37.魔導書クエスト
手持ちの素材でなんとか鍛冶を7レベルにすることができた。ダストボックスで素材が回収できたのも大きいだろう。
刀の作成難度は4になり、6割がた普通に作成できるようにはなった。でもスロットがいまいちだったせいで、サクラ用の武器はまだできていない。
レンタル時間も過ぎたので、僕は気分転換をかねて、図書館で魔導書クエストを受けることにした。
「地図によるとこのあたりだね」
角を曲がると、通りに面して大きな建物が見えた。入り口に図書館と書かれているので、図書館で間違いないだろう。僕は扉を開けて、中へと入った。
中は小さめのホールになっており、受付が存在した。そこに年上の清楚な感じで、白いローブを着た女性が立っている。ホールから移動できる扉は一つしかなく、本はそっちの方にあるのだろう。
「図書館へようこそ」
落ち着いた感じの声だった。大人の女性って感じがする。
「こんにちは。魔導書クエストを探しに来ました」
「ありがとうございます。ではこちらをどうぞ」
パッとメニューが開く。このお姉さんとやり取りするわけではなく、メニューで選択するらしい。
今のところ選べるのは、初級魔導クエストか中級魔導クエストだ。初級は5レベルまで、中級は6~8レベルまでの魔法が手に入るようだ。
収集系、納品系の2種類の依頼がある。でもどちらも報酬はランダムだから、得意分野を選べってことだろう。
まあ収集するためには討伐もしなければならないし、納品するアイテムを作成するにも、結局は戦闘が必要になることもあるはずだ。
『邪妖精の迷宮』のノーマルでは、5レベルまでの魔法しかドロップしなかったから、ここは当然中級魔導クエストを受託する。
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中級魔導書クエスト:頭蓋骨を収集せよ
頭蓋骨×20
報酬:中級魔導書からランダム
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クエストの内容もランダムだけど、これは当たりだったかもしれない。図書館でどう使うのかは知らないけれど、『アロイ・ガライの館』でたくさんドロップしている。
「クエストの報告をしてもいいですか?」
「はい。お願いします」
受付で報告をすると、勝手にインベントリから頭蓋骨が消えていた。
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風魔法:ウィンドボムの魔導書×1 を手に入れました
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「ありがとうございました。またよろしくおねがいします」
レベル6で習得できる風魔法の魔導書だった。でも生憎と僕らに風魔法を使える人がいない。
僕はさらに収集系のクエストを受ける。
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中級魔導書クエスト:森狼の牙を収集せよ
森狼の牙×20
報酬:中級魔導書からランダム
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どうやらついているらしい。僕はすぐに報告する。
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風魔法:トルネードの魔導書×1 を手に入れました
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「ありがとうございました。またよろしくおねがいします」
嬉しいけれど複雑だった。これは風魔法レベル8で習得できる強力な範囲魔法で、しかもレベル8はランダムの中でも出現率が低いのだ。
レアが手に入ったのはもちろん嬉しい。レアハンターとしても最高の気分だ。でも利用することができない。
使えない属性の魔法ばかり出るあたりが、幸運13なのかもしれない。
クエストクリアなので、僕はさらに依頼を受ける。
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『クレアの注目』が発動しました!
