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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
レジェンドクエストをクリアしたい
71/176

71.湖畔の激戦


 しっかりと休憩してから戻ると、ラビィとサクラが迎えてくれる。

 

「おかえりですの」 

「お待ちしておりました」

「ただいま」

 

 さっきの続きでアロイ・ガライへ行こうかと思ったけれど、やっぱり新しいゾーンも気になってくる。

 

(山か湖か。レベルはきついけれど、雰囲気も味わってみたいな) 

 

 ドロップもいいのがありそうだし、様子見がてら調査も悪くはない。

 

「ロッカテルナ湖へ行こう」 

「はいですの」

「マスターのお心のままに」


 僕らはクランハウスを出て、街の北へと向かった。

 

--------------------------


 前にマーミンから聞いた話によると、街の北から出て直進すれば、1時間ほどで湖が見えてくるらしい。

 

 見えてくる景色は、始まりの街から小鬼の村へ向かっていた時と似ていて、草原に土の道が続いている。

 

 なぜかバトルラビットの姿が見えるけれど、はじまりの街へ行かなくても良いように、配置しているのかもしれない。

 

「草原の風は爽やかだねぇ」 

「気持ちいいですの」 

「はっ」


 ラビィはもともとバトルラビットだからかもしれないけれど、草原を気持ちよく歩いている。

 

 日差しも強くなく草が広がっている景色が、灰色の中で暮らしている僕の心を癒やしてくれるようだ。

 

 魔物に襲われることもなく、道をそのまま歩いていくと、バトルラビットがいなくなっていった。その代わりに、爽やかな風の中に、なんだか冷たいものを感じてくる。

 

「湿度があがってきたのかな。湖が近い?」 

「そうかもですの」 

 

 そんな風に感じながら進んでいると、やがて遠くに湖が見えてきた。

 

「うわぁ。きらきらしてるよ」 


 遠くからでも、湖面がキラキラとして見えた。湖の奥は霞んで見えないけれど、かなり広い湖だというのがわかる。

 

 僕は思わず早足になりながら、湖へと近づいていった。

 

--------------------------


 湖岸へと近づいても、明るい雰囲気は変わらない。真昼だというのもあるけれど、とても危険な湖には見えなかった。


 チャプっと手を付けてみると、水はひんやりとして冷たかった。マーミンは湖の中で戦ったと言っていたけれど、この冷たさにダイブしたのだろうか。

 

「湖を左手に見ながら、湖岸を歩いていくと、ポータルがあるらしい」 

「りょうかいですの」

「はっ」


 湖の中に魚は見えないけれど、蛇っぽい魔物が湖岸にちらほらと確認できる。名前は大蛇となっているので、魔物の卵屋で売っている蛇の卵とは、また違った魔物かもしれない。

 

 新しいゾーンなので、ドロップリストを確認してみた。

 

 大蛇の鱗、大蛇の牙、大蛇の毒袋、大蛇の卵の4種類しかドロップしないようだ。それぞれコモン、アンコモン、レア、ウルトラレアの順番で、わかりやすいように文字の色でレア度がわかるようになっていた。

 

 ドロップリストにエッセンスが載っていないけれど、おそらくそういう仕様なのだろう。

 

「張り付いているプレイヤーがいないのは、大したドロップをしないからか」 

 

 そんな事をつぶやきながら歩いていると、遠くにポータルが見えてきた。湖岸は水が靴に染みそうなので、すこし離れた位置を歩きながら、大蛇に襲われないようにポータルへと近づいていく。

 

「登録っと」 

 

 無事にポータルへたどり着くと、早速登録を行った。

 

 これで無茶をしても、すぐにポータルで戻ってこられる。湖の中は放っておいて、周りの方を調べてみよう。 

 

--------------------------


 ポータルから離れていくと、腰くらいまでの高さのある茂みが広がっていた。そこにはプレイヤーがたくさんいて、戦闘をしているのも見える。

 

(んっ、水トカゲ? これもトカゲの卵とは、また違った魔物かもしれない) 

 

 他のプレイヤーに倒される前に、ドロップリストだけでも確認する。すると水トカゲの鱗、水トカゲの舌、水魔法:アクアカッター、水トカゲの卵の4つが確認できた。

 

