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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
アロイ・ガライの謎を解け
25/176

25.常闇の森へ

 一度村へと戻り、僕らは少し休憩してから北の森に入った。だがその途端、昼だったはずなのに真っ暗になってしまう。ゾーンの表示が『常闇の森』になっているので、情報通りここはずっと暗いのだろう。

 

「マスター、見えないナァ」 

「あ、そうだった。ラビィは僕と手を繋いで歩こう」


 明かりを準備してなくてごめんなさいの気持ちを込めて、僕からラビィの手を握る。その手はじんわりと暖かく、普段は気が付かない兎の毛が僕の手をくすぐった。

 

「ありがとナァ」

「ウガガァ」


 サクラは先頭で警戒しながら歩いてくれる。フォームAの変形で、僕らは暗い森の中を歩いた。

 

「ウガァ」 


 サクラの側に何かがチカッと見えたと思ったら、すぐに小鬼小刀が振るわれていた。

 

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魂の欠片×1

人エッセンス×1

妖エッセンス×3 を手に入れました

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 今のがゴーストらしい。名前の確認を含めて、次はしっかりと見ておこう。っと思っているあいだにも、ゴーストが数体現れた。

 

「ムーンブラスト! 名前はゴーストで間違いない」 


 消費魔法力は8必要だった。限界が10なので、そろそろ上位の魔法が欲しくなる。さっきのお店で無魔法の攻撃魔法があればよかったのだけれど、あいにくと迷宮でもお店でも見当たらなかった。

 

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魂の欠片×1

人エッセンス×2

妖エッセンス×1 を手に入れました

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 コモンは魂の欠片のようだ。

 

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人エッセンス×1

妖エッセンス×3 を手に入れました

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 っと思ったらドロップしなかったけど、今までの流れからして、魂の欠片がコモンなのは間違いなさそうだ。


「それほど強くはないみたいだ。でも警戒して進んでいこう」 

「ウガァ」 

「よろしくナァ」

 

 手どころか、僕の腰に抱きつくように歩くラビィが、可愛くてたまらなくなった。

 

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 ゴーストを倒しながら進んでいるが、館らしきものは見えない。そう言えばゴーストは幽霊だけど、卵は存在するのだろうか。

 

「死霊術師がいるでもないし、多分ドロップすると思うけれど、ちょっと怖いかも」


 ある意味で幽霊を連れて歩くわけだ。特殊能力も持っていそうで、頼りにはなりそうだけれど、ビジュアルがちょっと怖い気がする。

 

 何しろうっすらとした白い影なのだ。人型の時もあるし、なんかでっかい牛みたいな時もある。その姿はランダムなのだろうけど、どんな姿だろうと不気味さはかわらない。

 

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魂の欠片×1

人エッセンス×3

妖エッセンス×2 を手に入れました

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 ラビィのために、明かりくらいは準備するべきだった気がする。でも自分に夜目があるから、明かりのことは失念していた。

 

「ウガガァ!」

「どうしたサクラ?」

 

 サクラが森の奥の方を指差している。その方向へ視線を向けると、森の陰に家らしき建物が見えた。

 

「あれがアロイ・ガライの館? 見つかりにくいって話だったけれど、こんなに簡単に見つかって良いのかな……」 

 

 ちょっと怪しい気もするが、行かないという選択はない。

 

「ラビィ、サクラ。あそこに行くよ」 

「ウガァ」 

「たのむナァ」

 

 まだ少し距離があるので、出現するゴーストを倒しながら、僕らは家へと近づいていった。

 

--------------------------

 

 ある程度まで近づくと、真っ暗なゾーンが月明かりに照らされたくらいまで明るくなった。これくらい明かりがあれば、ラビィも問題なく戦えそうだ。

 

「やっぱり『アロイ・ガライの館』だ」 

 

 ゾーンの名前が『常闇の森』から『アロイ・ガライの館』に変わっていた。どうやら間違いなく、僕らは館を見つけたらしい。

 

「古臭い洋館の2階建てか。玄関までは土の地面が、道っぽく続いている」 

 

 僕らが玄関に近づいていくと、突然体が動かなくなる。すると玄関側の地面から、ずぶりと何かが出てきた。

 

