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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
戦力が足りない
35/176

35.タンクは重要

 『鉱山迷宮』に入ると『邪妖精の迷宮』と同じように、なぜだか明るくなっている。せっかく灯の道具も売っていたり、夜目とかのスキルもあるのに、なんで理由もなく明るいんだろう。

 

「私が先頭で魔物をひきつけますから、討伐よろしくお願いします」 

「了解」


 僕はサクラとラビィに作戦を説明する。まあ作戦というほどではないけれど、コールドベリーに魔物が集まったら、それを横から攻撃するだけだ。

 

 コールドベーリーを先頭に、フォームBでダイヤの陣形を保ちながら、僕らは鉱山を進んでいく。

  

「岩石人形がいました。我が名はコールドベリー!」


 戦士が大抵持っている『名乗り』のスキルだ。これにより近くの魔物を、自分へと引き寄せる。

 

 のっそりと歩く『岩石人形』が三体も、コールドベリーに集まってきた。

 

 そう言えばコールドベリーは、いつのまにか鉄の棒と鉄の盾を装備している。まさしく硬そうに見えて、そう簡単には倒されることはなさそうだ。

 

 ガンガンガンと『岩石人形』のパンチがコールドベリーを襲っている。だがコールドベリーはその場から動かず、ただ攻撃を受けていた。

 

「今です!」 

「ムーンブラスト!」

「アクアランスナァ」

「ウガァ」


 まずは左の岩石人形に集中攻撃だ。最初ということで全力でやってみたけれど、ひとりひとりの攻撃では、岩石人形を倒せないみたいだ。三人の全力攻撃で、やっと一体を倒せるくらいのダメージだった。


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鉄鉱石×1

人エッセンス×3

妖エッセンス×2 を手に入れました

<<<<<<<


(コールドベリーがいなかったら、やばかったんじゃないか?) 


 コールドベリー自身も、鉄の棒で岩石人形を叩いている。

 

「次は右だ。ムーンブラスト!」 

「アクアショットナァ」

「ウガァ」


 ラビィの魔法が変わったので、少しダメージ総量が減った。でもその減少分は、コールドベリーの攻撃で補えた。


>>>>>>>

鉄鉱石×1

人エッセンス×1

妖エッセンス×4 を手に入れました

<<<<<<<


 コモンは鉄鉱石らしい。でも一個しかでないのは、結構きつい気がする。なにしろ鉄のインゴットを作るだけでも、鉄鉱石が三つ必要だからだ。

 

「はっ!」 

「ウガァ」

「アクアショットナァ」

「ムーンブラスト!」 

 

>>>>>>>

鉄鉱石×1

人エッセンス×2

妖エッセンス×5 を手に入れました

<<<<<<<

 

 ちょっと僕の攻撃が遅れたけれど、これで三体討伐だ。

 

「ふぅ。いい感じですね」 

 

 コールドベリーはダメージを受けた様子はない。その証拠に、ラビィもヒールをしていなかった。

 

「大丈夫そうなら進もうか。僕らの攻撃力はこんな感じで、戦い方もこんな感じだけど」

「十分ですよ。これならボスも倒せると思います」 

 

 コールドベリーがそう言うので、僕らは同じフォーメーションで先へと進んだ

 

--------------------------


 しばらく進んでいくと、鉱山の壁に扉を見つけた。コールドベリーがそのまま無視して進むので、僕は慌てて声をかける。

 

「待って。この扉は?」

「あっ、その扉は鍵がかかってるんです。奥にはレアな魔物がポップしていることがあるんですけど、斥候の人がいないとまず開けられません」


 レアと聞いて、試さずにはいられなくなる。

 

「試してもいいかな」

「どうぞ」


 僕は扉の前に立つ。


『解錠難度7を開始します』 


 前開けた扉は3だった。少なくとも、それの倍以上の難度らしい。

 

 僕の目の前にバトルラビットと戦う剣士の絵が浮かんだ。それがゆっくりと左に移動していくと、さっきまで絵が浮かんでいたところに四角い枠ができる。

 

『制限時間20秒。左の絵と違っているところを指摘してください。ピッピッピッ、スタート!』


 まさかの間違い探しらしい。スタートと同時に、枠の中に絵が浮かぶ。それはパッと見で、左の絵と違いがわからない。

 

