148: 町を守る!⑫ ~満足そう~
「カイトさんの部下の人たちがやってくれたんですね、ありがとうございます! 町の被害が小さく済んで助かりました!」
カイト王子が部下を連れているのは、今回の会議でも見て知っていた。全員『隠匿』系のスキルを持っているせいではっきりとした人数や、どういう人たちがいるのかわからないけど、そのスキルによって私の『探索』に引っかからないのだから、彼の部下だと思ったのだ。
「…………」
しかしカイト王子はグリーンベアの死体を見ているだけで、返事が返ってこない。――違うのかな?
冒険者さんでも『隠匿』系スキルを持っている人がいるから、そちらかも。誰かの剣撃の風圧ということもある。
どちらにしても、フェリオさんのお口を堅いままにできて嬉しいことこのうえないから、ぜひお礼が言いたかったなぁ。
グリーンベアの首を持っていったから、後日名乗り出てきてくれることを祈ろう。きっと収納魔法か大容量収納鞄を持っているものの、容量がオーバーして熊の体部分を回収できなかったなどの理由だろうから。
「下~! 気をつけろよ~~!!」
グリーンサーペントが垂れ下がっているところから、ファッサさんの声が聞こえた。
ずずずず……と引きずる音が聞こえ、ドスンと足元が震える。
あのグリーンサーペントが、とうとう真っ二つにされて城壁から落とされたのだ。蛇の上にかけた橋はここに来るときに消したので、落とすのに邪魔になることはなかった。
ゲンチーナさんもようやくこちらに戻ってこれそうだ。
「壁張り職人!」
おや。騎士団長さんがなぜか険しい顔をしてすっ飛んできた。
もちろん自身の羽で実際に飛んでやってきた。
私の隣をジロリと睨みながら。
「壁張り職人。いくら我が国の王子と同じ名前だからといって、その男に気を許してはいけませんよ!」
中央(城門西側)部隊に戻ってきてすぐに、謎のお小言をもらってしまった。
「え、王子様と同じ……」
「カイト・フォレスター殿下ですよ。私は殿下に拝謁したことがありますが、そこの男と同じ名、髪も……多少似た色といえど、まったくの別人ですからね。気を許さないように!」
「んえっ……!!?」
私は思わず隣のカイト王子を見てしまった。
団長さんはカイト王子の顔もご覧になっているのに、こちらの『カイトさん』を目にしても別人と言い張る……。
件のカイト王子は口元をニヤニヤさせている。
普通はこういう反応なんだよ。――とでもいうような目だった。
団長さんも、ギルマスと同じような反応だった……ということは、普通の人はこういう反応なんだなと改めて考えてしまう。
「殿下はこのような嫌味くさい男ではなく、明敏であり人当たりのよい、聡明なお方です。貴女が何を言われたのか知りませんが、そそのかされないように!」
団長さんの力説に、カイト王子は腕を組んでドヤ顔でうんうんと頷いている。
私には、団長さんが王子を褒め称えているのか普通にけなしているのか、混乱してしまうのだけど……。王子はこの反応に満足そうだ。
私はただ「はぁ……」としか言えなかった。
ホント、すごいバンダナだなぁ……。
「まー、それよりアーリズの騎士団長さんよ。アレ見てみろよ」
カイト王子は顎でくいっと正面を差した。