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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
アロイ・ガライの謎を解け
26/176

26.館にいた男

 館の中に入ると、なんだか奇妙な感じがする。玄関ホールの左壁に、二階へあがる階段があり、正面と右には扉がある。

 

「とりあえず一階を探索しようか」 

「はいナァ」 

「ウガガァ」 

 

 右の扉を開けて入ると、そこは大きな部屋だった。壁には暖炉があり、その上には天秤のオブジェクトが飾られている。暖炉の正面には大きめの食器棚が二つあり、部屋の角には甲冑が飾られていた。

 

「これってどういう部屋なんだろう」 

 

 中央にテーブルと椅子があるので、食堂にも思えるけれど、この部屋から繋がる扉が見当たらない。もしも食堂だとするならば、キッチンへ続く廊下なり扉があるはずだ。

 

「しかも魔物もいない。他の部屋を見てみようかな」 

 

 僕らはその部屋を後にし、館に入って正面にあった扉に入る。小さな部屋の中心に、白い影が浮かんでいた。

 

「ゴーストだ! ムーンブラスト!」 

 

>>>>>>>

魂の欠片×1

人エッセンス×1

妖エッセンス×2 を手に入れました

<<<<<<<

 

 取り立てておかしなところはない。書斎のように重厚な机に豪華な椅子。壁には本が入っていないけれど、おそらくは本棚であったであろう棚がある。

 

 でもこの部屋は狭く、特に何もありそうにない。

 

「もう終わっちゃった」 

 

 一階はこの扉二つだけだった。つまり一階の探索は、これで終わってしまったのだ。

 

「仕方ない。二階へ行こう」 

「わかったナァ」 

「ウガァ」

 

 僕らはそのまま部屋を出た。

 

--------------------------


 二階への階段を上がると、まっすぐに廊下が続いていた。廊下の途中に扉があるが、それよりも気になることがある。

 

 廊下の突き当りに、見慣れた鎧を着た人間が立っているのだ。

 

(あれって『小鬼の村長』の鎧だよね。『小鬼の村』ファームを頑張ったプレイヤーなのかな?)

 

 僕はそんなことを考えながら、鎧を着た人間に近づいた。


「くそっ、今回も失敗だ」


 ガンっと男が扉を叩いた。


「なにしてるんですか?」

「うぉっ、め、珍しいな。館の秘密を解いたのか」


 男は僕にびっくりしたのか、少し慌てた感じになっていた。でもそれよりも、『館の秘密』という言葉が気になってしまう。


「館の秘密?」

「解いたから来られたんだろ。そうだ。お前ここの鍵を開けてくれないか?」


 普通に歩いたら来れたけれど、何やら秘密があるらしい。でも話してくれる雰囲気もないので、話の流れにのっていこう。


「この扉、鍵がかかってるんですか。でも解錠できるのは斥候の人でしょう」

「斥候でなくても、スキルが無くても挑戦はできる。以前仲間とここに来た時から、一度も成功したことがないんだ」


 男の話に疑問が浮かぶ。そんなことをしなくても、斥候の人を呼んで開けてもらえばいいだろう。


「斥候の人を呼んで、開けてもらえばいいじゃないですか」

「おいおい。そんなことをしたら秘密が広がるだろう。最近噂になりはじめているんだ。余計な連中を呼び込みたくはない」


 今のところこの館には、それほど大層な秘密があるとも思えない。でも村人の話もあるし、何かしらあるのだとは予想している。それがこの鍵の掛かった先にあるとするなら、レアハンターとして調査しなければならないだろう。

 

「そんなに難しい秘密ですか?」

「常闇の森という真っ暗なフィールドを、灯もつけずに歩かなければ、この館の姿を見ることもできない。普通なら絶対見つからないだろう。だからこそメイドシリーズが……あっと、これ以上は秘密だ」

 

 僕は夜目があるから、そもそも灯をつけていなかった。普通に来られたと思ったけれど、偶然にもそこに秘密があったらしい。

 なんか装備っぽいのも手に入るという噂もあるみたいだし、開けられるかどうか、僕も試してみよう。

 

「それじゃ、試してみます」

「おう。頼んだぜ」 

 

 僕は鍵を開けようと、扉の前に移動した。

 

『解錠難度3を開始します』 


 難度3がどれだけ難しいのかはわからない。でも斥候だったなら、もっと簡単な難度なのだろう。

 

 僕の目の前に骸骨の絵が浮かんだ。背景は真っ黒で、どこに立っているのかわからない骸骨だった。それが9つのパーツに分けられて、右下の一枚が抜き取られる。

 

 カシャカシャ……。

 

 分かたれたパーツが、縦横無尽に移動していく。それでなんとなく予想ができたけど、このパーツ、つまりパネルを移動して元の絵に戻すパズル系のミニゲームなんだ。

 

『制限時間20秒。ピッピッピッ、スタート!』 

 

 唐突にミニゲームが開始される。背景の角は全部真っ黒だったので、どこがどの角なのかわかりにくい。でも悩んでいる暇はない。それならとにかく手を動かすんだ。

 

 カシャ、カシャカシャ、カシャ。

 

 パネルを動かすたびに音が鳴る。角の黒い背景とは言え、グラデーションが無いわけではない。それを骸骨の書かれた黒部分と合わせれば、なんとかつながりが理解できる。

 

『残り10秒です』 

 

 制限時間が僕を焦らせる。でもこんな時こそ慌ててはダメなのだ。緊張して失敗するなど最悪だ。

 

 カシャカシャ、カシャ、カシャカシャカシャ……。

 

 それが意味あるのかと思われるくらい、とにかくパネルを動かしていく。そして僕はなんとなくその道筋が見えた気がした。

 

「これをこう、そしてこう、ここをこうして、こうするんだ!」 

 

 カシャカシャカシャカシャカシャ!

 

 絵が完成したと思った途端、ボカーンとパネルが爆発した。

 

『解錠に成功しました』 

 

 そんなアナウンスとともに、扉がギィっと開いた。

 

「よし。やったぞ!」 

「ナイスだ! お前やるじゃないか」

 

 正直に言えばもう一度できる自信はない。まさしくビギナーズラックというやつだろう。でも別に爆発しなくてもいいのに。

 

「よし、行くぞ。メイド装備は俺のものだ」 

 

 男が口を滑らしながら、扉の奥に入っていくので、僕らもそれに続いていった。

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