63.納品のクランポイント
そうやって限界までクエストをクリアすると、僕のレベルは16になっていた。ラビィも上がりにくいと思ったけれど、しっかりと2レベルになっている。
とは言え進化したラビィは、間違いなく必要経験値が増えている。
ただサクラがいつのまにか12レベルにまでなっているので、今回のアップデートの恩恵はかなりあると言えるだろう。
クエストを限界まで終えると、クランポイントは21になっていた。少なくとも僕は10ポイント稼いだはずなので、ラズベリーやマーミンのパーティも頑張っているみたいだ。
冒険者ギルドで報告を終えると、僕は『岩石人形の討伐』と『鉄鉱石の納品』のクエストを受諾する。
今の僕たちの攻撃力ならば、『鉱山迷宮』のノーマルは余裕で行けるだろう。そこで岩石人形を倒しつつ、鉄鉱石を納品すれば、すぐにでもお金が貯まるはずだ。
「そんな感じで行くよ」
「頑張りますの」
「ウガァ」
「いってらっしゃい」
マリーの声に僕は行ってきますと答える。なんども往復することになるけれど、お金を稼ぐためには仕方がないのだ。
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僕は限界までクエストを頑張り、合計で4万ウェドを手に入れた。これで僕の所持金は8万ちょっとあるから、5万を返済しても3万は残る計算だ。
ダンジョンのほうが経験値が良いせいか、僕は17レベルに上がっていた。ラビィはわずかに経験値バーが残っているので、もしかするとレベルは1に戻っても、必要経験値は16レベルとか17レベル分必要なのかもしれない。
サクラのレベルも順調に上がっているので、進化も楽しみになってきた。
そんな感じで僕らはクランハウスに帰ってくる。エントランスホールで一息ついていると、ビクトールが声をかけてきた。
「お疲れ様でございます。御用の際はベルでお呼びください」
「ん、了解」
ビクトールは小部屋へと消えていった。僕はクランのメニューを開いて、クランポイントを確認した。
『鉱山迷宮』のノーマルの一周で、岩石人形を30体倒すことができる。クエスト的には余剰だけれど、鉱石も欲しいし、全く無駄にはならない。
なにより一周でクランポイントが3ポイント入るので、合計30ポイントを稼いだことになる。
そのおかげもあって、クランポイントはすでに63になっていた。
「このペースで増えるなら、100は遠くないね」
「いい感じですの」
でも1000って言われると、ちょっと厳しい気がするから、あのモニュメント系は確実に後回しが良いだろう。
「おっ、64になった。そうだ。納品を見てみようか」
「そのほうがいいですの」
クランポイントを貯めるのに、討伐ばかりやっていたけれど、最初の説明で納品もあると言っていた。
僕は小窓のベルを手に持つと、リンリンと鈴を鳴らす。
「お呼びですか」
「クランポイントを貯める納品がしたいのだけど、どんなアイテムが納品できるの?」
パリッとした姿勢で、ビクトールが流れるように説明を始めた。
「全てでございます。ただアイテムによって、得られるポイントや必要個数が変わります。エッセンスなどですと、100で1ポイントになるなど、よく手に入るアイテムでは、高いポイントにならないのでございます」
簡単に言えば、なんでも納入できるけれど、レア度が低いとポイントになりにくいよってことだ。
僕が持っているアイテムでレアっぽいのは、装備と金や銀の鉱石くらいかもしれない。もしくは魔導書でも良いかもしれないけれど、ポイントにするには少し惜しい。
エッセンスを納入してもいいのだけれど、『無垢なる卵』で試してみたいというのもあるし、小鬼の角は使うだろうし、狼系のドロップなら良いかもしれない。
「森狼の牙はどう?」
「100で1ポイントでございます」
40ポイント欲しければ、4000個必要ってことだ。
(いらないレアアイテムはないし、納品は効率が悪いかもしれない)
