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001: 横入り禁止。入れば障壁でどけます

 初投稿です。よろしくお願いいたします。

 ラストまで目指してがんばります!




「お次の方どうぞ」


 冒険者ギルドの受付カウンターには列ができている。

 そのカウンター内から見ると、正面には出入り口、左壁には依頼が貼ってある掲示板、右に飲食できるテーブルと椅子がある。

 どちらにも人が――冒険者たちが集まっていた。ギルド内は混雑して、がやがやとざわめいている。それでも窮屈(きゅうくつ)に感じないほどの広さだ。それは天井が元々高く、二年前に改装して壁や床などの色合いが明るくなったことも手伝って、いっそう強くそう感じられた。

 そして小奇麗なカウンターの天井近くには、でかでかと横断幕がかかっている。


『横入り禁止』


 この効果によるものだろう。受付に用事がある人は、荒くれ者に見える人でもきちんと順番を守っている。


 冒険者ギルド。

 簡単に説明すると、登録している人たちに仕事を紹介する組織。

 仕事の内容は、『果物の皮をひたすらむいてほしい』という簡単なものから、『魔物を退治してほしい』『足を踏み入れにくい場所から薬草を採取してきてほしい』というものまで多岐にわたる。

 仕事の依頼を受けるのは冒険者と呼ばれる人々で、冒険者ギルドは仕事内容を見極めて、完遂(かんすい)できそうな冒険者たちに紹介しているのだ。


 そんな組織のカウンター内にいる私は、二年前からここの受付嬢として働いていて、皆からはシャーロットと呼ばれている。

 当初は、冒険者ギルドの受付業務が初めてで大変だったけれど、今では身につけた魔法とスキル、さらには前世で事務をしていた記憶を活かして一通りのことはできるようになっていた。


「はい、キラキラ草ですね。確認します」


 依頼で採取してきたものを確認する。文字どおり茎と葉がキラキラして、色は黄緑から青のグラデーションだ。


(そういえばこの植物……。この世界で初めて見たなぁ。前の世界に、近いものはなかったと思う)


 そう、私はいわゆる異世界転生者だ。

 物心ついたときから「ここは今までとは違う世界なのだ」とわかっていたように思う。周りの人たちの髪や目の色が個性的だったし、文明が地球で生活していた頃より後退していたから。


 前世の私は事務系の仕事をしていた。

 数回くらい転職したのかな。OLで一般事務だった記憶と、塾の受付事務をやっていた記憶がある。

 記憶があいまいなのは、この世界に転生して十七年も経ち、日々の暮らしに慣れてきたせいだろうか。子供の頃より思い出す頻度が減り、鮮明さもなくなっている。何かのきっかけでふと思い出すか、困ったときに必死に記憶を掘り起こすくらいだ。


 昔の名前も……覚えてない。

 んー、季節の名前が入っていた?

 いやいや、自然に関係ある名前だったかな。……やめよう。考えてもしょうがない。

 今は、シャーロットなのだから。



「はい、お待たせしました。次の方どうぞ」


 前世の記憶のほかに、仕事に役立つことがある。

 それは、この仕事を始めたことによって覚えたスキル。事務系スキルだ。

 スキルというのはその人が持っている技能みたいなもので、「突出してその力(技)が使えますよ」ということを表している。

 スキル自体は誰もが持っているし、もちろん戦闘系のスキルも存在する。ただ、この場で役立つのはこれ。

『美文字』『速読』『速記』。


「依頼の完了ですね。ギルド登録カードをお預かりします。お待ちください」


『速読』のスキルで、完了報告が書かれた紙をすばやく確認。続いてその紙の完了確認欄に、本日の日付と自分の名前を書く。

『速記』と『美文字』のスキルのおかげで、すさまじく速く書いているのに字の乱れがなく、きれいに書けた。

 事務系以外にもスキルをたくさん習得しているけれど、普通の人はそこまで持っていない。転生者であることも関係しているのか、私はとある理由で他の人よりスキルを覚えやすかった。


 さて、作業の続きだ。専用魔道具の所定の位置に、記入後の紙とギルドカードを置く。これにより依頼を完遂させた人のギルドカードへ完了状況が登録される。

 いつ・何の依頼が・完了した、ということが記録されるしくみだ。

 そして、もろもろの処理が終わり「次の方」と呼ぼうとしたところ、横から割り込んでくる者がいた。


「ねぇちゃん、この依頼を受けたいんだけどよ」


 ……カウンターの上の「横入り禁止」の文字が見えなかったのかな。


「すみません。お並びいただいている方が先になります。そちらに並んでお待ちください」


 私はその犬系獣人の方に、列の最後尾へ手を向けて促した。

 もしかしたら文字が読めないか、カウンターの上の横断幕には目が行かなかったか、列が見えなかったのかもしれない。最初は笑顔で教えてあげた。


「俺は今! 受けたいんだよ!!」


 ……やっぱりこういう手合いか。


「こちらは横入り禁止です」


 笑顔できっぱりと教え、再度並ぶよう言った。

 皆さんはちゃんと並んでいる。特別扱いをする気はない。


「――っ。俺は並ばねぇって言ってんだよ!」


 体だけは大きい男。

 大声を出せば要望が通ると思っているのかな。意地になっているのか()(たけ)(だか)だ。

 こういった(やから)は最近見なかったけど、並べないなんて大声で言うのは恥ずかしくないのだろうか。


 やれやれ……と思って私はそっと魔法を使った。

 この町の皆さんや常連さんにはよく知られた、私の得意魔法。


「では、皆さんの用事が終わって、列がなくなってからいらしてください。ただし、いつくかはわかりません」


 それを聞いた短気な男は、私の喉元を掴もうとして手をすばやく伸ばす。


 ゴンっ。


 そしてカウンター前に現れた透明な壁に(はば)まれ、()(ゆび)した。


「いっってぇぇぇ!!」


 受付カウンターの前方、男の身長くらいの高さで現れた無色透明なガラス板のようなもの。それが、私の(しょう)(へき)魔法だ。

 このようにすぐ暴力に訴えるような輩や、猪突猛進ちょとつもうしん型の魔物にはとても有効。勝手に突っ込んできて、勝手に障壁にぶつかってくれるから。

 強度もかなりある。上位の魔物が体当たりしてもびくともしない。

 さらにこの障壁は、私の意思で一定距離なら自由に移動可能だ。


 私は障壁を床に垂直に立てたまま、出入り口に向かって男ごと押し出すように滑らせる。

 そうそう。無関係の人が横に()けやすいように、障壁に色をつけなければ。


 案の定、このやり取りを見ていた人たちは、障壁に当たらないようすっと避けていた。

 障壁魔法で押し出されていく男は、ずりずりと床を擦りながら、開け放たれたドアの外に追っ払われる。


「すみません。お待たせしました」


 カウンター前で待っていた人に一言詫びて、何事もなかったように仕事を再開した。




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