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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
素敵なマントを手に入れたい
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20.新たな街へと向かう途中

 あれから四日かかったけれど、妖精装備のコンプリートには成功した。

 

 ラビィは全身が空色で雲が舞っているような、明るい感じになっていた。それぞれのパーツもなかなかいい性能だけれど、セット効果が素晴らしい。

 

 最大魔法力+10%と言う、まさしく魔法使いにふさわしい装備だった。

 

 突進で近接するパターンもあるけれど、ラビィは基本的には後衛がいい気がする。なにより前衛に立って攻撃を受け止めるイメージが沸いてこない。


 サクラの方は金属系装備ができないので、革装備で固めてみた。いつかちゃんとした着物を手に入れて、公式のページに載っているような装備をさせてあげたい。


 兜と鎧、手甲に足甲で24000ウェドかかったけれど、前にお金を貯める期間を作っていたので、なんとか支払うことができた。見た目も傭兵風になって、頼りがいがありそうだ。

 

 ただ僕もマントを手に入れたかったけれど、今回は見送った。サクラを優先したいとういのもあるけれど、ピンとくるマントがなかったのだ。それに『小鬼の村長』の情報もある。今ここで買わなくてもいいだろう。

  

 とは言えこれから新しいゾーンへ向かうのだから、準備はしっかりとしておきたいところだ。でもマントがなくてもいまさら影響はない。

 

 そんなことを思いながら、僕は少しだけ溜めておいたクエスト報告を兼ねて、冒険者ギルドへと来ていた。するとマリーが、突然予想外の話をしはじめる。

 

「ラルさん。ランキングができたのをご存知ですか?」

「ランキング? いや、知らないよ」

「依頼板の隣に、ランキングボードが新設されたんです。冒険者ギルドに所属するそれぞれの職業の人の、最先端がわかりますよ」

 

 普段なら他の人の事は、それほど気になったりはしない。でも僕が最初のゾーンで卵探しをしていた間に、最先端はどこまで進んでいるのか興味が湧いてきた。

 

「ありがとう。見てみるね」 

「はい」 

 

 僕がランキングボードへ近づくと、さっとメニューが開く。やはりアナログで確認させるような事はしないらしい。メニューはそれぞれの職業で分類され、レベルごとのランキングになっていて、いわゆるベストテンが表示されている。

 

「剣士の第一位は37レベルなのか。僕と30レベル位差があるね」 

 

 ただ名前はUNKNOWNだった。三位の人だけ『メーヴェリン』と名前が出ているけれど、第10位まではその人以外は名前を明かしていない。特に戦士のランキングはひどかった。

 

「全員がUNKNOWNなのか。戦士は要だから誘われるのがうざいとかあるのかな。でも1位は全職業の中でも一番高い39レベルだ」

 

 斥候のランキングも名前がほとんどない。でも5位にいる『赤忍者』って名前の人は、きっとござる言葉で話すのだろう。

 

「どのゲームにも必ず一人はいる感じの忍者のロールプレイヤー。イメージでは男の人が多くて、確実にござるだよね」 

 

 こうやって見ると、職業に性格が出ている気もしてくる。なにより魔法使いのランキングでは、名前を隠している方が少なかった。

 

「1位の名前が『爆炎魔法少女ボム子』って、フルダイブ型でそんな名前つけちゃうんだって感じだよね。でも一緒にプレイしたら楽しそうだ」 

 

 こういう名前の人は、少なからず一定以上は存在するだろう。合う合わないがありそうだけれど、ハマれば楽しい気がしてくる。なにより名前だけでも、すごく楽しんでいる感じがした。

 

「4位の人はマーミンか。これもそれっぽい魔法使いから名前を取っている気がするよね」 


 マーミンが36レベルでボム子のレベルは38だ。現在のレベルキャップが45だから、かなり先端を走っているといえるだろう。

 

「そして最後は召喚師ランキングだ。なんだかドキドキする」 

 

 あいにくこのランキングも名前を秘密にしている人が多かった。でも1位の人は名前が出ている。しかもレベルが33だ。

 

「ゲルマドフ? なんとなく悪役か、怪しいけどいい人みたいな名前だね」 

 

 しかし召喚師で33レベルはかなり高い。おそらくは召喚獣を使用せずに、自分のレベルだけあげたのだろう。そして高レベルのゾーンで召喚獣を使い、いわゆるパワーレベリング状態で強化する作戦ではないだろうか。

 

「その場合はスキルが追いつかないし、なにより一緒に頑張っている感がない。僕の理想ではないけれど、そういう方法もありだよね」

 

 他の召喚師は軒並み20レベル台だけど、少なくとも召喚師がいないと言うことはなさそうだ。

 

「興味深いランキングだったね」


 僕はマリーの受付へと戻った。

 

 次の街へ移動することを話すと、マリーが悲しそうな顔になる。

 