「あっと、うさぎに角が生えている!」 


 ピンポーン。

 

 間違いは一つではないようだ。角は分かりやすかったけど、背景も平原で、剣士も違いがあるように見えない。

 

『残り10秒です』


 もはや時間がない。でも勝負はここからだ。追い詰められてからが、僕の本領発揮なんだ。

 

『残り5秒です』


 地面ばかり見るからダメなんだ。空だ。空を見るんだ。

 

「く、雲の形が違う!」 

 

 ブブー。


 それと同時に絵が消えていった。当然扉は開くことなく、解錠には失敗した。

 

「難しいですよね。斥候の人でも50%くらいで失敗するそうですよ」 


 厳しい戦いではなく、無謀な挑戦だったようだ。でも間違い探しなんて、解錠となんの関係があるだろう。前回のパズルはまだなんとなく、パズルなだけに解錠の許容範囲だったと思える。

 

 でも間違い探しは関係なさすぎだ。


「っと魔物です。我が名はコールドベリー!」


 僕の考えもまとまらず、失敗した気持ちが癒やされる前に、どんどん魔物が集まってくる。もはやこの気持は、戦闘で紛らわしてしまうしかなさそうだ。


--------------------------


 鉱山迷宮は階層の概念がないのか、分かれ道も少なく、ある意味長い一本道だった。そして『岩石人形』のアンコモンは銀鉱石で、ボス前まで全滅させたにも関わらず、2つしか手に入っていない。

 

(討伐数は30だった。鉄鉱石が27で銀鉱石が2つって、僕のマントが全然活躍していない)


「ここのボスはとにかく固いです。でも特徴はそれだけで、範囲攻撃もありません。全員でガンガン攻撃していれば、そのうち倒せると思います」


 コールドベリーの説明を聞く限り、力押しのボスのようだ。攻撃をコールドベリーに集め、周りから僕らが攻撃すれば、トラブル無く倒せるだろう。

 

「了解。準備はOKだよ」 

「では扉に触れてください」


 僕がパーティリーダーだから、扉に触れることで部屋の中に入ることができる。

 

「よし、行くよ」 

「おねがいします」


 僕は豪華な扉にそっと触れた。


--------------------------


 いつものようにボス部屋の中へと転送される。そして体が動かない。いわゆるイベントというやつだろう。

 

「おおっ」 


 初めて見るので思わず声がでた。岩の地面から石が飛び出し、それがガキンガキンと集まっていく。それらが集まって大きな人型になると、石が鉄のように変化していった。

 

「岩鉄人形です。固いので頑張りましょう」 

「攻撃は任せてくれ」


 と言うほど自信もないけれど、他にできることはない。

 

「ボボボボボォ」


 まるで火でも吐き出しそうな擬音だけど、岩鉄人形がそれを叫ぶと同時に、戦闘は開始された。

 

「我こそは王国の騎士にして最強の棒使い。我が名はコールドベリー!」


 名乗りのスキルは名乗れば効果があるけれど、もしかするとこれでもっと効果が上がるのかもしれない。

 

「ムーンブラスト」 

「アクアランスナァ」


 コールドベリーが岩鉄人形をひきつけているのを確認して、僕らは魔法を飛ばした。効果はそれほど高くなさそうだけれど、多角形の板は舞っている。

 

 ガイン!

 

 コールドベリーの鉄の棒が、岩鉄人形に叩きつけられる。鈍い音を響かせながら、しっかりとダメージを与えていた。

 

「ウガァ」 


 そこに遅れながらも、サクラが一撃を加える。切り裂くことはできなかったけれど、細かく多角形の板が飛んでいるのがわかる。

 

(全員そこそこのダメージだな。長期戦になりそうだ) 

 

 そう思った僕の眼に、識別の反応が現れた。岩鉄人形の右腕に、弱点マークが灯っている。

 

「右腕だ。全員、右腕に攻撃を集中するんだ」 

「わかったナァ」 

「ウガァ」 

 

 ガンっと左手の盾で、コールドベリーは岩石人形のパンチを受け止めた。

 

