145: 町を守る!⑨ ~跨蛇橋~
横切っている蛇の上を歩けるように、橋を作ろう。跨線橋ならぬ跨蛇橋だ。
「“うおおおお!”」
ゲンチーナさんから治癒魔法を受けているあいだに作っちゃおう!
隣で気合の入った呪文が聞こえているけど、私はあのタチアナさんの叫びでも気を散らさなかったのだから、いつもの要領で障壁を作れば問題ない。
まずは障壁を水平に作って、蛇を跨ぐ道にしてっと……。足を滑らせないように、ちょっとの傾きもないように水平に作って……。
もちろん、蛇を真っ二つにしている人たちの邪魔にならない位置に配置する。人一人分が通れるくらいの幅になった。
上がるための階段と下りるときの階段も作って……よし、いいんじゃないかな。
とりあえず登るときの階段障壁の高さや傾きを目で確認して……うん、大丈夫。
橋も……水平になっている。よしよし。
「あ、終わりましたか、ゲンチーナさん。ありがとうございます!」
ゲンチーナさんの治癒魔法も終わって体力も回復したし、さぁ渡ろう!
障壁の階段を慎重に上がってみる。
登っていくうちに、グリーンサーペントの輝きが少しずつ変化する。光の反射具合で変わるのは、さすが人気の皮だ。
私はグリーンサーペントの真上を越える前に、あたりを見渡してみた。
おお、城壁のさらに上――男性の背丈を超えるグリーンサーペントの上を渡ると、空を飛んでいるみたいだ。見晴らしが大変いい。
――キャッキャッキャッ――!!
新種の魔物が楽しそうにしている鳴き声が聞こえたので、そちらを見る。
ハートのメガネがなくても、手に熊を持ちながら木に登ろうとしているのがわかった。その木は重さに耐えきれずに折れたようだ。
「おい、よそ見しないで早く渡れ。風が吹いたら危ないだろ」
後ろから付いてきているカイト王子がせっついてきた。
「新種の魔物の様子も見ないと、障壁を調整できませんよ……って、あれ? ゲンチーナさん、行きましょう!」
カイト王子のほうを向いたら、少し遠くにいるゲンチーナさんとも目が合ったので共に渡るよう誘う。
「えっ、いえ、私は、……遠慮します……」
はて、何の問題があるのだろうか。蛇の上を通るのは怖かったのかな。
まさか、城壁の下を何度も確認している彼女が、ここを渡るのは怖いと……?
「その、足元が透明なので、お二人だけでどうぞ……」
ゲンチーナさんが服の裾を手で握って、床を指さした。
あ、わかった。スカートだから……かな?
男性たちがいる中で「下着が見えそうですか?」なんて聞けないけど、きっとそういうことだ。うん。
私たちは女子同士だからこそわかり合い、頷いた。
「おい、いつまでも突っ立ってんじゃねっての」
「今日は風がないから大丈夫だと思いますけど……。それとこっちに魔物が飛んできても、すぐそこに障壁を張ってますから熊には襲われませんよ。――あっ、もしかして、カイトさんもさすがに高いところが怖いんですか??」
カイト王子でもさすがに怖いのかな?
怖がってくれたなら、溜飲が下がるというものだ。
「この。にこにこ笑ってん……」
「来るぞ~! 気をつけろ――!!」
カイト王子の文句はかき消された。