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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
戦力が足りない
39/176

39.森狼の卵を探して

 僕らがお店に近づくと、エプロン姿の鬼の方から話しかけてきた。

 

「我が友、久しぶりだね。優しき人は初めてだね。どんどん買い物していってよ」 


 僕の前にメニューが開く。ラズベリーの前にもメニューが開いているはずだ。

 

「わぁ、色々売ってるんですね。魔法やレシピがある……」 

「大半が5レベルまでだけど、時々それ以上も混ざっているから、よく見た方がいいよ」


 ということで僕は『ムーンスピア』を検索する。

 

「おっ、あった……?」 

 

 検索にヒットしたので喜んだけど、どうやら検索の言葉を変えるべきだったらしい。まさかの同名の槍が、存在するとは思わなかった。

 

(ムーンブラストを発動できる槍だ。でも攻撃力が低いし、序盤の装備なんだろうな)


 そして当然のように、僕の欲しい『無魔法:ムーンスピア』はなかった。

 

「あ、ウィンドアローが売ってます!」 

 

 リストを見ると『風魔法:ウィンドアロー』が売っている。この魔法はレベル5で覚えられるやつで、僕の欲しい『無魔法:ムーンスピア』と同じ必要レベルだ。

 

 つまりこれを逃せば、次の機会なんていつくるかわからない。

 

「ラズベリーは風魔法を使うの?」 

「はい。まだ3レベルです」


 だが5レベルなんてすぐだ。特に卵を狙って戦うならば、本当にすぐだって感じるくらいにレベルが上がる。

 

 『風魔法:ウィンドアロー』は1000石貨。こういう時のために、僕はお金を貯めたんだ。

 

「あっ、無くなりました」 

「大丈夫だよ。はい、これ」


 僕は買ったばかりの『風魔法:ウィンドアロー』を差し出した。

 

「えっ」 


 戸惑うラズベリーに、僕はこのお店の特徴を説明する。

 

「ある時に買わないと、二度と手にはいらないようなお店なんだ。さっきのクエスト二回分で買えるわけだし、気にしなくていいよ」 

「ありがとうございます」


 さっきのクエスト二回分が効いたのか、ラズベリーは素直に受け取ってくれた。

 

 僕の欲しい魔導書がなかったのが微妙だけど、魔導書を抱きしめならがニコニコするラズベリーに、そんな気持ちも癒やされていく。

 

「それじゃ、森狼狩りをしよう」 

「はい」 

「はいナァ」

「ウガァ」


 僕らは鬼の村を出て、森狼狩りを開始する。


--------------------------


 村から出て少し進むと、幸先よく森狼が現れた。


「ウィンドブレイド!」


 ラズベリーの風魔法を受けて、一撃で狼は消えていった。


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森狼の牙×1

獣エッセンス×3 を手に入れました

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「いい感じだね」 

「全力なら倒せるのですが、その分消費がつらいです」 

 

 最初の頃は全力での魔法なんて、4、5回撃てれば良いほうだ。この状況での100体狩りは、たしかにきついかもしれない。

 

「そうだ。このマントを装備して狩るといいよ」 

「えっ」


 僕のイモキンマントを見て、若干ラズベリーの顔が曇る。僕はきらいじゃないけれど、人を選ぶデザインなのは理解していた。しかもラズベリーのワンピーズが緑なので、まるでセットのようになるだろう。

 

 それでも僕は悪くないと思うのだけれど、感じ方は人それぞれだ。

 

「デザインが気に入らないかもしれないけれど、ドロップ率向上小がついてるんだ」 


 効果を聞いても微妙な顔をしている。でも最終的には装備することにしたようだ。

 

「お借りします」 

「うん。これを装備していれば、卵がドロップしたのにとか、絶対にイヤだからね」


 ラズベリーがイモキンマントを装備すると、思った通りによく似合う。ちょっぴりイモキンマンとかスーパーヒーローっぽいイメージが浮かんだけれど、それはそれで良いものな気がした。


 ラズベリーは『どうですか?』とも聞くことなく、次の森狼を探し続ける。少し顔が赤いのは、マントが恥ずかしいのかもしれない。

 

 ふっと現れた森狼に、ウィンドブレイドの魔法が飛んだ。

 

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森狼の牙×1

獣エッセンス×4 を手に入れました

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 今のところ集団では来ていない。


 僕らも戦いを始めよう。


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 森狼王がポップするかもと言う不安はあったけれど、まだその姿は見えない。何度か集団戦をこなしたおかげで、段々とラズベリーも慣れてきたようだ。

 

「フォームトライアングル!」


 ラズベリーを中心にして、僕らが三方向へ広がる布陣。まだレベルの低いラズベリーを守ると同時に、三方向の誰にでも、援護してもらえるようにという位置取りだ。

 

「ムーンボム!」


 運悪く僕のもとへ三頭向かってきた。

 

「ウィンドブレイド!」


 ムーンボムの範囲から外れた一頭へ、ラズベリーの魔法が飛んで行く。

 

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森狼の牙×1

獣エッセンス×3 を手に入れました

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 倒したときのドロップ判定は、僕とラズベリーへそれぞれ行われる。つまり一頭の森狼で、卵が出る確率は二倍だと言っても良い。

