142: 町を守る!⑥ ~グリーンの会~
前世の地球の歴史にあった……えーとなんだっけ、そうそう、ギロチン……みたいな。
しかし、「えいっ」と落としたはいいものの、スパーンとは切れなかった。
蛇の鱗が固いし滑ってしまって、へこむだけだ。
私が作る障壁は何かを切断するような切れ味はないけど、植物の蔦など柔らかいものなら押しつぶして、その結果切断することは可能だ。
ただ、さすがに大蛇では無理だった。
「おいおい、やめろ。城壁に負担がかかるぞ」
自分の仕事じゃない、と知らん顔して待っている王子に注意された。
それはいけない。町の守りを務めてくれている城壁に負担をかけるなんて。
そういえばフェリオさんにも強く言われて……というより口止め料として守らなければいけないことだった。王子の髪を見て思い出した。失敗失敗。
「壁張りちゃーん、ジュリアちゃーん!」
「今ここ通れるようにするで!」
お、見えないけど、この声はさっきまで怒られていたあの二人、ファッサさんとムキムさんだ。
剣先が見えるから、この蛇を切ってくれるということかな。
とりあえず待つことにしよう。
さて、このような事態に、なぜ他の騎士の皆さんは加勢に来ないのか。
それはガーゴイルやファンタズゲシュトル亜種が来たのを皮切りに、他の魔物もやってきたからだ。
スモークグリーンフォックスやダークフォレストラットが、かなりの数、城壁の下に迫ってきている。
私がハートのメガネで見たときは、遠くの木々に隠れていて発見できなかった魔物だけど、会議では名前が出ていたので、襲撃してくる魔物群の中にいることは知っていた。
だから小さくて素早い、数も多い魔物を相手にしても、皆さん慌てずきちんと対応している。
弓を射ったり石を投げたり、――あれ、あの石って団長さんに投げ損ねた……いや、何でもない。
とにかく、グリーンサーペントやグリーンべアほど強い魔物ではないとはいえ、当然放置はできないのでそちらに当たっている。
それにしても前情報より数が多い気がする。
やっぱり夜の襲撃情報しかないことや、ファンタズゲシュトル亜種による混乱の影響によるものかな。
正確に測定できない状況が重なったせいか、予想していたよりも多いようだ。
これらの魔物たちを騎士団は前線で押さえるつもりだったけど、グラスアミメサーペントと対峙してしまったことにより、それより弱い魔物の進行を許してしまっている。
グラスアミメサーペントというのは、現在城壁に垂れ下がっているグリーンサーペントの一.五倍ほどする巨大蛇のことだ。
木々をなぎ倒し大暴れしているその大蛇を、騎士団側で押さえている。
しかしグラスアミメサーペントが城壁に来るより、まだ狐や鼠が来るほうがマシだから、この状況は決して悪くない。
ダークフォレストラットは城壁を登りそうな勢いだけど……。
「あのー! そちらに、障壁を張りますか?」
「いや! こっちはいいから、壁張り職人は中央に集中してくれ!」
私は近くの騎士さんに聞いたけど、自分たちに任せてほしいとのことだ。
それにしても緑色の魔物が多いなぁ。
スモークグリーンフォックスもダークフォレストラットも太陽の下であれば、くすんだ緑色と黒に近い緑色の体毛なのだ。
緑色の魔物で徒党を組みました! ……とか? いやいや、たまたまに違いない。
「おーい!! 気をつけろ! また飛ばしてきそうだぞーー!!」
北側の動向を見ていた私は、急いで外側の城壁に駆け寄り西を見た。
蛇が邪魔でちょっと見づらい。
こういうときこそ障壁で横へずらそうか……、いや、横の力が加わることで胸壁が壊れては大変だ。
私が蛇を手でぐいぐい押している隣で、ゲンチーナさんがつぶやいた。
「く、熊を振ってますね……」
おまけ:その頃のタチアナ。避難所の外にて。
タチアナ「白目)……」
連れてきた騎士「戦闘中は避難しろと言ってあるだろうが!よく見張っとけ!」
解体メンバーs「「「すみませんでした~~m(_)m!!!」」」
メロディー「ご無事でよかったですわ」
フェリオ「やれやれ……」