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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
レジェンドクエストをクリアしたい
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68.広間の戦い

 どんどん広くなっていく洞窟は、直径10メートルほどになっていた。そして進んでいくほどに、地面が硬くなっていて、歩きやすくなっている。

 

(最初は柔らかい感じだったけれど、このあたりは固まっている。踏み固めたとかかな……) 


 地面に気を取られていると、キンちゃんが警告の声を上げた。

 

「むっ、ネズミの棲み家かもしれんぞ!」 


 ランプでは全て照らせていないが、僕の目にははっきりと見えた。洞窟の先が大きな広間になっており、複数のネズミが目を光らせている。

 

「隊列変更。サクラはキンちゃんと一緒に前へ。後はそのままで、しっかりと数を減らしていくんだ」

「はい」 

「任せますの」

「マスターのために」

「我には容易いことだ」


 隊列が整ったところで、突進ネズミが3体現れた。

 

「ムーンボム!」  


 一糸乱れぬ突撃は、かえって僕には狙いやすい。3体ならんだ中心に、範囲魔法を打ち込んだ。

 

「まだ突進が来そうです」


 ラズベリーの声から緊張が伝わった。今の3体はムーンボムで倒すことができたが、リキャストタイムがあるので、次には間に合いそうもない。

 

 多角形の板が飛び散って消えていく中を、新たな突進ネズミ3体が突っ込んでくる。

 

「ウィンドボム」  

 

 ラズベリーの魔法だった。たしかランク6の範囲魔法だから、ラズベリーもいつのまにか強くなっていたのだ。

 

 それでしっかりと倒せたけれど、さらに3体が突進してくる。

 

 そこへサクラが飛び込んで、刀を一振り、剣を一振りで2体を討伐してくれた。

 

「ラビィ!」 

「アクアランスですの!」


 サクラとラビィの連携で、三回目の突進を防いだ。

 

「むむっ、我にも戦わせるのだ」 

「大丈夫。まだ奥にいっぱいいるよ」


 大きいネズミよりも一回り大きいネズミも目に入る。数も多いし、激戦になることは間違いない。

 

 こうなるならば、洞窟はもう少し狭いほうがよかっただろう。でもだからこそ、わざわざ洞窟を大きくしているのかもしれない。

 

 僅かに落ち着いた感じの後で、今度は普通の大きなネズミが5体やってきた。

 

「ウィンドアロー」 

「おまかせを」

「アクアショットですの」


 ラズベリー、サクラ、ラビィの三人で、4体のおおきなネズミを倒せるだろう。でも今回はそれではない。

 

 ネズミの狙いはそれではなかったのだ。

 

「射撃ネズミがいる。ムーンシールド!」 


 5体の後ろに隠れていた3体の射撃ネズミという魔物は、口から緑っぽい塊を吐いてきた。毒々しいその色は、もしかすると毒のバットステータスを与えるのかもしれない。


「きゃっ」


 緑の塊は、ラズベリーの前で弾けて消える。僕が魔法を使ったのは、自分のためではなかった。

 

 ムーンシールドでは防げない残りの2弾のうちの1つが、僕の方へと向かってくる。

 

「ぐぅ」 

 

 ドッジボールで思い切り当てられたくらいの衝撃が、僕の体に走った。思った通り毒になったようで、全身がわかりやすく、緑の薄い膜で覆われてしまった。


(この毒。持続ダメージと行動を遅くする効果があるみたいだ)


 ラビィと名前を呼ぼうとしたのに、すぐに声が出なかった。

 

 そして3体の射撃ネズミから放たれた緑の塊の最後の狙いはキンちゃんだった。でも当然のようにキンちゃんは、それを華麗にかわしている。

 

「キュアポイズンですの」

「ラビィ」 

 

 僕が名前を呼ぶよりも速く、ラビィは僕を癒やしてくれる。

 

「よし。回復したぞ」 


 でもその間に抜けてきた大きなネズミが、ラズベリーへ攻撃していた。

 

「大丈夫です」 


 もともと大きなネズミはレベルも低いせいか、ラズベリーが相手にしても、大したダメージにはならないようだ。

 

 やはり大きなネズミは囮で、射撃ネズミが本命だったのだろう。

 

「アクアショットですの」


 ラビィがラズベリーを襲っていた大きなネズミを倒した。

 

 でもまだ射撃ネズミは健在だ。サクラは突撃するかどうか迷っているみたいだ。


「サクラ。前に出たら狙われる。射撃ネズミは僕らに任せて」

「承知しました」


 そのタイミングで射撃ネズミは、第2弾を放とうと口を開き始めた。

 

「甘いわ! ウオォォォォン!」


 キンちゃんの咆哮が、射撃ネズミの動きを一瞬止める。

 