 

「ムーンブラスト!」 


 体勢を立て直した一頭へ一撃。

 

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森狼の牙×1

獣エッセンス×1 を手に入れました

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 ムーンボムで弱った森狼は、それで簡単に倒すことができる。


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森狼の牙×1

獣エッセンス×2 を手に入れました

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 さらに向かってきた一頭を、僕のバスタードソードが切り裂いた。


「サクラ。二頭注意だ」

「ウガァ」


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森狼の牙×1

獣エッセンス×5 を手に入れました

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 さらに二頭がサクラに向かったけれど、同時ではないので問題なく倒すことができる。

 

「ウガァ」 


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森狼の牙×1

獣エッセンス×2 を手に入れました

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 時間差があるならば、一頭づつと変わらない。


 こうやって戦っていると、小鬼の卵の事を思い出す。ある意味で始まったばかりなのに、まだ出ないのかと言う思いが生まれた。

 

(結局の所、僕は卵を三つも手に入れているし、心が贅沢になっているのかもしれない)


「ウィンドブレイド!」


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森狼の牙×1

獣エッセンス×1 を手に入れました

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 僕の目の前にいた一頭が、ラズベリーの魔法で消えていく。

 

「ラルさん?」 

「ごめん。ドロップしたわけでもないのに、卵の事を考えてた」


 僕の言葉にラズベリーはニコッと返してくる。同じ召喚師同士、卵の事を気にするのは当然だよね、みたいな感じだった。

 

「アクアランスナァ!」


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森狼の皮×1

獣エッセンス×4 を手に入れました

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「今にもドロップするんじゃないかって、ドキドキしますね」


 ラズベリーも最初よりはレベルが上っている。戦闘にも慣れて、余裕も出てきたようだ。

 

「ワクワク感がいいよね」  

  

 ドロップしないと言われているものほど、ドロップしたときの喜びが大きい。ましてやそれが有用であればあるほど、喜びはひとしおなのだ。

 

「っと、全滅させたみたいだ。少し移動してみよう」 

「はい」

 

 集団を殲滅すると、しばらく出現しなくなる。

 

 僕らが移動することで、次の森狼を見つけるのだ。

 

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 さらに一時間ほど粘ってみたが、いまだに森狼の卵はドロップしない。小鬼の時と違って、チャンスも二倍のはずなのに、僕にもラズベリーにもドロップしなかった。

 

「すいません。そろそろ落ちる時間です」

「そっか。ならポータルへ向かいながら、倒していこう」

「はい」


 ポータル付近の森狼は、集団で襲ってきたりはしない。

 

 なのでまばらに狼を倒して進むが、やぱっり狼の卵はドロップしてくれない。

 

「あの一頭が最後かな」 

「お願いします」 

 

 近くにいた一頭を、バスタードソードで切り裂いた。

 

 バキーン! 

 

 のはずなのに、切り裂く前にバスタードソードが折れる。

 

「忘れてたー!」 

「ウィンドブレイド!」


 ラズベリーがすかさず魔法で倒してくれた。

 

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森狼の牙×1

獣エッセンス×2 を手に入れました

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 完全に刀身部分が折れている。今となっては性能も低いが、はじめて買った武器だけに、少しの愛着も生まれていた。

 

 なのに修理を忘れるなんて、自分の間抜けさに口が開きっぱなしになる。

 

「完全に壊れると、特別な修理になるらしいですよ」 

 

 ポータルは眼の前だ。でもその短い距離の間に、ラズベリーが僕を慰めようとしてくれた。

 

「すごく高いみたいなので、思い切って新しくするのもいいかもしれないです」 

「マスター、元気だすナァ」

「ウガガァ」 

 

 ちょっと落ち込んでしまったけれど、前向きに考えれば、新しい武器を手に入れろという啓示かもしれない。

 

「そうだね。落ち込んでいても仕方がない」 

「そうだ。ちょっとここで待っていてください」 

「あっ、はい」 

 

 するとラズベリーがログアウトしてしまった。

 

 一分もしない内に、ポータルからコールドベリーが現れた。

 

「あっ、コールドベリー」 

「えっと、これを受け取ってください」 

 

 取引ウィンドウに、金鉱石に銀鉱石、鉄鉱石があらわれる。どうやら前に一緒に『鉱山迷宮』へ行ったときの、ドロップ品みたいだ。

 

「私はメインをラズベリーで頑張るので、もう鉱石はいりません。今日のお礼に受け取ってください」 

 

 いつもの僕ならば、そんなの悪いよと断るところだけど、ログアウトしなきゃいけない時間が迫る中、わざわざキャラまで変えてきてくれたラズベリーの好意を、断る気にはなれなかった。

 

「ありがとう。この鉱石で新しい武器を作成するよ」 

「はい。完成したら見せてくださいね。それじゃログアウトします。またね」 

「うん。また」

「またナァ」

「ウッガァ」 

 

 すぅっとコールドベリーが消えていった。

 

「あっ、マントを返してもらうの忘れた!」 

 

 でも些細な事だ。今度インしてきた時にでも、返してもらえればそれでいい。

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