「わかったわ。カウンターシールド!」

 

 受け止めた岩鉄人形の右腕に、カウンターのダメージが入る。その攻撃で一番多くの多角形の板を飛ばしていた。

 

 この技は近接が使える魔法みたいなもので、秘伝書を使って覚えるものだ。街にいる師匠系のNPCに弟子入りして、クエストをクリアすると秘伝書ゲットという感じだ。

 

「えっ、クリティカル?」 

 

 コールドベリーはそう言うが、これはクリティカルではない。

 

「アクアショットナァ!」 

「ウガァ」

 

 岩鉄人形が一回攻撃する間に、僕らの攻撃が数回当たる。それはさっきとは比較にならないくらいに、多くのダメージエフェクトが出ていた。

 

「弱点なんだ。ムーン……」 

 

 魔法を使おうとしたところで、弱点マークがすっと消えた。

 

「それっ」 

 

 コールドベリーが鉄の棒で右腕を攻撃するが、さっきまでのようなダメージは出ていない。

 

 どうやら時間経過で、弱点が出たり消えたりするようだ。でもこれを利用すれば、思ったよりも早く倒せるだろう。

 

「ボボボォ!」 

「くっ」


 ガンっと短く鈍い音が響く。岩鉄人形の左手の攻撃を盾で止められず、コールドベリーは胸で受けていた。

 

「ヒールナァ」


 即座にラビィの魔法が飛ぶ。コールドベリーは盾で岩鉄人形を押し返した。

 

「我が名はコールドベリー!」

 

 若干戦闘が長くなってきたせいか、再び名乗りを上げていた。そこに今度は岩鉄人形の右胸に、淡く弱点マークが灯る。

 

「右胸だ。右胸を狙え!」 

「アクアランスナァ」 


 サクラの位置からは右胸が狙いにくい。そこで弱点を狙うだけではなく、サクラは足へも攻撃をしていた。

 

「ムーンブラスト!」 

 

 僕の魔法も景気良く多角形の板を飛ばした。弱点位置を狙えると、かなりダメージがお得になるようだ。

 

「カウンターシールド!」 

 

 何よりコールドベリーが活躍している。あの岩鉄人形の痛そうな一撃を、全て完璧に受け止めていた。

 

(これがタンクの実力だ。やっぱりタンクがいなければ、ここから先の攻略は難しいかもしれない)

 

 っと、考えたところで申し訳ない気持ちになる。これはタンクの実力ではなく、コールドベリーの実力だ。口に出したわけではないけれど、心のなかで謝った。

 

「ウガァ!」 

 

 横からのサクラの一撃! 意外にもその一撃で、岩鉄人形が多角形の板を撒き散らしながら消えていく。

 

>>>>>>>

金鉱石×1

銀鉱石×4

鉄鉱石×13

人エッセンス×6

妖エッセンス×9 を手に入れました

<<<<<<<

 

 思った以上の収穫だ。これならば素材集めも捗るだろう。

 

「やりました! しかもかなり早いですよ」 

「んっ、そうなんだ」

 

 ガシャガシャと鎧を打ち鳴らしながら、コールドベリーは小躍りして喜んでいた。ラビィやサクラはコールドベリーがいるせいか、控えめに喜んでいるようだ。

 

「二十分くらい戦うこともあるんです。ですが今回は八分くらいですか? 凄いです」


 どうやら弱点攻撃がうまくいったらしい。ベータでは使えないと言われていた識別だけど、意図して誰かが隠したのか、正式で修正されたのかはわからないが、かなり使えるスキルみたいだ。

 

「コールドベリーのおかげで助かったよ。鉱山迷宮のレベルもわかったし、一周でどれくらい素材が集まるのかも予想ができる」

「この速さなら十周付き合います! さぁ、はやくやりましょう」 

 

 脱出の魔法陣へ向かっていくコールドベリーを見ながら、十周もすれば鍛冶レベルを上げる素材が集まりそうだと、いやらしい計算をしてしまった。

 

 一周が大体15分と少しくらいでクリアできるから、ビッグバーガーも使っておこう。三十分経験値2倍なので、僕らにとってはかなりの助けになるはずだ。

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