147: 町を守る!⑪ ~風~
町の南側でグリーンベアが暴れている。
こちらからでは見えなくても、『探索』スキルを使ったらよくわかる。
討伐部隊の人たちがまだ到着できていないことも。
(お家の塀が壊れたくらいなら、フェリオさんはまだ許してくれるだろうか……!? ぜー、はー!)
急いでたどり着きたいのに、私はもう疲れていた。
この町は大きい。町全体から見たとき、蛇に追いやられて北西にいた私は、今は南へ向かって走っている。
「ぜーはー、ぜーはー……。――っと!? 風が……!」
向かい風に煽られた。走るスピードが落ちる。
今夜はこんなに強い風が吹くことはなかったのに……。
「ほれ見ろ、風が吹いただろうが。蛇の上で煽られなくてよかったぜ」
王子があっという間に私を追い抜いていく。
ついでにグリーンベアを倒しに行ってくれないかな……。
……ん? あれ?
私は首をひねった。
グリーンベアを『探索』スキルで再度確認したら、不思議なことが起こっていたのだ。
目の前を走っていたカイト王子は、その現場がよく見える場所につき、見下ろしている。
私も彼の隣へ、よろよろと近づいた。
「ぜえーはあーー……。く、熊は――?」
し、死んでる。
あの風が吹いたときに『探索』スキルで確認していたけど、実際目にして、やはりそうだったと知った。
グリーンベアは首がなくなった状態で動かなくなっていた。月明かりからでも、緑の毛皮と、首からの血の色が判別できた。
(あれ? でも肝心のグリーンベアの首は……?)
首がきれいさっぱりスパンと切れているのに、肝心のそれは見晴らしのいい壁の上からでも探せなかった。
下に到着していた冒険者パーティーがいるので、真相を聞いてみた。
「すみませーん! 障壁を設置できなくて、熊の侵入を許してしまいました。そこのグリーンベアは、あなたたちが倒してくれたんですかー?」
「いや! こっちもグリーンサーペントを倒して、ちょうど今戻ってきたところだ。誰がやったのかは……ちょっとわからないが、遠目では一人だったと思う。男……かな? 暗くてわからなかったが、倒してくれたのはその人だ。上からも人影は見えないか?」
私はぐるりとあたりを見たけど、それらしい人影は発見できなかった。
実は『探索』スキルで見たときも反応はなかった。誰もグリーンベアの周囲にいなかったのに、突然倒された状態になり気になってはいたのだ。
今、城壁の上からでも見当たらないということは、建物の陰に入っちゃったのかな?
どうして隠れちゃったんだろう?
隠れたつもりはなくて、倒したあとすぐに急ぎの用事があって、証拠の熊の首だけ持っていった……とか?
それとも目立ちたくなかったとか?
いやいや、私じゃあるまいし。
う~ん、一人で倒し、しかも私の『探索』スキルに引っかからなかった人……。
あ、わかった!
簡単じゃないか。