07.レアポップの魔物
あれから現実で一週間は経過していた。ゲーム内で言えばだいたいだけれど、二十日くらいは狩り続けている計算だ。だが驚かないで欲しい。それだけ狩っているのに、いまだに『小鬼の卵』はドロップしていない。
「レアドロップは嘘だね。これはウルトラレアドロップだ」
ウルトラレアドロップは1%未満だ。ただそのなかでも確率はピンきりだ。1に近いかもしれないし、限りなく0に近いかもしれない。でもそれら全てをまとめてウルトラレアドロップと呼んでしまう。
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小鬼の角×1
人エッセンス×4
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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倒した数は覚えていないけれど、小鬼の角が537あった。コモンドロップなので、最低でも537体は倒している計算だ。
「僕は他のゲームでも、確率の低いドロップアイテムをゲットした。これぐらいなんでもないさ」
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小鬼の牙×1
人エッセンス×1
鬼エッセンス×2 を手に入れました
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たまに混ざるアンコモンのアイテム。生産とかで使いみちがあるらしいけれど、今の僕には関係がない。ただアンコモンがドロップすると、卵に期待してしまう。
「今こそドロップだ! ムーンブラスト!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×2 を手に入れました
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「もいっちょいくぜ!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×1
鬼エッセンス×5 を手に入れました
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「まだまだこれから!」
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人エッセンス×5
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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「コモンはでろよ!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×4 を手に入れました
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「卵をちょうだい!」
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小鬼の角×1
人エッセンス×3
鬼エッセンス×3 を手に入れました
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「あー、いい加減にでてよ!」
僕は思わず森で座り込む。魔法力の枯渇状態もあいまって、気分が悪いのがもっと悪くなりそうだ。でもずっと戦っていたから、僕の召喚師レベルは5だ。上がったのは四日前だけど、それ以来召喚師レベルは上がっていない。と言うか、経験値バーがほとんど上昇しないのだ。
でもスキルは問題はない。無魔法は6だし、魔力の雫、魔力制御も順調に6だ。識別は5になったし、夜目も6まで上がっている。
「え、なにあの小鬼!」
さらに小鬼を探していたら、Tシャツを着た小鬼を発見した。藁でできたような変なのをまとっている小鬼しか見たことがなかっただけに、Tシャツを着た小鬼は衝撃的だ。
「そうだ。そこの小鬼さん。僕の言うことがわかる?」
「ウガァ!」
もしかして魔物言語が使えるかもと思ったけれど、反応が全然かわらない。僕を敵と認識し、拳を振り上げて突撃してくる。
「仕方ない。ムーンブラスト!」
強さは変わらないようで、その一撃で倒すことはできた。
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小鬼の角×1
小鬼のTシャツ×1
人エッセンス×2
鬼エッセンス×5 を手に入れました
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ドロップに見慣れないものが混ざっていた。僕はインベントリからTシャツを取り出してみる。それはさっきの小鬼が着ていたものなのか、薄いグリーンのTシャツで、フロントにイラストになった可愛らしい小鬼の顔がプリントされていた。
「可愛いけども……」
可愛い系のイラストは嫌いではない。むしろ好きな方だけれど、今欲しいのはこれではない。
「これってレアドロップではなくて、レアポップのコモンドロップだよね。多分」
今までこの森で戦っていたけれど、Tシャツを着た小鬼が現れたことはない。つまりポップする確率がものすごく低いタイプの魔物なのだ。
「でもいいか。可愛いアイテムが手に入ったし」
小鬼のTシャツの性能は防御力が6、さらに『小鬼友好度上昇小』という能力がついていた。
「僕のTシャツは初期装備だから防御力は1。六倍の性能だね。特殊効果の意味はわかるけれど、どういう影響をするのかは未知数だ。とにかく卵を手に入れるまでは、方針を変えるつもりはないけれど」
なんとなくきりもいいので、僕は服を着替えた後、街に戻ることにした。