「骨の手? 骸骨だ!」 

 

 人型の骨の魔物が三体這い上がってくると、体に自由がとりもどされた。どうやら出現するまでは、イベント扱いになっていたらしい。

 

「ウェーブかも。注意して。ムーンブラスト」 

「わかったナァ」

「ウガガァ」

 

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頭蓋骨×1

人エッセンス×3

妖エッセンス×1 を手に入れました

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 ドロップが頭蓋骨ってどうなんだろう。あまりインベントリに入れたくないけれど、基本的にコモンドロップは、進化の時にも必要になるはずだ。

 

 それを見越して、ラビィのために『うさぎのしっぽ』も手に入れている。頭蓋骨という名前が強烈だけど、深く考えずに集めておこう。

 

「アクアランスナァ」 

 

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頭蓋骨×1

人エッセンス×2

妖エッセンス×3 を手に入れました

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 ラビィはアクアショットでは一撃で倒しきれないのか、上位の魔法を使っていた。手加減して反撃を喰らいたくはないし、ナイス判断と言いたい。 

 

 残りが一体となったところで、サクラも近接に成功した。その小鬼小刀を横に振るうと、骸骨は腰から上下にバラバラになった。

 

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頭蓋骨×1

人エッセンス×4

妖エッセンス×1 を手に入れました

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 強さ的には問題はない。でもこれがウェーブなら、油断してはならない。

 

「サクラ。一度戻って。まだ出てくるかもしれない」 

「ウガガァ」

 

 サクラが玄関から離れると、再び地面から骸骨が沸いてくる。

 

「守護者なのか」


 這い上がってきた数は二体と減っているけれど、今度はボロボロの鎧を着ていた。

 

「ラビィ、左に集中だ。ムーンブラスト!」 

「アクアランスナァ」 

 

 先に着弾したムーンブラストだけでは、思った通り倒せなかった。でもアクアランスの追撃で、骸骨はバラバラになって消えた。

 でもドロップがない。つまりは卵も出ない、いわゆるイベント専用の魔物ってことみたいだ。

 

「何かはドロップしなさいよ。ムーンボム!」  

「ウガガァ」 

 

 僕のムーンボムでダメージを受けたところを、サクラの小鬼小刀で一刀両断にした。まさしく言葉通りに、頭から股間までバラバラにしていた。

 

 今度は離れてという前に、サクラが僕らの方へ走ってくる。

 

「このパターンが続くなら、次は武器を持った骸骨が一体ってところかな……」 

 

 再び体が動かなくなると、今度は空から白い塊が降ってきた。

 

「あれは、骨だけどどこの部位だ?」 

 

 細長い白い骨。体の一部のようだけれど、その部分だけで、さっきまでの骸骨とはサイズが違うのがわかる。

 

「うわっ」 

 

 カシーン、カシャン、カシャシャシャシャ……。

 

 その骨に集まるように、森から骨が飛んでくる。それはどんどんと組み上がり、見上げるほどの大きさになった。

 

 カッシャーン。

 

 最後に頭蓋骨が落ちてきた。いつの間にか武器を持った三メートルくらいの骸骨が、僕らを見下ろしていた。

 

「巨大骸骨? そのまんまの名前だね! ムーンブラスト!」 

 

 動けるのを確認した瞬間、僕は魔法で先制する。

 

「アクアランスナァ!」 

「ウガガァ」 

 

 サクラは近づき、ラビィはいつもどおりの戦闘だ。バシンバシンと多角形の板が飛んでいるから、いい感じのダメージになっているはずだ。

 

 巨大骸骨は顎を落として口を開くと、走り込むサクラへ向けて剣を振り下ろす。

 

 ズドン!