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(えっ、すごい久しぶりだ)
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中級魔導書クエスト:ロードラクルの肝を収集せよ
ロードラクルの肝×5
報酬:中級魔導書からランダム
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今度は見たこともないアイテムだ。でもロードラクルは知っている。このチェルナーレから南にいった森に生息している恐竜みたいな魔物のことだ。
数が今までよりも少ないことから予想するに、アンコモンレベルのアイテムなんだろう。
でもそれよりも『クレアの注目』も気になるところだ。以前はそれでハヤテに出会うことになった。
クエストが難しくなっているように思うけれど、それが注目の効果かもしれない。
称号をもらった時のことを考えれば、『このクエストをクリアできる?』って言われている気がするのだ。
「行ってきます」
「お気をつけて」
あまり会話ができないタイプかと思ったけれど、見送りの言葉をもらうことができた。
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チェルナーレを出て南の森に入ると、その雰囲気は芋虫の森に似ていた。地面は下草が生えて歩きやすい感じだし、鬱蒼とした感じがなく、天気が良ければ日も差し込んでいただろう。
「でも雨が降るんだねぇ」
「雨も気持ちいいナァ」
ラビィは雨が好きなのかよくわからないけれど、つらそうにしてるなどの様子はない。むしろいつもどおりの明るさで、陽気な感じを見せている。
家の中ならば雨が落ちる音が心地よくもなるけれど、リアル系のすごいところなのか、落ちてくる水が少し冷たい。薄暗くもなっているし、あまりいい感じはしなかった。
「雨……かぁ」
こんな感じならば、プレイヤーの誰も狩りに出たりはしないだろう。出るにしても『鉱山迷宮』とか、天気に影響のない場所へ出かけるはずだ。
もしも僕がレアハンターでなければ、こんな雨で出かけることはしなかっただろう。誰も出かけたがらないからこそ、何かがある気がしてしまうのだ。
「ロードラクルだ。ムーンブラスト!」
全力で放った魔法だけど、多角形の板を飛び散らせるだけで、一撃とはならなかった。
「アクアランスナァ」
ラビィの魔法が直撃したのに、それでもまだロードラクルは倒れない。
ロードラクルは硬そうな鱗の茶色いトカゲが、人間の大人サイズに巨大化して、二足歩行をしているような魔物だった。でもどちらかと言えば、トカゲというよりは恐竜みたいなイメージだ。
頭がいわゆるドラゴンみたいで牙は痛そうだし、指の先に生えている爪も鋭い感じがする。
噛まれたり刺されたりするのは嫌だなとか考えてたら、サクラが攻撃するよりも先に、右手の爪を突き出してきた。
「危ない!」
ギンっと小鬼小刀と爪が弾きあった。サクラは攻撃しようとした小鬼小刀で、ロードラクルの爪を弾いたのだ。
「ムーンボム!」
ロードラクルの左肩からダメージエフェクトが飛んだ。これでも倒しきれないらしい。その耐久力は、岩石人形よりも高そうだ。
そこへバランスを崩したロードラクルに、サクラが小鬼小刀を振るう。
「ウガァ!」
やはりサクラの攻撃力は高いのか、それでやっとロードラクルは消え去った。
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ロードラクルの皮×1
ロードラクルの牙×1
獣エッセンス×2
竜エッセンス×3 を手に入れました
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突然現れた『竜エッセンス』に、僕の心が踊りだす。
「竜のエッセンスだ! やった。もしかしてドラゴンと契約できるのかも!」
ラビィもサクラも首を傾げるだけで、僕の言葉の意味がわからないらしい。でも僕にはひらめきがあった。この『竜エッセンス』をたっぷりと集め、『無垢なる卵』に投入したらどうなるか。
きっとドラゴンと契約できるだろう。
でもそこまで考えると、心が落ち着いてきた。
よく考えたら、プレイヤーがドラゴンを召喚できるようなことをさせるだろうか。このゲームの現在の目標は火竜だ。それくらい人外な存在をアピールしておきながら、プレイヤーにドラゴンを与えるなんて、そんなことをするはずもない。
仮に手に入ったとしても、リトルドラゴンとかペット系の枠を出ない気がする。
「先走ったかな」
『竜エッセンス』を見つけてはしゃぎすぎたみたいだ。竜に関する何かと契約はできるのだろうけれど、その確証なんてどこにもないし、今は依頼に集中しよう。
「フォームAで遠距離から攻撃して、ロードラクルのバランスを崩してから、サクラが攻撃だ」
「わかったナァ」
「ウガガァ」
この方法が一番バランスが取れそうだ。何より無傷で倒せるだろう。
「よし。ロードラクルだ。ムーンブラスト!」
打ち合わせ通りに戦うと、予定通りの無傷の勝利だ。
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ロードラクルの牙×1
獣エッセンス×1
竜エッセンス×2 を手に入れました
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ドロップを見ると、どうやら牙のほうがコモンで、皮のほうがアンコモンみたいだ。見た目には皮なんていくらでもあるじゃないかと思うけれど、なら牙だって2本手に入らないのはおかしいとかになるだろう。
とかくだらない事を考えたところで、僕の背筋に寒気が走った。
「なら肝は何ドロップなんだろう」
アンコモンが複数あることもあるから、レアではないと思いたい。せめてアンコモンならば、50体くらい倒せばクリアできる。でもレアならば、最低でも500体は倒さなければ、5個も集まらないだろう。
「頼むよ肝。アンコモンであってくれ!」
僕らはフォームAで雨の中を、ロードラクルを探しながら進んでいく。




