシュトルが入ってきたのは仕方ないといえ、魔物が二匹も入りました。そんな調子で会いたいと交渉されても、こちらとしては無理に決まっていますとしか言いようがありません」

「くっ……、た、確かに二匹入れてしまいましたけども……。でもファ……あ、いえ……次は完全に守ってみせます!」


 うっかり「ファンタズゲシュトル亜種からの混乱を回復させました!」と言わないよう、がんばった。ゲンチーナさんから背後霊(ファンタズゲシュトル)並に張り付かれては大変だから……。

 その彼女は騎士二人に「邪魔しないでください!」と怒っていた。まだ人探し中らしい。


「あ、それじゃあ、これからの働きで会わせて……」

「それとこれとは話が別です」

 団長さんにピシャリと言われてこの話は終わった。


「――また熊を、捕まえているぞ~!!」


 見張りの人の声が響いたからだ。

 団長さんは一度くちばしをカチンと鳴らす。


「もう、一匹も魔物を入れないように」

「は、はいっ!」


 今度は大丈夫。

 あのときのように私が北にいるわけじゃなし。

 あれ? でも熊……?


「すみません! どっちの熊ですか??!」

 今は月が隠れていて、私の目ではよくわからない。ハートのメガネは壊れちゃったし。

 さっきはアルゴーさんだったし、今度はギルマスだったらどうしよう!



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