149: 町を守る!⑬ ~二人で謝罪~
何か重要なことでもあったのだろうか……?
城壁の下に広がる森を見た。木々の隙間から熊二頭を発見した。
あ、熊同士で縄張り争いしてる。……じゃなかった、ギルマス熊さんバージョンとグリーンベアが戦っているんだ。熊マスvsグリーンべアだ。
昼間なら緑の毛と赤茶の毛が判別しやすかっただろうけど、今はパッと判断できなかった。
「ギルマス~! がんばってくださ~い!!」
「いや、そこもだが、あっちだ、あっち」
カイト王子のツッコミで、もう少し右の奥へと視線を移動させる。
「あ、バルカンさんたち……『羊の闘志』の皆さん!」
五人が新種の魔物に向かっている。
続けて王子は、団長さんに挑発するように話す。
「新種の魔物は、冒険者ギルドに取られたようだな~。騎士団のほうは城壁に乗っかった蛇退治はしたものの、グラスアミメサーペントにはまだてこずってるようじゃねえか。この町じゃそれくらいの活躍しかできねーのか。こりゃ、西防衛の『血葬騎士団』が泣くぜ」
「……何ですって?」
カイト王子と騎士団長さんを取り巻く空気が一気に冷えたような……。
それより西防衛の『血葬騎士団』って、何のことかな?
西防衛って、今も町の西で防衛しているんだけど……そういうことじゃなさそうだよね。何だか物騒なイメージもあるし……。
「王都のやつは知ってんのか~」
「久々に聞ぃたな」
私は初めて聞くけど、ファッサさんとムキムさんにはなじみのある名前のようだ。
まさか、うちの騎士団の通り名??
この町に来る前はよく言われていたのかな?
「――う、うっ、受付さん! 聞きましたか?!?」
微妙な空気が渦巻いているところを、お目々をキラキラさせたゲンチーナさんがやってきた。
ゲンチーナさんは何か知っているのかな? と思ったら、その話題ではなかった。
「男性とも女性ともわからない人がこの付近にやってきたようなんですよ! あ、あの方かもしれません!!」
あ、グリーンベアのことか。
ゲンチーナさん……、大興奮してますけど、治癒魔法じゃなくて熊を倒した人のことですからね。
「ジュリア・ゲンチーナ殿!! それと壁張り職人!」
「「はいっ」」
団長さんに強く呼ばれて、ゲンチーナさんと声がハモっちゃった。
その団長さんには、ずずいと顔を近づけられた。
くちばしでつつかれたらどうしよ。
「二人とも! ここ、中央部隊から離れないように!!」
「「はいっ、すみませんでした!!」」
私とゲンチーナさん、二人して怒られてしまった。
しかもその注意だけでは終わらず、団長さんのお説教が続く。
って、あれ? 気づいたらカイト王子がいなくなってる……。
この隙に逃げましたね?
それにしてもカイト王子の持つあのバンダナ、いいよね。
あれがあれば、隣にゲンチーナさんがいても、気にせず治癒魔法を使うことができるってことだもんね。まぁ、そんな場面はないほうがいいんだけど。
どこで作られたんだろ? 王室御用達の物とかだったら私には無理なんだけど、一般人にも手が届くような物だったら、ぜひ購入を検討したいんだけどなぁ。
「聞いてますか? 壁張り職人??」
「わ、き、聞いてます!」
しまった、考え事をしていた。まだ怒られているのに。
「魔物が全体的にこちらに入り込んできてますから……」
「団長ぉぉ――!」
団長さんが言い終わらないうちに、ファッサさんの声が響く。
「何事です?!」
「新種の魔物がっ――!」
また魔物を投げてくるのかな? それはいけない。
……でも、大丈夫! 障壁も張ったし、さっきは素通りされた南側も問題なく作った。
グリーンサーペントでもグリーンべアでもグラスアミメサーペントでも、何でも投げてきてどうぞ!
――しかし、今度は魔物ではなかった。
「新種の魔物に、――うちの騎士が捕まりました!」
え。