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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
戦力が足りない
41/176

41.レジェンドクエスト

 僕は再びゲームに戻ると、ロードラクルを討伐するということで、ギルドでクエストを受けてきた。2000ウェドといい感じの報酬だし、装備の充実などに使っていこう。

 

 準備万端で森へと来たが、前とは違い雨は降っていなかった。

 

 今日の南の森は、木々の隙間から日が差し込み、幻想的な感じになっている。

 

 どこからか聞こえてくる小鳥の声が、僕のファンタジー感を増幅させた。

 

 目的を忘れて雰囲気に浸っていたら、がさっと下草を踏みしめる音が聞こえてきた。

 

 音のした方を確認すると、空気を読まずにロードラクルが近づいてくる。

 

「ムーンスピア!」 


 のんびり気分だったけれど、ロードラクルを見たら気合が入る。僕は早速新しい魔法を試してみた。

 

 小さめで青白く光る投槍が、僅かに軌跡を残しながら、ロードラクルへ向けて飛んでいく。

 

「綺麗だな」


 夜ならばもっと綺麗に見えるだろう。

 

 ムーンスピア自体の初期使用魔法力は10だった。ムーンブラストの限界が10なので、これで倒せるならば、魔法力の効率が良くなるはずだ。

 

 だがそれだけでは怯むだけで、一撃というわけにはいかなかった。魔法制御で調整しながら、最適を探していこう。

 

「ウガァ」 

  

>>>>>>>

ロードラクルの牙×1

獣エッセンス×1

竜エッセンス×4 を手に入れました

<<<<<<<


 でもラビィが魔法を使うことなく、サクラの追撃で倒すことができる。ムーンスピアだけで、ムーンブラスト、ムーンボム、そしてアクアランスを合わせたダメージにはならないだろうから、オーバーキルにならないぎりぎりで、サクラの攻撃がいい感じになったみたいだ。

 

「いけそうだ」 

「いい感じだナァ」


 すでに気持ちが戦闘モードになった僕は、次のロードラクルを探して歩く。


--------------------------


 あれから何度かロードラクルと戦闘した結果、ムーンスピアを使って一撃で倒すためには、消費魔法力を15にする必要があった。

 

 今の僕だと6、7発くらいで魔法力切れを起こすだろう。

 

 自動回復を計算に入れれば、もしかすると8発はいけるかもしれない。

 

 でもそもそも僕は一人じゃないし、一人で倒してもスキルレベルは上がらない。

 

 だからサクラが反撃を受けない範囲で、もっと調整してみよう。


「ラビィのアクアランス後に、僕のムーンスピアを撃ち込む。そこをサクラが一撃でいこう」

「わかったナァ」

「ウガァ」


 ムーンスピアのリキャストタイムは、ムーンボムと同じ10秒だった。チェインするほどの連戦でなければ、まあ許容範囲といえるだろう。


 ちょうどよくスッと木々の間から、ロードラクルが出てきた。

 

「アクアランスナァ」 

「ムーンスピア!」


 ラビィの魔法が着弾するくらいで、僕はムーンスピアを使う。連続攻撃を受けたロードラクルが怯んだところへ、サクラが飛び込んで小鬼小刀を振るった。

 

「ウガァ!」 

 

>>>>>>>

ロードラクルの皮×1

獣エッセンス×2

竜エッセンス×3 を手に入れました

<<<<<<<

 

 リキャストタイムは10秒だけれど、これが一番安定する方法に思えた。少なくとも1体で20秒かからないのだから、かなりのペースになるはずだ。


 そうやってロードラクルを倒しながら、ギルドに戻ってはクエスト報告をし、あらためてクエストを受け直す。

 

 そんなことをしていたら、71体目でついにあれがドロップした。

 

>>>>>>>

ロードラクルの肝×1

獣エッセンス×1

竜エッセンス×4 を手に入れました

<<<<<<<


「最初の一個目ゲット!」


 傷つけてしまいそうだし、ちょっと怖いのでインベントリからは出さないけれど、まずまずのタイミングでドロップしてくれた。

 

「この調子でどんどん行くよ」 

「はいナァ」

「ウガァ」


 クエスト報告があるので、森の奥には入らないようにしながら、僕らは次のロードラクルを探していく。

 

--------------------------


 クエストを一日の最大までクリアしたおかげで、合計20000ウェドの収入を得た。店売りの装備はそこそこの性能なので、そのうちオークションなどを確認してみよう。

 

 クエストから解放された僕らは、街の近くではなく、どんどん森の奥へと移動するようにして狩りを続けた。


 少しづつ森が深くなっていくけれど、基本的に戦い方は変わらない。

 

