表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
素敵なマントを手に入れたい
22/176

22.芋虫の王

 芋虫を討伐しながら北へ進むと、マップの表示が『北の森』から『芋虫の森』に変化した。ちょうどそこは森が開け、ちょっとした広場くらいに何もない。僕はなんとなくピンときて、広場の真ん中あたりへ移動する。

 

「ここだ。僕のカンがここだと告げている」 

 

 軽く地面が揺れた。それが合図になって、広場を取り囲む木々の間から、芋虫が三体姿を見せる。

 

「アクアショットナァ!」

「ムーンブラスト!」


 僕のムーンブラストは、消費を7まであげたものだ。三方向からやってくる芋虫の一体を、その魔法で多角形の板に変えた。

 

 でもラビィは一撃では倒せない。距離がある間に、もう一度魔法を使う。

 

「アクアショットナァ!」 

 

 その一撃で芋虫は多角形の板になって消えていく。だがサクラに向かっている一体は、まだ無傷のままだった。そして芋虫はいい感じの距離をとったまま、サクラに糸を吐いた。

 

「ウグゥ」 

 

 ダメージは無くても、攻撃もできない。サクラが最後の一体を相手にしている間に、僕らは魔法で攻撃する。

 

「アクアショットナァ!」

「ムーンブラスト!」


 僕とラビィの、いや、サクラを含めた連携で、三体の芋虫はあっさりと多角形の板になる。

 

「油断しないで。おそらくこれはウェーブだ!」 

 

 魔物を倒したのに、ふざけたことにアイテムのドロップがない。これは多分イベント戦闘で、最初からドロップがないのだろう。

 

 つまりはこうやって連続で芋虫が襲ってくるのだと、数々のゲームを遊んできた僕にはピンときたのだ。

 

 その考えを証明してくれるかのように、今度は四体の芋虫が森から現れた。


「アクアショットナァ!」 

   

 三人では受け止めきれない数に僕は不安を感じる。でもやることは変わらない。

 

「ムーンブラストぉ!」

   

 これで残りは三体。僕が余計なことを考えて遅れたせいか、すでにサクラに糸が絡みついていた。

 

「お、むしろチャンスだ! ムーンボム!」

 

 芋虫の二体は糸を吐いたことで動きを止めた。しかも同時に四体出現だったので、芋虫と芋虫の間隔が詰まっていた。だからちょうどよく、範囲魔法で吹っ飛ばせる。

 

「アクアショットナァ!」 

 

 ラビィに向かった一体も、これで倒すことができた。でも次に五体来たら、こんなにうまくできるだろうか。

 

「心配してもしょうがない。気合で行くよ!」 

「わかったナァ」

「ウガァ」


 と気合を入れた途端、僕の背中にドンッと何かが当たった。

 

「げぇ、後ろから?」 


 今まで前から発生していたウェーブなのに、今度は後ろから芋虫が来ていた。

 

「ムーンブラストォ」 


 後手に回ってしまった。しかも五体ではなく、僕らそれぞれに二体向かってきている。

 ムーンブラストのリキャストタイムは三秒。三秒もあれば間違いなく接近される。

 

「ムーンボム! こっちのリキャストタイムは十秒だけど、別の魔法なら問題ないさ」

 

 僕に向かってきた二体はこれで倒せた。その間にサクラは二体から糸を受けている。

 

「それがある意味、芋虫の戦略ミスだ」 

 

 僕はサクラに糸を吐いている芋虫へ突撃する。

 

「そーれ!」 

 

 糸を吐いて動けない芋虫の体へと、思い切りバスタードソードを振り下ろした。

 

「アクアランスナァ!」


 僕が攻撃した芋虫と、ラビィが魔法を放った芋虫が、多角形の板になって消える。いつの間にか一体を倒していたようで、ラビィに向かった芋虫も全滅だ。後は目の前の一体だけだ。

 

「って」


 目の前の一体が吐いていた糸を切り、僕へ頭突きをしてきた。その攻撃で僕は一メートルくらい飛ばされる。

 

「いったいよ! かぁ、久しぶりに痛い。けどまだまだだ!」


 リキャストタイムはとっくに過ぎている。


「ムーンブラスト!」

「アクアショットナァ!」


 僕の魔法に合わせて、ラビィが援護してきた。同時に魔法を受けた芋虫は、スッと気持ちよく消えていく。

 

