151: 町を守る!⑮ ~アルゴーさん……~
おかしな人は門前払いしないといけない。
私はまさに今、城門の目の前に障壁を立てているのだから、言葉の意味そのままに実行する!
「メ~ロディ~~!♡」
はっ。待った待った……はじくと、メロディーさんが悲しい思いをしてしまう……。
現在進行形で飛ばされているのは、混乱状態になっているメロディーさんの旦那さん――アルゴーさんなのだから。
「壁張り職人、障壁はそのまま。落ちたらできるだけ下の障壁で受け止めてください!」
「は、はい……え?」
アルゴーさんは私たちのほぼ正面に迫っている。
えっと、はじく前提で受け止めるとしたら、水平に出している障壁をもっと遠くに置いたほうがいいんだけど……。しかし団長さんは、手前に置くよう指定してきたし……。
私が思案していると、急に障壁の前、アルゴーさんが直撃する直前で風が渦まいた。
「突風……?」
「“風の圧縮!!”はあああ――!!!」
いや違う。
騎士団長さんの気合の入りよう……これは彼の風魔法だ。特にご自身の翼に力が入っている気がする。
すさまじい風の音だ。障壁を挟んで起こしている風ではあるけど、上からその風が漏れてきた。
肝心のアルゴーさんは「ちゅ~」の口のまま、壁にぶつかる直前で浮いている。
空中で停止させるほどに空気を圧縮させて、それでいてアルゴーさんをその風で傷つけないようにするとは……。
(団長さんはこんな魔法の使い方もできたんだ。だけど……!)
団長さんの魔力がすさまじいスピードで減っていく。
かなりの大技のようだ。
「アルゴーの顔、やべー」
「見たくなかったわ」
ファッサさんとムキムさんは大変そうな団長さんをよそに、アルゴーさんをジロジロ見ている。
私もそうだけど、見たいから見ているわけではなく、ちょうど正面で変顔をされているから見ざるを得ないというわけだ。
ゲンチーナさんは深刻そうにつぶやいた。
「あの顔のゆるみ……重度の混乱状態かもしれません」
いや……いつもの顔です。
ギルドの窓からメロディーさんを覗く表情と、大して変わらないです。
「……くっ、さすがにこれが限度です。うまく受け止めてください!」
「は、はい!」
団長さんが翼の力を抜くような動作をすると、空気の圧力が消えた。
十から二十を数えるくらい宙に留まっていたアルゴーさんは、それでもこちらに向かう勢いが強かったようで、最後に私たちの目の前の障壁に頭頂部をぶつけた。それから少しはじかれて、下の水平に広げていた障壁へと落ちる。
頭を打ったときは大きな音がしたけど、団長さんの風がなかったら、頭を打つどころの騒ぎでは済まなかっただろう。ふ~、よかった。
それと、障壁にちゅーの顔のままぶつからなくてよかった。いや……、障壁は消せるけど、なんか嫌だし。
さて、水平にしていた障壁をそのまま上げて、こちらに移動させよう。
アルゴーさんは障壁に頭をぶつけて意識を失ってしまったので、ファッサさんとムキムさんに手伝ってもらい下ろしてもらった。
しかしファッサさんがアルゴーさんの肩部分を掴んだとき、パキリと音がして、アルゴーさんが滑り落ちてしまった。
「あっ、アルゴーすまん! ……え……こ、これ……」
「鎧……めっちゃ壊れとるな……」
アルゴーさんが宙に浮いていた時間はあまり長くなく、表情の印象が強くて全体をよく見てなかったけど、アルゴーさんの鎧はあちこちひび割れていた。
ファッサさんが持ち上げたことでどこかがはずれ、アルゴーさんが落ちてしまったようだ。
私は、アルゴーさんが新種の魔物に捕まっていたときの状態をよく見られなかったけど……、もしかしてかなり強く握られていたのでは……?
ゲンチーナさんはすぐさま駆け寄って治療に取り掛かり、アルゴーさんの友人である二人は「しっかりしろよ!」と深刻な顔で声をかける。
私は『鑑定』スキルで、アルゴーさんの状態をすぐ確認した。
本日のエイプリルフール企画はこれで終了です。(140話からが本日更新です。)
エイプリルフール企画は、嘘っぽい話でもよかったのですが、なんせ今(防衛戦)の話の流れでは切れ目がなかったので、「嘘みたいな」更新頻度で勝負してみました。
エイプリルフール企画とはいえ、もちろん4月1日が過ぎても残るので、ごゆっくり読んでくださって問題ありません。
※
4日2日に、コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』
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(コピペのお手間をかけます)