 

 そんな音を響かせながら、大きな剣が地面に突き刺さる。サクラは横へと移動しており、その攻撃を受けることはなかった。

 

「あの威力なら一撃でやられるかも。ムーンボム!」 

 

 リキャストタイムがあるので、魔法を切り替えて使っていく。とは言え僕の攻撃魔法は、まだ二種類しかない。

 

「アクアショットナァ」 

 

 ランクの高いアクアランスは、リキャストも少し長めだ。連続攻撃のために、ラビィもアクアショットを使っていた。

 

 ランク以下無効のスキルはないようなので、気持ちよく多角形の板が飛ぶ。

 

 その間に接近したサクラが攻撃する。ガイーンと骨と小鬼小刀が激しくぶつかりあった。ダメージを与えているようだけれど、いつものように景気良く真っ二つにはできないようだ。

 

 巨大骸骨は表情を変えないまま、近づいたサクラに蹴りを出す。攻撃した瞬間を狙われたので、これを避けることはできなかった。

 

「サクラ!」

「ヒールナァ」 

 

 蹴りの一撃でサクラが地面を転がっていく。蹴りであの威力ならば、あの大きな剣の一撃は、やっぱりかなりやばそうだ。

 

「ムーンブラスト!」


 だけどダメージは通っているようなので、このまま攻撃し続ければ、問題なく倒せるはずだ。もしサクラが鎧を着ていなければ、あの蹴りでもやばかったかもしれない。でも運は僕らに向いている。

 

 しっかり準備してきたことが、功を奏しているのだ。

 

「アクアショットナァ」 

「ウガガァ」


 戦列に復帰したサクラは巨大骸骨を牽制するように動きながら、積極的には攻撃していない。巨大骸骨は表情を変えないが、なんとなく鬱陶しそうにしている気がした。

 

「サクラ。その調子で撹乱してくれ」

「ウガァ」 

「アクアランスナァ」 

 

 ラビィの魔法が巨大骸骨にダメージを与えると、両膝に弱点のマークが灯った。

 

「膝を破壊するのか。みんな、膝を狙うんだ」 

「まかせるナァ」 

「ウガガァ」 

 

 サクラが軽く膝を攻撃した。全力で振れば反撃を受ける可能性があるので、しっかりと防御を気にしながら戦っている。そこへラビィが不用意に近づいた。

 

「ダメだラビィ! 剣が来るぞ」 


 フラフラっと近づいたラビィへ、巨大骸骨は剣を振り下ろした。逃げる様子もないラビィの頭上へ、無情に剣が落ちてくる。

 

「ラビィ!」

「突進ナァ!」 

 

 ラビィは一瞬で姿を消した。そして左膝への一撃。

 

「アクアショットナァ!」 

 

 いつか見たあの連続攻撃。巨大骸骨の膝から多角形の板がはじけ飛び、ぐらりと巨大骸骨は倒れ込んでくる。

 

「離脱ナァ」 


 その瞬間、弱点が膝から頭へと切り替わる。倒れ込んだ巨大骸骨の弱点は、頭に変更されたのだ。だけどこの状況は危険だ。剣を持つ右手が無事な以上、正面から近づくのは得策ではない。

 

「サクラは後ろへ回り込んで頭に攻撃だ。ラビィと僕は遠距離で魔法を打ち込むぞ」 

「任せるナァ。アクアランスナァ!」 

「ウッガァ」 

 

 サクラが剣の範囲に入らないように気をつけながら、後ろへと回り込む。

 

「ムーンボム! ムーンブラストぉ!」 

 

 連続の魔法攻撃。この戦闘の主導権は、すでに僕らが握っている。

 

「突進! アクアショットナァ」 

 

 ラビィ得意の連続攻撃で、巨大骸骨がうなり始めた。巨大骸骨が何かやりそうな予感に、僕の背筋は寒くなる。

 

「ウガァ!」 

 

 でもそれを安心させてくれたのはサクラだった。背後からの頭蓋骨への一撃は、パカっと骨を切り開いた。空洞の頭の中が丸見えになる。

 

「カカカカカ」 

 

 骨が痙攣しているのか、それが断末魔なのか、巨大骸骨は多角形の板を撒き散らしながら消えていった。

 

 レベルは上昇したが、ドロップがない状況に、なんだか少し寂しさを感じてしまう。

 

「マスター、やったナァ!」 

「ウガガァ」 

 

 ラビィとサクラが僕の手をそれぞれ掴む。輪になって回るいつものダンスだ。それを踊っている内に、ドロップがないなんて小さなことだと思えてきた。

 

 でもひとしきり踊って落ち着くと、やっぱりドロップが欲しいと思ってしまった。

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