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010: 同僚② ~三種三様~



 ジャラジャラッジャラ。


 買取してほしいとカウンターに来た、男女の三人組。持ち込まれた物は宝石だった。それをぞんざいにカウンターに置く。


「最近親戚が亡くなってね。遺品の整理をしていたのよ」


 三人とも身なりをよくして、いかにもな理由を言い、軽やかな笑顔を作っている……けど。


「すみません。ただいま査定担当は席をはずしてまして。呼んできますのでお待ちください」


「いえいえ、いいのよ。お嬢ちゃんが査定してくださって。見たところあなたもできるのでしょ」


 どう見たらそうなるんだか。

 確かに『鑑定』スキルのある私は宝石を査定できる。フェリオさん、ギルマス、サブマスも私の査定能力がまぁまぁ(・・・・)いいことは認めてくれている。でも私が高額の査定をすることに許可は出ていない。

 当たり前だ。入って二年目の若すぎる人族に、宝石などの高額査定をしてもらいたいと誰が思うだろうか。私が客で、十代の女子が査定しますと言われたらお断りする。


「そういえば、商人ギルドさんのほうには行ってみました? 私のような新人より、しっかりと査定してくれますよ」


「それがねぇ、買い叩かれそうになったからこちらに来たのよ」


 ――ふぅん。おかしいと思う。


 商人ギルドさんも、多少相手を見て査定額を考えることもあるだろう。けど、こんな小物三人組にわかるようなあからさまなことはしない。もっと巧妙にやって、物をちゃっかり買い取る。それをしないというのは、関わりたくないということ。または商人ギルドへ寄らず直接こちらへ来て、押せば言うことを聞きそうな私に目をつけたのか。


 実は、三人組が目の前に来たときには、『鑑定』でざっくり見ていた。特に悪そうな顔もしておらず身なりもいいけど全員人族。どこの国出身か気になって、さらに詳しく見ていたのだ。


 この国は多種族国家。

 先ほどカウンターに並んでいた私たち三人だって、妖精、人、鱗人族と三()三様。この国の三人組は兄弟姉妹きょうだいでもない限り、一人は種族が違うものなのだ。

 先ほどの「親戚の~」のくだりが始まる前に『鑑定』済み。


 案の定、彼女ら三人とも他国出身の「職業:宝石泥棒」。

 女性にいたっては、「称号:宝石盗賊団団長・宝石の女王」。……ちょっと恥ずかしい称号だね。


 実は『鑑定』スキルの職業・称号欄は、能力の数値よりもはっきりと素性を表してくれる。

 なぜなら、ある程度の期間同じ仕事をしていれば、それは職業としてばっちり表示されるからだ。

 私は子供の頃と冒険者時代は、常に『鑑定』スキルを使うようにしていた。

 そして、「()()師」「悪徳商人」「誘拐犯」の類には近づかなかった。「幼女大好き」などの称号持ちにも、私の姿が視界に入らないようにしたし、場合によっては余罪と一緒に通報した。


 さて、今回の三人組盗賊団。

 私はこのまま二階へ、フェリオさんとギルマスを呼びに行こうかなと思った。でも同時に『探索』スキルを使ってみたら、ギルドの外にこちらへ向かってくる人たちが確認できたので、私が時間を稼ごうと思い、彼女に行ってもらうことにした。


「あ、ちょうど備品切らしちゃったから、このメモ見て二階から取ってきてくれますか?」


 メロディーさんに二つ折りのメモを渡す。

 彼女はそれを受け取って二階へ。

 階段を上がることによって視界から消えたけど、『探索』スキルで動きを確認できる。途中でメモを見たのか立ち止まり、その後慌てて駆け上がる動きをする。


「でね。このルビーを白金貨五十枚。こっちのブローチは白金貨二十枚でお願いできないかしら」


 女性は先ほどのメモのやり取りなど気にせず、にじりよってくる。


(どれどれ、ふむふむ。どこのお屋敷から盗ってきたんだか。足がつかないようにこの国まで来たんだろうけど……)


 私は一つずつ宝石を手にとって、じっくりと、丁寧に、念入りに、確認する動作をした。


「~~っ、ねぇ! ちょっと。早くしなさいよ。私の言った値段でいいでしょ!」


 早くも(しび)れを切らしたらしく、女性は声を荒らげた。長くとどまりたくないのだろうけど、『探索』で見るギルドの外の様子からすると、もう少し時間を稼がなくてはならなさそうだ。


(どう時間を作ったものかな……)


 そこで自分のスキルの中に少し鍛えたかったスキルを思い出して、意識して使うことにする。


「…………え、ぇぇ。そ、そんなこといわれましてもぉ……! 私ぃ…………す、すみませんが、……もう少し見せてくださいぃ」


 眉をぎゅっと寄せ眉尻を下げることを意識し、肩を震わせ、怯えた顔をしてみせた。

 その様子を見た泥棒三人は、もっと押して早く高く金額を出させようとする。


 ――うんうん。か弱い女の子の演技ができているんじゃないかな。この『演技』スキル。あまり使ってなかったけど上々だね。


「いつまで、もたもたしてんのよ。お客を待たせるんじゃないわ! さっき言った金額で妥当でしょ! 早く出しなさいよ!」


「は! はぃ……。で、でもぉ、このネックレスが、そ、その……そんな価格だと思えなくてぇ…………ひぐっ」


「いつまでもちんたらしてると、隣の怖いおじちゃんが黙ってないわよ!?」


 男二人のうち、体が大きめのほうがぬぅんと顔を寄せてきた。


「きゃあぁぁぁ! は、はいぃぃ! ごめんなさぁぁい……!」


 棒読みにならないよう気をつけつつ、もちろん銅貨一枚さえ出さない。


(うん! 『演技』スキル、調子がいいんじゃない? さあ、もうすぐ出入り口に来る。もう少し時間を稼ぐ『演技』を続けてみよう)


 とノリノリだったところに――。


「シャーロット……」


「え……」


 階段側から、ため息交じりに私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


『怪しい三人組が私に宝石を売りつけようとしています。確認願います』


 三人の『鑑定』をした直後に『速記』スキルで書いたメモ。

 それをメロディーさんからもらって、急いで下りてきたギルマスとフェリオさん。サブマスも二階にいたようで一緒に下りてきていた。


 私は出入り口のほうに集中しすぎて、階段のほうを失念していた。

 私を見た反応は三者三様だった。


 フェリオさんが私を静かに、残念そうに見つめ。

 サブマスはどこが面白いのか、肩を震わせながら口を押さえ。

 ギルマスは、なぜそんな行動に出ているのか心底わからないという顔で見ていた。




実は、コミック版『転生した受付嬢のギルド日誌』Chapter6

にて今回のシーンがございます。

ご興味ありましたら、ぜひスマホにてご覧ください。


スマホサイト マンガよもんが 転生した受付嬢のギルド日誌

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