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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
素敵なマントを手に入れたい
21/176

21.森の中のリス

 ログインすると、ちょうど朝になっていた。昨日は見かけなかった村人が、歩いているのが確認できる。

 

「おはようナァ」

「ウガァ」

「ラビィ、サクラ。おはよう」


 僕がログアウトしている間、ラビィやサクラは何をしているんだろうと言う考えがよぎったが、間違いなく送還状態になっているだけだろう。

 

 勝手に行動とかしていたら、それはそれで困りものだ。

 

「まずは情報収集だ。あそこにいる男の人に声をかけてみよう」

「わかったナァ」


 僕は男の人へと近づいた。

 

「すいません」

「ん、なんだい?」


 男の人が振り向くと、優しそうな感じのおじさんだった。

 

「この村や周囲の森の話とかを聞かせてくれますか?」

「物好きだな。この村の特産は魔糸だ。それを街に売って生活している。本来なら魔物を俺みたいな村人が倒せるはずないんだが、この村の南の森には、すごく弱い芋虫が生息してるんだ」


 南の森に弱い芋虫、この村の特産は魔糸。裁縫スキルで服を作成する時に使う素材だった気がする。

 

「だからお前ら冒険者は、絶対に南に行くなよ。行くなら北の強い芋虫がいる森へ行ってくれ」 

「あ、北にも芋虫がいるのですね」

「もちろんだ。このあたりは芋虫の森みたいなものだからな。だからこそ南の森は特殊なんだろう。何度も言うが南に行っても冒険者に旨味はないし、行くなら北にしてくれよ」


 ここまで行くなと言われると、行きたくなる衝動に駆られるが、このゲームには間違いなく友好度があるだろう。村の暮らしのために南の森があるならば、あえて敵対してまで行く必要もなさそうだ。

 

「情報ありがとうございます。北へ行ってみます」 

「おお、そうしてくれ」


 その後、村の中を歩いている他の人にも話を聞いたけれど、めぼしい話はなかった。なので様子見を兼ねて、僕らは北の森へと向かった。


--------------------------


 森の中は明るく、草も元気にぼうぼうになっている。でも大きく成長しない品種なのか、足首までが埋まるくらいの長さだった。木もまばらにある感じなので、武器を振るうのも難しくなさそうだ。

 

「ピクニックでもできそうな森だね」 

「そうだナァ」

「ウガッ」


 のんびりした中で、サクラが緊張した声をだした。パッとサクラを見ると、左手に白い何かがまとわりついている。

 

「糸? あそこだ!」 


 糸の繋がった先を見ると、大きな芋虫が木の陰にいた。

 

「アクアショットナァ!」 

「ムーンブラスト!」

 

 二つの魔法が直撃するが、ゾーンが変わって魔物が強くなっているのか、それだけでは倒せなかった。


「ウガガァ」


 左手に絡んだ糸を、グイグイとサクラが引っ張っている。芋虫もそのせいで、他の行動が取れないようだ。

 

「アクアショットナァ!」 


 再びラビィの魔法が命中すると、芋虫は多角形の板になって消えた。


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芋虫の外殻×1

魔糸×4

虫エッセンス×2 を手に入れました

<<<<<<< 


 芋虫という名前だけあって、虫エッセンスをドロップするようだ。そう言えば以前に闇バッタが虫エッセンスをドロップしたけれど、虫系の魔物はやはり似たようなエッセンスになるのだろう。

 

「布系装備のレシピもあるし、魔糸集めをしておこう」 

「わかったナァ」

「ウッガガァ」


 僕らは不意打ちに注意しながら、森の中を進んでいく。

  

--------------------------

 

 あれから何度か戦闘してわかったことは、糸の攻撃は拘束系でダメージにはならないということと、戦闘が終われば糸は消えるということだ。だからずっと糸でベタベタということもない。

 

 むしろ糸でベタベタを再現しつづけるようなら、リアル系の方向性が間違っていると、要望メールを送っていたところだ。

 

「コモンは『芋虫の外殻』と『魔糸』だね。他にはドロップしないけれど、アンコモンすらない魔物なのかな」 

 

>>>>>>>

芋虫の外殻×1

魔糸×3

虫エッセンス×4 を手に入れました

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 芋虫が頭に被ってるようにみえるあれが、いわゆる『芋虫の外殻』なんだろう。リポップ率も高いから、ガンガン倒しているけれど、僕とラビィの経験値バーはそれほど動いていない。でもサクラが7レベルになり、その経験値の取得具合を考えると、大体この森の限界は8レベルくらいだと予想する。

 

>>>>>>>

魔糸×5

虫エッセンス×3 を手に入れました

<<<<<<< 

 

 最終的には裁縫を覚えたいというのはある。やはりサクラの着物は、僕が作ってあげたいからだ。でも今はスキルの空きが一つしかない。鍛冶の時みたいに、すぐに着物が作れるわけでもないだろうし、しばらくは様子見だ。


「ウガァ!」


>>>>>>>

芋虫の外殻×1

魔糸×2

虫エッセンス×5 を手に入れました

<<<<<<< 

 

「アクアショットナァ!」


>>>>>>>

魔糸×1

虫エッセンス×2 を手に入れました

<<<<<<< 


 順調に芋虫を倒せている。この森ではフォームAの戦闘がいい感じだ。

 

「あー、意外と奥まで来ちゃったな」 


 芋虫討伐に夢中になって、いつの間にか大分森の奥にまで来ているようだ。さっきまで明るい雰囲気だった森が、鬱蒼としはじめている。

 

「誰かいるナァ」

「えっ?」


 ラビィが突然走り出す。

 

「待ってラビィ。落ち着いて」


 僕も慌てて後を追う。木々の間を走り抜けると、ラビィが座っているのが見えた。その傍らには、大きなリスが倒れている。

 

「リス? でいいのかな……」 

「怪我してるナァ。ヒールナァ!」


 僕が指示するまでもなく、ラビィがリスに魔法をかけた。

 

「う、うぅ。あいつが来る! うわぁ、あいつが、魔王が来るぅ!」 

「落ち着くナァ! もう大丈夫ナァ」


 リスの言葉が理解できる。おそらく魔物言語だと思うけれど、その確証は得られない。でもそれよりも魔王だ。『小鬼の村長』の情報は正しかったのかもしれない。

 

「だ、だれ? 僕は助かったのか」 

「大丈夫ナァ。安心して何があったか話すナァ」


 なんだか僕が口を挟む隙がなく、ラビィが会話を主導する。


「ぼくらの村はもう終わりだ。もうみんな逃げ出した。僕が逃げられたのは奇跡かもしれない。悪夢のような魔王、芋虫キングが目覚めたんだ」

「芋虫キングナァ?」

「もうずっと前に倒されたはずなのに、突然村を襲ったんだ。あの芋虫の大群。仲間が糸で捕まって……。と、とにかく僕は逃げる。君たちもこれ以上北に行ってはいけない。ここより北は、もう芋虫キングの領域なんだ」 

「わかった。お前も無事でな」 

「助けてくれてありがとう。いつかどこかで出会えたら、そのときは必ずお礼をするよ」


 大きなリスのような魔物は、南の方へと走り去っていった。僕はそれを見送ると、ラビィとサクラに向き直る。

 

「どうするナァ?」 

「決まっている。このまま北へ直進だ!」

 

 こんなおいしい情報を、放って置けるはずがない。ましてや魔物言語がなければ聞けないはずの情報だ。レアハンターの血が騒ぐ。

 

「わかったナァ」 

「ウッガァ」


 僕らはフォームAで、そのまま北へと直進した。

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