表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
アロイ・ガライの謎を解け
24/176

24.新たなレシピ

 結局僕は南の森を選んだ。『常闇の森』の館の方は探すのが難しいけれど、『鬼の村』は存在が確認されているからだ。


 南の森はまるで整備されているようで、歩きやすく日も照っていた。木々の間から森狼が姿を見せるけれど、僕らの魔法の一撃であっさりと倒すことができる。


「森狼もそれほど強くないみたいだ。僕らが適正レベルを越えているというのもあるのかな」


 ドロップ品も森狼の牙、森狼の皮、獣エッセンスとある意味予想通りだった。時折集団で襲ってくるので、そこに気をつけさえすれば、無傷で倒せる感じだった。

 

「おっ、あれが鬼の村かな」 


 遠くに門のような柵があり、二人の鬼が立っている。遠くから見える感じでも、小鬼よりも間違いなく背が高い。

 

「我が友。鬼の村へようこそ」 

「あ、こんにちは」

「こんにちはナァ」

「ウガウガウ」


 二人に近づいていくと、にこやかに挨拶された。どうやら小鬼の村で得た友好度のようなものは、この村でも通用するようだ。

 

「小鬼の村での話は聞いている。ここでも仲良くして欲しい」 

「ありがとう」


 入り口の鬼はある意味で、村の名前を教えてくれるだけの存在だと言える。


 

「ラビィ、サクラ。行くよ」 

「はいナァ」

「ウガァ」


 僕らは鬼の村の門をくぐった。

 

 小鬼の村に比べると、建物が大きめになっている。でもそれ以外で、特に変わった様子はない。僕は一番目立つ建物へ向けて歩いた。

 

「やっぱりだ」 

 

 鬼の種族は似たような感性なのか、大きめの建物に扉はなく、壁一面が解放されて中が見える。そこに椅子に座った『鬼の村長』がいた。

 

「我が友。ようこそ。小鬼たちが世話になった」


 『鬼の村長』は、立派な革鎧を着ていた。おそらくは小鬼が金属系で、鬼は革系の装備が手に入るのだろう。

 

「いえ。こちらこそ」

「村ではゆっくりとするが良い。石貨を持っているなら、買い物もできるぞ」


 買い物という言葉に、ちょっとどきりとする。鬼のお店で売っているというイメージから、なんかグロテスクな食料を考えてしまった。

 

「買い物できるのですか?」

「そうだ。『邪妖精の迷宮』で見つかった小鬼が使わない魔導書や、鬼の村に伝わるレシピなど、役に立つものがあるだろう。だが石貨を稼ぐのは大変だ。よく考えて買うのだ」


 事前の情報通りだ。まだ手に入れていな魔導書も、石貨で手に入れることができそうだ。

 

「ありがとうございます」


 僕らは村長の家をでると、村の中を散策する。するとお店っぽい感じの家があったので、そこの鬼に話しかけてみた。

 

「すいません。何か売っていますか?」 

「我が友。うちは品揃え豊富だよう」


 パッとメニューが開いた。石貨で買えるアイテムが並んでいる。しかしこのお店の鬼はエプロンを装備しているし、人っぽさがあるようだ。鬼と一言に言っても、いろいろなタイプが存在するのかもしれない。

 

「お、魔力も売ってるんだ」 


 1000石貨で『無魔法:魔力』も売っている。他にも魔法は売っているが、魔法は結構手に入れているし、僕らが使えそうな魔法もないので、それに石貨を費やすのはもったいない気がした。

 

「あ、レシピだ!」 

「ナァ?」

 

 僕の叫びにラビィがちょっと首を傾げていた。でもこれを見たら、叫びたくなるのも仕方がない。そこには『鍛冶レシピ:刀2』が売っていたのだ。

 

「鬼シリーズの装備のレシピもある。でも鍛冶だから、金属系になるのか……」


 サクラは固有技能の中に、金属防具不可を持っている。仮に鬼シリーズを揃えても、装備させたい仲間がいない。


 鬼シリーズで4000石貨、刀レシピで1000石貨。迷宮で多少は拾っているので、まだまだ余裕はあるけれど、どうするべきか悩んでしまう。刀レシピを買うのは確定としても、鬼シリーズはどうしよう。


「言い忘れていたけれど、お店の商品の入れ替わりは激しいよ。人気の店だからねぇ」


 お店の人がそんなことを言ってくる。これを言われたら、買わないという選択肢はなくなった。

 

 僕はメニューを操作して、『鍛冶レシピ:刀2』と鬼シリーズを買った。

 

「買っちゃった。でもきっとプラスになるはずさ」 

「マスターおめでとナァ」 

「ガァ」


 サクラが僕のTシャツを引っ張りながら、すっと大きな目で見つめてくる。言いたいことはわかっていた。きっと新しいレシピで、刀を作ってくれってことだろう。

 

 でも素材となる鉱石は、遥か西の『鉱山迷宮』で手に入るアイテムだ。現状レシピは手に入れたけど、すぐに作成できるわけでもない。まあ『小鬼の村』に戻れば、石貨で解決できるかもしれないけれど、いつまでもそうしているわけにもいかないだろう。

 

 『鍛冶レシピ:刀2』を使おうとしたら、レベルが足りないと表示された。よく見ると鍛冶レベル6が必要となっている。鬼シリーズもよく見てみると、全部鍛冶レベル6が必要だった。

 

「ごめんサクラ。しばらく待ってくれ。必ず素晴らしい刀を作るから」 

「ウガァ」


 サクラはコクリと頷いた。戦力を増強する種は手に入れたけれど、それが花咲くのはまだ先になるだろう。慌てて奥の自分の適性を越えたゾーンへ向かうより、一歩一歩を確実に歩くのだ。

 

「なによりレアドロップは諦めない限り、待っていてくれるから」


 僕らが北へ向かおうとマントを翻した時、お店の人が思わぬことを言ってきた。

 

「我が友。石貨を稼ぐなら、村人のお願いを聞いてあげてね。お礼に石貨をくれるはずだよ」

「ありがとう。できる限りそうするね」


 石貨は残りが1000ちょっとしかないけれど、なくなったわけでもない。村のお願いは後にして、先に『常闇の森』を攻略しよう。


 僕らはあらためて、北へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