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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
戦力が足りない
45/176

45.ノーマルの邪妖精長

 順調に魔物を倒して進んでいると、ふと小さなことが気になってきた。

 

「ねぇ、マーミンは紫色のローブを着ているけど、その下は何を着ているの?」

「何も着てないわよ」


 うっと返事に詰まってしまう。この場合の何も着てないは、決して裸というわけではない。すべての装備を外しても、必ず下着は身につけているからだ。

 

「好きでそうしているわけではないわ。ワンピースもそうだけれど、ローブって上下の装備枠に入るでしょう? だからローブは鎧であり、スカートでもあるの」 


 そう言えば前にラビィが、ワンピースからスカートに装備を変えた時、上半身の装備がなくなったことがある。

 

 つまり今のマーミンがTシャツを着れば、下半身は下着だけになるってことだ。

 

「へー。そうなんだ」 


 内心でドキドキしながらも、僕は平静を装って答える。

 

「体を覆うマントでも似たような格好になるから、できればそっちがいいよね」

「そうだね」


 という他愛もない会話をしていると、ついに最下層のボス部屋の前まで来た。

 

「いよいよですね」 

 

 レベルも強さも十分だと思うけれど、ラズベリーの声が少しだけ震えていた。それは不安からなのか、興奮からなのかは判断できない。

 

「さっさとやろうよ。ラル、扉に触って」 

「ん、行こうか」

「はい」


 僕が扉に触れると、いつものように部屋の中へとワープする。

 

 イベント的に体が動かない間に、僕はボスの攻略法を説明した。

 

「ここのボスは攻撃すると空へと逃げる。その後に風の範囲魔法を使ってくるから、ボスの背後に隠れるんだ。そして降りてきたところを攻撃、空に逃げる、後ろに回るを繰り返して攻略する」

「はい」

「オーケー」


 やがて『ウキャニャニャニャー!』っとボスが叫ぶ。

 

 それが戦闘の合図なのだ。僕はボスから少し距離をとった。

 

「ファイアショット!」 

  

 マーミンは先制で魔法を使っていた。この魔法は最大で5つの火の塊を作成し、それを複数、もしくは単体へとぶつける魔法だ。

 

 レベル6で覚えられる、いわゆる中級の魔法だった。

 

(綺麗だな)


 初めて見る火魔法は、怖さよりも美しさがあった。火の塊が軌跡を残しながら、一つづつ邪妖精長へと着弾する。その一つ一つが当たるたびに、綺麗な多角形の板が飛び散った。


 邪妖精長が空へと逃げようとしたが、なぜか力なく地面へと落ちてしまう。

 

「えっ」 

「あれっ」


 昔の僕でも数ターンだったのだから、ランキングに載るほどの魔法使いならば、この結果もおかしくはない。

 

「伝説の魔女に不可能はないのよ!」 


 マーミンが右手を顎に当て、左手は腰に添えて、なにやら決めポーズをとっていた。それが滑稽ではなく、格好良く見えるのは、言葉と実績が伴っているからだろう。

 

「ノーマルに敵なしだね」 

 

 せっかくのボス討伐だったのに、ドロップログを消していたのは残念だった。でもパーティで倒していたらログが埋まりそうなので、コモンドロップは表示しないという設定に変えておこう。

 

「あっ、妖精のブラウスがドロップしました」 

「おめでとう」

「いいな、私は精霊のチュニックのレシピだって」


 そのレシピは僕がファームした経験から言うと、レシピの中でもレアな方だ。マーミンは運がいいタイプかもしれない。

 

 自分のドロップを確認してみたら『精霊のスカート』のレシピだった。被りまくって捨てたくなるレシピだけど、ドロップしたものは大切にしておこう。

 

「もしかしてこのブラウスって、ラビィさんの着ているのと同じですか?」

「同じだナァ」


 ラビィの言葉を確認すると、ラズベリーは早速妖精のブラウスに着替えたみたいだ。

 

「おそろいだナァ」 


 ラビィはそっとラズベリーに近づいて、二人で並んで僕らに見せてくる。


 でもこれはまずい。

 

 ラズベリーの元の装備はワンピースだ。なのに上だけを装備変更したら、下半身がとんでもないことになってしまう。

 

(青と白の横ストライプ……)


「よく似合っているわ」


 マーミンはなんとも思わないのか、普通に感想を言っていた。


「ありがとうございます」


 ラズベリーも笑顔で言葉を返す。

 

「特にその縞パンが可愛いわ」 

「えっ、あっ、きゃあ」

 

 楽しそうなマーミンの言葉で、ラズベリーはしゃがみこんでしまう。そしてすぐに元のワンピースへと戻った。

 

「ま、街の中でなくて、よかったよね」 


 僕のフォローの言葉も、いまいちうまくなかったようだ。

 

 ワンピースに戻ったラズベリーは、ズボッとキンちゃんの毛の中へと入ってしまった。


「主、お似合いですぞ。恥ずかしがることなどありません」


 そのキンちゃんが、とどめを刺しているような気がした。


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 ラズベリーが立ち直るまで、なかなか毛の中から出てこなかったけれど、マーミンと魔法の話をしているうちに、すっと外に出てきた。

 

「お、お騒がせしました……」 

「いいのよ」

「全部揃えればいいのさ」


 僕の言い方が悪かったのか、ちょっと顔を赤くしてラズベリーは俯いてしまう。


「はい」


 小さいけれど返事が聞こえたので、しばらくすれば気にしないようになってくれそうだ。

 

「お待ちかねのハードチャレンジよ!」 

 

 マーミンはもともと気にしていないのか、心はハードモードみたいだ。ここでもやもやしていても仕方がないので、僕もその勢いに乗らせてもらう。

 

「よっし、ハードにチャレンジするよ!」 

「はい」

 

 僕はダンジョンメニューから、邪妖精の迷宮ハードを選択する。

 

 そうやってついに、僕らはハード迷宮に挑戦するのだ。

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