 この魔物こそ、マーミンが言っていた魔導書をドロップする魔物らしい。それに気がついているから、他のプレイヤーも集まっているようだ。

 

「出現して即プルだもんな。これじゃ手が出せないや」 

「移動しますの」 

 

 ちょっとゲンナリしていたら、ラビィが提案してくれた。

 

「単純な解決方法があったね。もっと奥へ移動しよう」 

 

 僕らは他のプレイヤーを横目に、茂みの中を歩いていく。

 

--------------------------


 どんどん移動したけれど、意外な事に奥にもプレイヤーがいた。魔法に価値があるというのも間違いないけれど、高レベルゾーンなので、経験値も悪くないのだろう。

 

「もっと移動しようか」 

「はいですの」 

「はっ」

 

 とにかくプレイヤーがいては、試しに狩ってみることもできない。さらに茂みの中を進んでいくと、やっとプレイヤーがいなくなってきた。

 

 でもそれと同時に、水トカゲもいなくなってきた気がする。 

 

「移動しすぎたかな。水トカゲの気配もないね」 


 ラビィはキョロキョロと周りを見渡しながら、必死に水トカゲを探してくれた。でもプレイヤーがいないということは、きっとこのあたりは違うのだろう。


「仕方がない。少し戻って……」

「マスター!」 

 

 サクラが声を上げたと同時に、茂みの中から水トカゲが飛び出した。サクラは武器をクロスさせて突撃を弾いたが、珍しくバランスを崩されている。

 

 水トカゲは空中でクルリと回転すると、茂みの中へ姿を隠した。

 

「まずい。戦いにくいぞ」


 他のプレイヤーたちは、プルして近接される前に、遠距離で勝負がついていた。茂みに逃げ込まれるという状況はなかったので、対処方法がわからない。

 

「ガサガサ聞こえる。そっちだ!」 

 

 左手の方から茂みが擦れる音が聞こえてきた。間違いなく水トカゲは、そっちの方にいるはずだ。

 

「ムーンシールド!」 

 

 おそらく突進してくるだろうと予測して、いつものようにムーンシールドで迎撃する。水トカゲはムーンシールドに当たると、そのまま突き抜けてきた。

 

「ぐえっ」 

 

 おそらく僅かには威力が削がれているのだろうけれど、大げさに言えば砲丸がお腹に落ちたくらいの痛みを感じた。

 

 普通なら心配されそうだけれど、すでにバランスを整えたサクラが、その瞬間を狙って刀を振り下ろす。

 

 直撃してダメージエフェクトは飛んだけれど、それほどのダメージには見えない。

 

 茂みに消えた水トカゲが、またしても姿を消した。

 

「レタヒールですの」 

 

 痛みが消えていく。おそらく連続で攻撃を受けなければ、負けることはなさそうだ。

 

「あっ」 

 

 そんな風に考えていたら、ラビィが声を上げた。普通に声を出したラビィに驚いて振り向くと、左手に赤い何かが巻き付いている。

 

 その途端、赤い何かに引っ張られるように、ラビィが茂みへ倒れ込んだ。

 

「舌か! ラビィ」 

「ウォーターランスですの!」 

 

 茂みをかき分けて姿を確認すると、舌を巻きつけた水トカゲに、ラビィが魔法を放っていた。

 

(水トカゲに水属性は通用するのか?)


 っと、思った途端、全身に痛みが走る。

 

「がはっ」 

 

 僕はせいぜい魔法が無効にされると予想していた。なのに水トカゲは、魔法を反射してくる。広範囲に広がる水の魔法は、僕とラビィにダメージを与えた。

 

「ここです!」

 

 サクラが脇から飛び込んで、水トカゲの舌を攻撃する。

 

「ピェー」 

 

 舌を切断された水トカゲが、いきなり茂みの中へと消えていく。

 

 ラビィに絡みついた舌がスゥッと消えると、僕は撤退を決断した。

 

「茂みからでて湖に向かうよ。また襲われたら危険すぎる」 

「りょうかいですの」 

「はっ」

 

 茂みの中を逃げながら、背後を確認したけれど、どうやら水トカゲは追ってこないらしい。

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