「そうですか。寂しくなりますね」

「あ、でも。たまに顔をだすよ」


 僕の言葉に、マリーは左右に首を振る。

 

「無理なさらないで。そんなことをしなくても、きっとまた会えます」


 じっと見つめてくる視線から、なんだか眼を離せなくなる。マリーの瞳の奥が、ウルウルとして見える気がした。クエストの報告は、どこのギルドでもできるはずだ。僕は次の街でクエストを受けても、報告はここに来ようと心に決めた。

 

「わかった。絶対にまた来るね」 

「はい。お待ちしてます」


 僕は受付から離れ、ギルドの扉を開く。眩しいほどの日差しが、僕の眼を焼いてくる。


「いってらっしゃい」

「いってきます」


 ギルドの扉をしめると、眼から何かが流れてきた。それは悲しかったわけではなく、単に太陽がまぶしかっただけだ。自分でもよくわからないけれど、そういうことにしておこう。


--------------------------


 僕らは西の門から出ている馬車に乗っていた。乗り合いの馬車のはずだが、他にプレイヤーは乗っていない。やはり他のプレイヤーたちは、すでに次の街へと移動しているのだろう。

 

 馬車の窓から見える平原は、バトルラビットはいるけれどのどかに思えた。プレイヤーがいないから戦闘もないし、とても平和に見えるのだ。

 

「暇だナァ」 

「ガガウ」


 馬車が襲われるイベントもなさそうだし、特にやることもない。窓から見える平原は素敵だけれど、時間が経つと飽きてしまう。本当にやることがないのか、サクラは自分の角を爪でカリカリとやっていた。

 

「あ、そうだ。今のうちに要望を出しておこう」 


 メニューから運営への意見や要望のメールが出せる。以前に鍛冶で付与をした時、素材に個別に付与をしなければならなかった。必要な素材が五個になったら、同じことを五回もしなければならなくなる。


 はっきり言ってそんなものは無駄だ。あまりにも時間の無駄だ。だから時間ができた時に、これだけは要望を出そうと思っていた。ついでにキーン小鬼小刀の件も報告しておこう。キーンとかを表示しないようにできるように、要望を出しておくのだ。

 

「これでよしっと。でもこの馬車の時間は無駄とかじゃないよね。広い世界も体感できるし、この時間をどう楽しむのかは、僕次第なんだから」 

「おもしろいことないかナァ」


 ラビィもなんだか暇そうにしているので、この時間を有効に使う方法を考えた。

 

「なら今後に向けて、現状を把握しておこう」


 僕とラビィは10レベルだけど、サクラだけはまだ6だった。それなりに能力値が上昇しているから、確実に強くはなっている。でもその中でもサクラが強い。武器を変えたというのが大きく、攻撃力では一番だろう。

 

「フォーメーション……フォームAはサクラが先頭で、僕とラビィが後ろで援護する」

「ふむふむナァ」

「ウガガァ」


 最初にフォーメーションを決めておけば、戦いやすくなるはずだ。

 

「フォームBは僕とサクラが前衛で、ラビィが後ろから援護ね」 

「りょうかいナァ」

「ウガガァ」


 そういえばタンクがいればもっと戦いやすいと思うのだけど、タンク候補の魔物は誰にしようかな。

 

「タンク候補の魔物いないかな?」 

「よくわからないナァ」

「ウギャ?」


 サクラが首を傾げて不思議そうな顔をする。ラビィも心当たりはないらしい。

 

 公式のページでは、最初のゾーンは詳しいけれど、先のマップは詳しく紹介されていない。次の街は森のなかにあって、南の森が主な狩場になり、西に行くと『鉱山迷宮』があるとおおざっぱに書いてある。

 

 『鉱山迷宮』には『岩石人形』って言う魔物が出現するみたいだけど、硬いという意味ではタンクにふさわしいかもしれない。

 

 南の森にいる『ロードラクル』も候補にはなり得る。でも恐竜みたいな姿なので、タンクとして活躍できるかと言われれば、いまいち想像できなかった。


 あとは迷宮のミニタウロスだけど、裸のイメージがあるので、タンクはできそうだけれどなんだかピンとこなかった。


「とりあえず最初の村だ。次の街までに二つの村を経由しないとたどり着けない。いわゆる休憩ポイントだろうけれど、いろいろ調査しながら進んでいこう」


 馬車はガラガラと進んでいく。いつの間にか平原が、夕暮れで赤い色に染まっていた。

--------------------------


 最初の村についた時には、すでに夜だった。小さな村に家が点在しているが、あいにく村人の姿はない。このあたりの森の調査ついでに狩りに行ってもいいのだけれど、ラビィは夜目をもっていないから、無理に頑張ることもない。

 

「ちょっと休憩してくるよ。また朝にね」 

「またナァ」

「ウガァ」


 僕は手を振りながら、村の中でログアウトした。

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