154: 光と闇を活かす?③ ~のせる~
本日、『転生した受付嬢のギルド日誌』コミック2巻が発売しました!!
団長さんの命令が静かに、はっきりと聞こえた。
「……はっ」
アルゴーさんは気を引き締めたようだ。
グリーンサーペントより大きく太いグラスアミメサーペントは、現在騎士団が複数部隊で対応している。
先ほどのグリーンサーペントのような事態――町の中に飛ばされることがないように、新種の魔物から距離を離しながら戦っている。
森で戦うには木が邪魔そうだけど、グラスアミメサーペントが使う横にはらう攻撃もその木に阻まれていたから、騎士団側の被害も少ない。
「グラスアミメ……」
巨大蛇の大きな口が、森から空へと伸びた。アルゴーさんは、さすがに少し尻込みしたようだ。
「アルゴー、確かに我々騎士団は、この町に来るまで大型の魔物との戦闘経験は少ないです。その証拠にこちら側の決定打がなく、今も勝利する気配がありません。しかしこのまま手をこまねいていてはいけません。だから貴様を向かわせるのです」
騎士団長さんは、強くはっきり説いた……って、あれ? 団長さんの目がキラーンと光ったような……。
「もちろん成功報酬も考えています。無事、貴様の手で討伐することができたなら、ドアの件をなかったことにするのはもちろんのこと――追加でグラスアミメサーペントの皮も報酬として付けます。それを使って貴様の細君へ服なり持ち物なり贈るといいでしょう」
「妻に……! ほ、本当ですか? 団長!!」
「もちろんです。貴様だけではなく、グラスアミメサーペント討伐に関わった者、すべてを対象にします。もちろん、より大きな働きをした者に多く与えますが」
当然、大きな働きとは「倒した者」に違いない。
アルゴーさんは報酬を聞いて、目の色を変えた。
やる気が――殺る気が急上昇した。
私にはよくわかる。
耐久は元より、体力も力も一気に上がったからだ。速さの項目も少し上がった。なんなら目も吊り上がった。
いや、目は関係ないだろうけど、これが『愛のチカラ』スキルの効果ということかな?
そんなアルゴーさんに、新しい鎧が届けられた。用意されたのは、予備の鎧とは思えない性能の物だった。
耐久値が上がったのともう一つ、『使用者が剣術・槍術スキルのいずれかを所持している場合、そのスキル効果が上昇する。』と『鑑定』で記されてあるのだ。
アルゴーさんは剣術スキル持ちだから、実力が十二分に発揮されるだろう。
この明らかに性能のいい装備を用意し、アルゴーさんをノせたこと――。
団長さんはアルゴーさんに賭けるつもりのようだ。
「――アルゴーさん、これに乗ってください。下ろしますよ」
私はアルゴーさんを下ろすための水平障壁を、彼の着替え中に出した。
アルゴーさんが「メロディー……」「何を贈ろう」「あれかな、これかな……」とぶつぶつうるさいから、さっさと出したのだ。早く乗って、向かってほしい。
「団長! 約束ですよ!!」
アルゴーさんは再度確認する。団長さんは強く頷いた。
「証言者が多々いる中で反故にするはずがありません。それよりも、くれぐれもまた新種に捕まることのないように」
確かに、今度も骨一本で済むとは限らない。ぜひ捕まらないようにしてもらわないと。
回避……というのは『速さ』の値が強く関係しているわけだけど……あっ、そうだ。
アルゴーさんの上げ止まりした『速さ』を上げることができるかも。
「メロディーさんったら幸せですね。旦那さんが討伐した魔物の皮で、しかも高価な皮で、贈り物をしてくれるなんてっ。奥さん冥利に尽きますね!! あ、でも早く行かないと誰かに倒されちゃいそう……」
「何!? 壁張り職人、早く下ろせ!!」
お……? おお~! 思った通り。速さの値がまた上がり始めた!
メロディーさんの名前を出したせいか、力も再度上昇した。……ノせすぎたかな。
アルゴーさんは城外に完全に下ろされる前に飛び下りた。グラスアミメサーペントへと一直線に駆け抜けていく。
「あの単純バカを援護しなさい」
「はっ。放てー! 新婚くそ野郎を援護だ!!」
近くにキツネやらラットやらがいたけど、味方の援護や彼の速さもあって、足が止まることなくその姿は去った。
……今、騎士の皆さんの指示に気になる点があったけど、気にしないでおこう。
本日コミック2巻が発売です!
皆さま応援してくださり、誠にありがとうございます!!
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転生した受付嬢のギルド日誌 2
ぶんか社
BKコミックス
漫画:桝多またたび
原作:Seica
キャラクター原案:てつぶた
ISBN-13 : 978-4821127566
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メロンブックス様、とらのあな様にて、
特典がついてくるとのことです。
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↓にも小説情報&書影(表紙参考画像)を載せております。
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コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』
chapter30が「待つと無料」となっております。
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(コピペのお手間をかけます)