88.強そうな牛
僕の持っているエッセンスをすべて試してみたけれど、ピンとくるものは残念ながら見つからなかった。
属性以外のエッセンスで、欲しい姿がなかったのは、ある意味ではよかったのかもしれない。
「2属性のエッセンスで作成しよう」
「はいですの」
でもできれば同じことはしたくない。前にやったことと同じことをしていたら、新しい発見は絶対に生まれない。だから今回は、火と水以外のエッセンスで、2属性を試したい。
(属性以外のエッセンスで、いい感じにならなかった時点で、風と土のエッセンスで試すのは、決まっていたみたいなものだよね)
僕はまず風のエッセンスを50セットした。
「薄緑のオーラ。前に毒を受けたときの事を思い出すよ」
「毒はもっと濃い色ですの」
よく見れば濃さが違うのはわかる。でもちょっと痛かったので、緑のオーラにはあまりいいイメージがない。
そのイメージを消し去りたくて、僕はすぐに土エッセンスを50追加した。
「おっ、ものすごく格好いい!」
「格好いいですの」
風のイメージカラーの緑と、土のイメージカラーの茶色が混ざり合って、いい感じの黄金色に輝いていた。
黄金のオーラを纏うミニタウロスに、僕は興奮してしまう。
「ものすごく主人公っぽいよね。怖い顔も頼もしく見えるよ」
ただ気になることがあるとすれば、ラビィの評価だろう。強いでも未来が楽しみでもなく、ただ『格好いいですの』だけだった。
(新しいことをしなければ、何も生み出すことはできない。悪い評価とは思えないし、黄金のミニタウロスで契約しよう)
「黄金のオーラが気に入った。僕はこの設定で契約するよ」
「仲間が増えますの」
僕は設定をリセットして、ミニタウロスの卵を取り出した。そして契約のスキルを使うと、風と土のエッセンスを50づつセットする。
「これで契約だ!」
ミニタウロスの卵が輝きだし、光へと変化する。風と土のエッセンスも光になり、卵の中へと吸い込まれていった。
思えば4度目の契約だ。僕は目をつぶりながら、右手で眼をガードする。
やがて光がおさまると、そこには黄金色に輝くミニタウロスがいた。
「ガモモォ!」
いつか聞いたことがある声だ。獣でも牛でもない、不思議な声の出し方だ。
「名前が欲しいって言ってますの」
どうやらこのミニタウロスも、言葉がわからない系のようだ。でも意思は疎通できるから、いつか話ができる日に期待しておこう。
さて名前をと思った時、僕の背筋は寒くなる。こんなに早く手に入ると思っていなかったから、事前に準備していなかった。
(タウロスだからたうろうす、たうろ、たろうってだめだ。たろうが悪いわけじゃないけれど、少しも魔物っぽさが感じられない)
頭をフル回転させるけれど、いい感じの名前にはならない。いくつもの候補が頭に浮かんでは、それを自分で否定していく。
そんな時、ミニタウロスの種族が目に入った。
(種族は金牛っていうのか。きんぎゅう、こんぎゅう、コング! いや、牛のイメージが消えてしまう)
「ガモッ?」
なんとなくどうしたのって感じが伝わってくる。なんだか考えすぎている気がするので、もっとシンプルにするべきだ。
(金の牛、つまりゴールド。ゴルド? いや、ゴール。ゴールード。そうだ。ルードにしよう!)
ここまで来て、僕はやっと名前を見つけた。
「ルードだ。君の名前はルードだ」
「ガモモォ」
ふっとルードが万歳をすると、スゥッと姿が消えていった。4体同時召喚はできないので、強制的に送還されたのだ。
「気に入ったみたいですの」
「バンザイして喜んでくれたのかな。気にってくれてよかったよ」
そう言えば種族しか確認していなかった。タンク系なのかアタッカー系なのか調べるために、僕はルードのステータスを確認した。
当然のように筋力、体力が高く、敏捷や反応は普通な感じだった。攻撃の技能は斧と、雄叫びの2つしか持っていないけれど、固有技能に見たこともないのがあった。
「火耐性と土皮膚か……」
火耐性は迷宮で戦った時、火に耐性がある感じだったから、最初から持っている固有技能かもしれない。でも土皮膚は防御力を10%上昇させてくれるという効果だった。
(土エッセンスの影響なのかな。それとも最初から持っているのかも)
生憎と迷宮のミニタウロスはほぼ裸なので、防御力上昇の効果は得られないだろう。だから気がつかないだけで、最初から持っている可能性もある。
「でも雄叫びって攻撃スキルなのかな?」
「叫んで魔物をおびき寄せるんですの」
僕の体に電流が走る。そのスキルはまさしくタンクに必要なものだ。むしろそれ系がなければ、タンクとしては成り立たない。
「いいね。ラビィは博識だな」
「ありがとですの」
せっかくタンクを手にれたのだから、エリーと一緒にレベル上げがしたい。でもその前に、ルード用の装備を作成しておこう。
「まずは余っている鉄鉱石で装備作成だ」
「はいですの」
「マスターのお心のままに」
「うっぴぃ」
僕は魔物契約卵部屋をでて、鍛冶の施設へ向かった。
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僕がルードに作成した武器は、両刃のバトルアックスだった。ルードは盾の技能を持っていないから、両手用の武器にしたのだ。
そして防具は鉄を素材にした全身鎧だ。
店売りよりも性能が良いけれど、作成してからちょっとケチだったかなと後悔する。
銀鉱石を使ったとしても、最初から黒鉄でもよかったかもしれない。
(でもせっかく作ったし、最初のゾーンから戦う予定だし、しばらくはこれで戦ってもらおう)
鉄での付与はスロットが一つしかできないが、それでも武器は店売りなどよりも遥かに性能がいい。
レベルが上がれば、余っている鬼装備も役に立ちそうだし、とにかく最初のゾーンで戦闘だ。
僕らはクランハウスを後にし、始まりの街へと向かった。