「一瞬で十分さ。ムーンボム!」 


 リキャストタイムは過ぎている。3体で並んでいたのが運のつきで、僕の魔法で射撃ネズミは消えていった。するとついに、もっと大きなネズミがやってくる。

 

「騎士ネズミ……わかりやすいな」 

 

 ただ体が大きいので、一度にこられるのは2体だけらしい。

 

 しかもそのおかげで、新たな射撃ネズミがいても、騎士ネズミがかげになって撃てないだろう。

 

「サクラ! キンちゃん」 

 

 サクラが左の騎士ネズミ。キンちゃんが右の騎士ネズミへと飛び込んでいく。

 

「はぁ!」 

 

 サクラが左手の剣を横に振ると、騎士ネズミは頭を引っ込めるようにして躱してしまう。

 

 でもサクラは二刀流だ。そのまま右手の刀を突き出した。

 

「チュィアァ」 

 

 鼻のあたりを突き刺した刀で、騎士ネズミは声を上げる。

 

「当たらぬわ!」 

 

 キンちゃんは騎士ネズミの噛みつきをかわすと、洞窟の壁を蹴ってジャンプして、いつかの迷宮の時のように、上から騎士ネズミへと攻撃した。

 

 キンちゃんの右手の爪が、騎士ネズミの左目へ直撃した。

 

 クリティカルでもしたのか、激しく多角形の板が飛ぶ。

 

 それに怯んだのか、騎士ネズミは少しだけ後退した。

 

「ムーンボール!」

「ウォーターランスですの!」


 サクラが攻撃した騎士ネズミへ、僕とラビィは追い打ちをかける。

 

 僕らの魔法がヒットした騎士ネズミへ、さらにサクラが剣を振るった。

 

 その一撃は横頬に当たり、騎士ネズミはダメージエフェクトを飛ばして消えた。

 

「ウィンドアロー」 

 

 キンちゃんが怯ませた騎士ネズミへと、ラズベリーが魔法を飛ばす。それでも倒せなかったので、キンちゃんが突進をした。

 

 ゴンッと言う音とともに、騎士ネズミは多角形の板を撒き散らしながら消えていく。

 

 でもその時、僕の目には見えた。

 

 ダメージエフェクトの中を、緑の大きな塊が飛んできていたのだ。

 

「キンちゃん!」 

 

 それが精一杯だった。魔法を使う間もなく、キンちゃんは避ける暇もなく、大きな緑の塊が直撃する。

 

 ラビィの横を吹っ飛んで、キンちゃんは後方にまで飛ばされた。

 

「わ、我がこの程度の攻撃で」 

「レタヒールですの」


 ラビィが冷静にキンちゃんを回復する。でも緑の膜が覆っているので、毒状態になっているはずだ。


「キュアポイズンですの」 

「やれると思うな!」 


 毒が解除できた途端、キンちゃんが起き上がる。すると一気に洞窟を駆け抜け、広間の方まで突撃してしまう。

 

「待って! キンちゃん!」 

 

 召喚獣には意思があるので、必ずしも指示を聞いてくれるわけではない。でもこういう無茶をするとは、僕には予想外だった。

 

(一角が崩れれば、パーティは崩壊する) 

 

 キンちゃんが飛び込んだ事で、前衛が薄くなってしまった。でも相手も数は減っている。と言うか残っているのは、キンちゃんを攻撃したでかい射撃ネズミを除けば、大きなネズミだけみたいだ。

 

「あっ、倒した」 

 

 しかもそのでかい射撃ネズミは、キンちゃんが倒していた。さらに周りの大きなネズミを、次々と倒している。

 

「キンちゃん。なんでなの?」


 ラズベリーがびっくりしているけれど、僕はサクラで似たような状況になったことがある。

 

 なんどか我にも戦わせろと言っていたし、きっとそういう性格なのだろう。

 

「安心して。戦いが好きなキンちゃんが、ちょっと戦いが少なくて気持ちが盛り上がっただけだよ。サクラにもあったけど、戦ったらもとに戻ったから」 

「そ、そうなんですか。キンちゃんは戦闘が好きなんですね」


 そんな話をしていたら、いつの間にかラビィとサクラも、キンちゃんに混ざって戦っていた。

 

 残りは大きなネズミだけだったので、特に危険なこともなく、無事に広間での戦闘が終了した。

 

 でもさすがに無傷で勝利は無理だった。きっとこれからも、こういう危ない戦いがあるだろう。

 

「みんなおつかれ」 

「マスターのために」

「戦闘終了ですの」

「ふんっ、たわいない相手よ!」

「お疲れ様です」


 ラズベリーはキンちゃんの毛の中に潜った。きっと突撃したキンちゃんが心配だというのもあるのだろう。

 

「主を守るのは我だ。我が倒される危険性がある場所へ、突撃などせぬよ」 

「うん。わかってるよ。ありがとう」

 

 ラズベリーを安心させるためか、キンちゃんはそんなことを言っていた。

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