146: 町を守る!⑩ ~声が……聞こえる~
グリーンベアと遊び終えた新種の魔物が、とうとうそれを持つ腕を振りかぶって力を溜める。
「――キイイィィェーーッ――!!!」
気合を入れた叫びを上げて、熊を飛ばした。
さっきはグリーンサーペント、今度はグリーンベア――普段空を飛ぶことのできない魔物が、どうして城壁に乗っかるほどの距離を飛んできたのか。
それはこの新種の魔物が、近くにいた魔物を掴んで投げたからだ。
「着地予想地点、城壁南寄り! 近くの者は退避――!」
観測していた騎士さんが城壁を響かせる。
……南寄り?
――私が障壁を張れていない地点だ――!
なんとかして南側への障壁を間に合わせないと。
私は急いで橋を走り下りた。地面に足をついてすぐ一番南、私から見て奥に張っている障壁を、さらに押し出し奥へと移動できないか動かしてみる。
だけど、だめだ。
「っ、やっぱり距離がある……!」
だからさらに走る。
走りながらも試みる。……それでも難しい。
今日の装備は、能力値が上がり、かつ動きやすい装備にしていて、いつもよりは遠くに張れているのに。
あともうちょっと……というところで、一番南に配置された障壁の横を、グリーンベアが無情にも横切っていく。
そのとき、ふと、フェリオさんに口止めをしたときのことを思い出した。
『――魔物から町を守ったら、ずっと黙ってる――』
そうだった。「城壁を守ってね」と「町を守ってね」と言われていたのだった!!
熊が完全に町の中に入ってしまったけど、これでもまだ町を守っていると言えるのだろうか……!?
しかし投げられたんだから、いくらグリーンベアでもきっと着地の衝撃で死んだよね。……って、ここからでは見えないけど、『探索』スキルによるとグリーンベアはまだ生きている!
グリーンベアは体力・耐久共にかなりあるのは知っていたけど、空を飛ばされて、着地時の損傷があっても、まだまだ元気なようだ。城壁に体当たりしているではないか。
城壁と住宅とのあいだは、馬車が何台も止まることができるほど広い通路になっている。
その通路に着地したから、まだ住宅に被害がないとはいえ……あ、城壁から住宅の塀に興味を持ったようで、よじ登ろうとしている!
急いで障壁を張ることができる範囲まで近づいて、閉じ込めなくては。
そうだ、城壁の中に配置されている人がいるんだっけ。
その人たちが倒して……いや、南側に配置された人たちも、さっき入ってきたグリーンサーペントを倒しに北側に来ていたようだ。
今急いで南へ向かっている人たちがいるから、なんとか間に合ってほしい。
――城壁を、皆を守って――。
フェ、フェリオさんの声がっ、声が聞こえる……気がする……!
熊がこれ以上城内で暴れたら大変だ!
「早く! 早く南へ……!」
私の治癒魔法の威力がバレないように。
フェリオさんの口が堅いままであるために――!
フェリオとのやりとりは109話参照。
おまけ:寝言
フェリオ「z……(うつら)、町を守……z」
メロディー(タチアナさんの件で疲れてますのね)
フェリオ「……シャー……の治……魔……、すごい……」
メロディー「?」
フェリオ「ん……。口がすべりそうだった……zz」
解体メンバーs「俺らも仮眠しようぜ」「そうだな。終わったらすぐ解体できるようにな」「うん」
タチアナ「オ、バ…ケ…zzz……(白目」