18.レアアイテムは突然に
再び僕はログインすると、十回制限が消えたことを確認する。早速迷宮ファームしようとした所で、『小鬼の村長』が突然話しかけてきた。
「我が友。以前に我が友はマントが欲しいと言っていたね」
「はい」
「耳寄りな情報がある。始まりの街より遥か西の森にて、魔王が現れるという噂がある。その魔王がマントを装備しているそうだ」
序盤の魔王情報ほど、眉唾に感じるものはない。とは言え本当にマントがドロップするなら、それは僕にとっては嬉しい話だ。
「ぜひ手に入れたいですね」
「森の魔物が活性化したときのみ、魔王は現れると聞く。我が友ならきっと手に入れることができるだろう」
そう言うと『小鬼の村長』は、何事もなかったかのように椅子に座り込んだ。僕はそれを見届けると、再び気合を入れ直す。
「よし。迷宮ファームの再開だ」
「頑張るナァ」
「ウガガァ」
ラビィもサクラもいつでも元気だ。その元気の良さで、レアドロップを連れてきてくれる気がした。
なんども攻略したノーマル迷宮は、特にトラブルも発生しない。僕とラビィはレベル10から上がっていないけれど、サクラは少しづつレベルが上っている。
ただノーマルにおいては、サクラが近接する前に戦闘が終わるので、サクラの出番はボス戦くらいしかなかった。
「ムーンブラスト!」
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妖精の粉×2
幻エッセンス×2
妖エッセンス×1 を手に入れました
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この魔法の一撃で、すぐに戦闘は終わってしまう。
「アクアショットナァ!」
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火魔法:ファイアランスの魔導書×1
妖精の粉×1
幻エッセンス×1
妖エッセンス×4 を手に入れました
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ドロップにレアを見つけた。なんだかレアは、いつもラビィがドロップしている気がする。
「おぉ、魔導書をドロップした!」
「おめでとナァ」
「ウガァガァ」
全員が持っていない属性の魔法だけれど、普通の魔物もレアドロップがあるようだ。しかもそれは魔導書らしい。普段風属性を使う邪妖精なのに、火魔法が出るということは、ドロップする魔導書の種類はランダムなのだろう。
「やる気出てきた!」
今まではレアドロップがあるかもで狩っていたけれど、その存在がはっきりとした今ならば、気持ちのノリが全然違う。
「ムーンブラストぉ!」
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妖精の粉×3
幻エッセンス×5
妖エッセンス×3 を手に入れました
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心なしかドロップも良くなっている気がした。この調子で『無魔法:魔力』の魔導書をドロップさせてみせる。
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魔導書をドロップして絶好調でファームしていたけれど、妖精の装備もドロップしなければ、『無魔法:魔力』の魔導書もドロップしなかった。
「きりもいいし、サクラの武器を見直すために、鍛冶師に相談に行こう」
「そうするナァ」
僕は村長の家を出て、鍛冶師のもとへ向かった。
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鍛冶師の家へ行くと、優しく声をかけてもらえる。
「我が友よ。何かあったのか?」
「サクラの武器を強化しようと思うのですが、協力してもらえますか?」
「ほほう。今の我が友なら黒鉄だな。よし、500石貨で手を打とう」
ここで石貨を使うのか。迷宮である程度溜まっているし、なにより『はぐれ鬼』を倒したときに、大量の石貨を手に入れた。僕は『はぐれ鬼』に出会えたラッキーに感謝しつつ、500石貨を払った。
「ところで付与はどうなった?」
「それが基本の魔力が見つからないんです」
「そいつは大変だな。よし、我が友ならば1000石貨で売ろう」
「あるんですか!?」
思わず声が大きくなる。
「あるぞ。こいつだな」
鍛冶師が家の中からもってきた本を確認すると、本当に『無魔法:魔力』という魔導書だった。あれだけファームしてもドロップしなかったのに、まさかの販売に顎が外れそうなほど愕然とする。
「迷宮で見つかった魔導書などの大半は、ここから遥か西の森にある『鬼の村』で販売されるのだ。これはそのアイテムの余りみたいなものだな」
成人の儀式とかいうもので、手に入ったアイテムはどうしてるんだろうとは思っていた。でもその大半は『鬼の村』に輸送しているらしい。
ということは『鬼の村』へ行けば、まだ持っていない魔法なども買えそうだ。でも今はそんなことよりも、この『無魔法:魔力』が大事だ。
「あ、あの。売ってください!」
「もちろんだ。1000石貨だな。ありがとよ」
僕の手が震えていた。あれから何日経っているだろう。僕は最大限迷宮に潜って頑張った。でもドロップしなかったあの魔導書が、この僕の手の中にあるのだ。
「よし、覚えるぞ」
幸いにも無魔法レベル4で取得できる。そしてスキルの取得リスト一覧をみると、『付与』が増えていた。召喚師のレベルが10になって、スキルの枠も一つ増えている。付与を取得しても、まだ1枠余る計算だ。
「付与を取得!」
これでサクラの武器を強化ができる。最近の自分は順調すぎて怖いくらいだ。
「よし。ついでに付与の説明もするぞ」
「はい」
僕は再び、鍛冶師の家に入った。