 そうやって討伐を続けていると、ロードラクルの牙が300までいかない内に、3つめのロードラクルの肝まで手に入った。


「順調だなぁ」


 ロードラクルにも慣れてきたので、あらためてキーンソードを試してみたくなる。


「ラビィ、サクラ。次は僕に任せてくれ」

「わかったナァ」

「ウガァ」


 少し歩いただけで、ロードラクルを発見した。

 

「よし」 


 僕はなるべく気が付かれないように近づいていく。首尾よく3メートルくらいまで近づいたところで、僕はムーンスピアで攻撃した。

 

 今回はキーンソードの試しなので、最低魔法力で使用する。

 

 予定通りに一撃では倒せないけれど、ロードラクルが怯んでいる間に、僕は間合いを詰めて剣を振るった。

 

「えい!」


 想像以上のダメージエフェクトが、僕の目の前で弾け飛んだ。

 

>>>>>>>

ロードラクルの肝×1

獣エッセンス×3

竜エッセンス×2 を手に入れました

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「すごい。武器の数値でも予想していたけれど、とんでもない威力だ」 

 

 でも前に見た黒騎士の槍と比べるとどうだろう。特殊効果で範囲攻撃までしていたから、まだ追いつけている気はしない。

 

「まだまだだな。っていうかさりげなく肝もドロップしてる。よし、残り1つだ!」

 

 武器もいい感じで、肝も残りは一つで良い。

 

 思わずスキップ状態になって森を進むと、いきなりひらけた空間に飛び込んだ。

 

 いい感じに下草が生えた広場に、いくつもの切り株が見える。


「切り株が複数ある。誰かが意図的につくった広場だよね……」

「わからないナァ」

  

 どういうことだろうと見回していると、空からバサッバサッと、不穏な羽ばたきが聞こえてきた。

 

 フッと空を見上げると、体が鷲でありながら、鶏の頭を持った魔物が降りてこようとしていた。

 

「チキンヘッド……」 

 

 火竜の情報の一つに、まるで火竜を守護するかのごとく、近くにはチキンヘッドが存在するという話がある。

 

 実際に守護しているのかは知らないけれど、なんだかその存在にドキドキしてきた。

 

 そうやって眺めていると、バサリと切り株に1羽が降りてくる。すると続けて数羽が降りてきた。

 

「優しき人間よ。我らに何か用事か?」 

 

 はっきり言ってここに来たのは偶然だ。でも火竜のヒントになりそうな魔物なので、ここは何かしらの情報が欲しい。

 

「火竜についての情報が欲しい」 

「ここは我らの羽休めの休憩場。火竜は山に棲んでいる。それ以上の情報が欲しいのならば、我らが頼みを聞いて欲しい」

 

 どうやら本当に火竜の情報を持っているようだ。

 

 しかもこれは予測だけど、魔物言語がなければ会話もできないはずだ。とすれば、他のプレイヤーがここでチキンヘッドに会ったらどうなるか。

 

 おそらくは言っていることがわからずに、討伐してしまうはずだ。

 

 きっとレアな情報だろう。僕にできることならば、ここは頼みを聞くべきだ。

 

「はい。どんな依頼ですか?」 

 

>>>>>>>

レジェンドクエスト:ドラクルキングを討伐せよ

ドラクルキング×1

報酬:チキンヘッドからの信頼

<<<<<<<

 

 クエストが突然受理された。どうやらドラクルキングとやらを討伐するらしい。

 

「この休憩場でも、不意にロードラクルから襲われることがある。多くはないが犠牲になる仲間たちがいるのだ。そこで森を抜け、ドラクルキングの棲む洞窟へと向かい、これを討伐してほしいのだ」

 

 悪くない話だとは思う。最終目標である火竜は、どこにいるのかすらつかめていない。最前線のプレイヤーは、もしかしたら知っているのかもしれないけれど、少なくとも僕は知らない。

 

「がんばります」 

「頼んだぞ。討伐後は、またここに来て欲しい」 

 

 そう言うとチキンヘッドたちは、次々と飛び去っていく。飛んでいく方向は『鉱山迷宮』みたいだ。

 

 とすると火竜はあの山にいるのかもしれない。

 

「どうしようかな」 

 

 それはいつかわかるだろうから置いておくとして、問題はドラクルキングだ。ロードラクルですらあの硬さだ。間違いなく近接で硬いタイプの魔物だろう。

 

 自分たちの戦力を分析するまでもなく、安定して戦える予想ができない。

 

「できれば避けたかったんだけどな……」 

 

 自分の中で解決策を見つけてはいるが、あまり気乗りがしなかった。

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