ただ森狼を狩ってポイントを貯め、ドロップもポイントになるならば、それはいい感じかもしれない。
一応以前に作成した鬼シリーズの装備も聞いてみよう。
「この鬼の兜だとどうかな?」
「生産装備の場合ポイントが僅かに増えます。この装備一つで1ポイントになります」
微妙な感じだった。作成の難易度を考えれば、もう少し欲しい気もする。でもこの手の生産で10ポイントとかだったなら、それはそれでバランスが悪い気もするし、ようは簡単にはクランポイントは貯まらないってことだ。
銀鉱石を直接納入するよりは、多少はポイントがマシになるくらいのレベルだろう。
「そうだ。ポイントの高いアイテムはある?」
「レア以上の素材そのものでも高いと思いますが、それを加工した製品ならばさらに高くなります。お店で販売されていない卵であれば、最低でも100ポイントにはなるでしょう」
ウルトラレアに近い卵だから、それくらいでも足りない気がするけれど、出る時は出るから、それくらいかって言う気もする。
100ポイントはすなわち、1000体狩るってことだから、それで卵が出れば倍のポイントになるというわけだ。
ただこの方法は召喚師限定になるだろう。卵のドロップは召喚師以外では落ちないのだ。
「ありがとうビクトール」
「いつでもお呼びください」
ビクトールは小部屋に帰っていった。
マーミン:やっほー。そっちの調子はどう?
っと、いきなりマーミンからメッセージが届いた。
ラル:いい感じだね。ポイントもお金も稼いでいるよ
マーミン:そっか。こっちは湖ゾーンに来てるわ
新しく解放されたゾーンの中でも、マーミンたちは『ロッカテルナ湖』に行っていたようだ。
マーミン:湖の中になにかあるみたいだけど、呼吸が続かなくて調査できないのよね
ラル:あー、それだと呼吸できる装備とかありそうだね
マーミン:かもね。ついでに魚系の魔物もいるわ。水中戦闘は普通にできるみたい
呼吸が続くなら、戦闘は普通にできるようだ。とはいえ地上と同じく動けるわけではないだろう。
マーミン:水泳スキルを取得してなくても、泳げる人は泳げるみたいね。でも取得してると楽に泳げる感じよ
もとから泳げる人は、それなりに泳げるけれど、スキルがあればもっとうまく泳げるって感じだろう。でも呼吸とは別だろうから、水中を調査するなら、それなりの準備が必要な気がした。
ラル:今までにないゾーンだね。面白そう
マーミン:面白いけど、本格的な探索は無理そうね
水中での呼吸をどうするかって感じみたいだ。それが解決すれば、なにかありそうな湖の中も調査できるだろう。
ラル:それじゃ、気をつけて頑張ってね
マーミン:ラルもね
新しいゾーンはやっぱり楽しそうだ。でも焦ることなく、レベルを上げてしっかりと進んでいこう。
「あっ、魔物の卵屋に行こうかな」
「それがいいですの」
「ウガァ」
クランポイントは貯まっていないけれど、お金はあるので卵を買ってみよう。それで仮想契約卵部屋が増設できれば、すぐに試すことができる。
僕たちはクランハウスのポータルから、はじまりの街へと向かった。
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久しぶりに来た『はじまりの街』を歩いていると、ヘビを連れたプレイヤーを多く見かけた。買える卵はトカゲもカエルもあるはずなのに、なぜかヘビしか見かけない。
ただヘビしか見かけないとは言え、このプレイヤーたちは召喚獣が手に入らなくて、諦めた召喚師の人たちかもしれない。
そのせいか僕のサクラが注目される。でも誰も声をかけてきたりはしないようだ。
やがて通りを地図に従って歩いて行くと、『魔物の卵屋』を発見した。
まるで喫茶店のような外観は、ガラス窓から店の中が見えている。棚に卵が並んでいる感じで、見ているだけでもワクワクしてきた。
僕は高揚する気持ちを抑えながら、扉に手をかけてお店の中へと入る。