「ヒールナァ!」 


 僕の体から痛みが消えていく。まだ芋虫キングとやらは出現していないのに、結構魔法を使ってしまった。僕は魔力の雫があるから、回復も早いけれど、ラビィは自然回復系のスキルを持っていない。

 

 上位のアクアランスも使っているし、大丈夫だろうか。

 

「ってステータスを見れば良いんだよね」


 後衛系で育っているので、まだ余裕だった。ちょっと僕が心配し過ぎかもしれない。

 

「ん、また少し揺れてる」 

 

 ウェーブが来ないなと思っていると、再び軽く揺れだした。体が動かないので、なんらかのイベントに入っているはずだ。

 

「でっかい……」 

 

 木をバキバキッと折って登場したのは、高さ三メートルくらいはありそうな芋虫だった。他の芋虫はヘルメットみたいな外殻だけど、こいつは頭にわかりやすく王冠を載せていて、情報通りに緑色のマントをなびかせている。

 

「歯ごたえありそう……。どうせならあの王冠をドロップしないかな」


 マントは事前情報もあるから、きっとドロップするだろう。でも決まっているわけでもないので、僕は気を引き締めた。


「我が領域への侵入者は、全て抹殺だ!」

 

 どこから声を出しているのかわからないが、流暢に喋っていた。そしてそれと同時に、戦闘が始まった。

 

「ムーンブラスト!」 

「アクアランス!」


 ラビィがいきなり上位の魔法を使っていた。僕は思わなかったけれど、そこまでやばい相手なのかもしれない。

 

「むっ、そういうことか……」 


 ラビィのアクアランスはダメージを与えたが、僕の魔法は無効だった。どうやら公式にも載っていた一定のランク以下の魔法を無効にするスキルらしい。

 

「やっかいだ。だとすると僕の場合はムーンボムしか通用しないのかも」

「ボハッ」


 芋虫キングが糸を吐いた。それはサクラへ飛んでいくが、なんとそれを横にジャンプしてよけた。

 

「あの糸よけられるの? あ、技が違う!」 


 今までの芋虫は糸を吐いて絡めるようにしていた。でもさっきの糸は丸く弾のようにして吐き出している。つまりは糸の弾丸だ。だから避けられるようになっているのかもしれない。

 

「受ける所を考えたくもないね」 

「アクアランス!」

「ウガァ!」


 とか考えている間に、ラビィもサクラも攻撃している。さっきから考えているだけで、僕が一番怠けていた。


 でもさすがにサクラの一撃はすごい。大量の多角形の板が、芋虫キングから飛び散っていた。

 

「んっ、識別に反応ありだ!」 

 

 攻撃に動きを止めた芋虫キングの頭がぼんやりと赤く光っている。しかも芋虫キングはちからなく、ズシンと地面に体を横たえた。

 

「頭が弱点。識別はそんなことまで見抜くんだ。ムーンボム! みんな、頭を狙うんだ!」

「アクアランス!」

「ウガウガウガァ」

 

 芋虫キングが倒れている間がチャンスなんだ。そう予想した僕は、最大威力の攻撃を打ち込んでいく。でもとどめを刺しきれず、再び芋虫キングは体を起こした。

 

「弱点が消えた。これがパターンだ! みんな、全力攻撃だ!」

「わかったナァ。アクアランス!」 

「ウガ、ガァ!」 

 

 弱点を見抜けて僕は調子に乗っていた。僕の指示で真っ先に飛び込んだサクラに、糸の弾丸が直撃してしまう。その勢いに飛ばされながら、サクラが地面に倒れ込んだ。

 

 ぐいっと芋虫キングがサクラを睨んでいるように思えた。今のサクラを狙わせる訳にはいかない。

 

「こっちだイモキン! ムーンボム!」

「ヒールナァ」 

 

 幸いサクラはその一撃で倒されたわけではない。ラビィのヒールでムクリと起き上がった。

 

「ウガァァァア!」 

 

 サクラの怒りの咆哮! でもスキルではないので、特殊効果は何もない。いや、特殊効果はあった。僕の心がサクラを攻撃された怒りで熱くなる。

 

「バホッ」 

 

 注意を引いた僕に向けて、イモキンが糸の弾丸を吐き出した。


 レベル差のおかげか、怒りのおかげなのか、僕に飛んでくる弾丸を完全に見きっていた。ついっと躱した勢いで飛び込み、イモキンの胴体に一撃を入れる。

 

「えいや!」


 サクラの攻撃ほどではないが、イモキンの体から勢い良く多角形の板が飛び散った。

 

「アクアランスナァ!」 

「ウガァ!」

 

 戦列に復帰したサクラの一撃。ラビィの魔法で再びイモキンは大地に倒れ込む。

 

「これで決めるぞ! ムーンボム!」 

「突進ナァ!」 

「ウガガガガガァ!」

 

 そしてイモキンは多角形の板になり、すぅっと姿を消していった。

 

>>>>>>>

イモキンマント×1

魔糸×56

虫エッセンス×27 を手に入れました

<<<<<<< 

 

「よっしゃあ!」 

「おめでとナァ!」 

「ウッガガァ!」

 

 僕らは三人で輪になって、くるくると踊りだす。こんな時は陽気な音楽が欲しいところだけど、それが小さなことに思えるくらいに嬉しかった。

 

「いひひっ、これはきっとレア装備だ」 

 

 思わず変な笑いが漏れた。芋虫キングのマントではなく、イモキンマントって名前にワクワクする。デザインは緑の単色だけど、真ん中に芋虫を可愛らしくしたイラストが入っていた。

 

 まさしく小鬼のTシャツと同じ系統だろう。

 

 召喚師と言えばマントだと思っているので、マント自体は嬉しいのだが、なぜか可愛い系の装備が集まっている気がした。

 

 でももっと大事なのは性能だろう。僕はその詳細を確認する。

 

 防御力は1で無いようなものだけれど、特殊効果に『ドロップ率上昇小』がついていた。


「うおぉぉぉぉぉ!」

「マスター、どうしたナァ?」

 

 叫ばずにはいられなかった。レアハンターの僕には、願ってもない性能だ。

 

「ドロップ率上昇だよ。卵のドロップも増えるかも!」 

「それはいいナァ。楽しみが増えるナァ」 

「ガッガガァ」

 

 相変わらずサクラは何を言っているかわからないけど、喜んでいることだけはわかる。僕は早速マントを装備した。

 

 バスタードソードが背負えなくなるけど、特に問題はない。使わないときには、しまっておけばいいだけだ。

 

「イモキンファームをします!」 

「わかったナァ」 

「ウッガガァ」


 他にもイモキンシリーズがあるかもしれないし、ここはファームするしかない。まだ見ぬドロップを妄想しながら、僕はワクワクが止まらなかった。

ここまでのステータス


==================

名前:ラル

職業:召喚師10

魔法力:106+5


物攻:55+21

物防:49+8

魔攻:85

魔防:56


体力:41

筋力:44+2

魔力:71

敏捷:46

反応:49

幸運:15

技能:剣7

  :魔力制御8

  :魔力の雫8

  :魔物言語4

  :識別7

  :運動3

  :夜目8

  :鍛冶5

  :付与1

魔技:無魔法8

  :R1.ムーンブラスト

  :R2.ムーンシールド

  :R3.ムーンボム

  :R4.魔力、シャープネス

  :R5.キーン、ストレングス

固有:召喚

称号:クレアの注目

装備:バスタードソード 攻21

  :小鬼のTシャツ  防6

  :茶色いズボン   防1

  :鬼の指輪     筋力+2

  :イモキンマント  防1

SP:83


==================


==================

名前:ラビィ

職業:ラビットチャイルド10

魔法力:103+10


物攻:54

物防:49+10

魔攻:82

魔防:55


体力:41

筋力:45

魔力:66+3

敏捷:59+2

反応:62+2

幸運:15

魔技:水魔法8

  :R1.アクアショット

  :R2.アクアボディ

  :R5.アクアランス

  :癒魔法5

  :R1.ヒール

  :R2.キュアポイズン

  :R4.ヒールサークル

装備:妖精の帽子   防3、魔力+2

  :妖精のブラウス 防3、敏捷+2

  :妖精のスカート 防2、反応+2

  :妖精の手袋   防2、魔力+1

  :セット効果   魔法力+10%

固有:突進

==================


==================

名前:サクラ

職業:小鬼7

魔法力:43


物攻:63+71

物防:70+18

魔攻:34

魔防:44


体力:59

筋力:53

魔力:29

敏捷:40

反応:42

幸運:10

技能:刀4

装備:キーン小鬼小刀 攻71

  :革の兜     防5

  :革の鎧     防7

  :革のすね当て  防4

  :革の手袋    防2

固有:暗視

  :金属防具不可

==================


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