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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
174/176

174.巨人の計画

 例の宝箱の部屋に来ると、僕はせっかくスキルが進化したからと、宝箱に触れてみた。

「うわっ、こんな事あるのか」

「んっ、どうかしたの?」


 識別での判定は宝箱というものだった。でも触れて鑑定してみると、即死の宝箱という名前がわかった。

 

 この宝箱を開けた者は、例外なく即死する。

 

 そんな仕掛けが施されているらしい。

 

「即死の宝箱だって。識別の結果も間違いではないけれど、鑑定だとより深くわかるみたいだ」

「物騒な宝箱ね。即死っていうのは、周囲にいる人をまとめてなの?」


 マーミンの言葉に、僕はゆっくりと横に首を振る。

 

「開けた人だけってことね。っていうことは、開けたあとの中身は取り放題」

「誰があけるのさ?」

 

 マーミンは眼をうるうるとさせながら、僕を見つめてくる。

 

「ぼ、僕に開けさせる気? 外道だよ。外道すぎるよ」

「冗談よ。さすがに仲間を犠牲にして、宝を手に入れるほど腐ってないわ」


 実行するかは別にして、プレイヤーが即死したとしても、別に復活できるから、特に気にすることはないのかもしれない。

 

 でも僕らの感覚から言えば、そんな方法は論外なのだ。

 

 もちろんラビィやサクラにあけてもらうのもだめだ。復活するとわかっていても、そんなことをさせたくはない。

 

「だから私が開けるわね」

「ちょっ」

 

 あまりにも予想外過ぎて、止めることはできなかった。僕の体が反応したときには、すでにマーミンは蓋を開けている。

 

 その瞬間、ギーンとものすごい耳障りな音が鳴り響いた。

 

「あら。どうやら本当に即死だったみたいね」


 マーミンはローブの隙間から、なにかキラキラとしたかけらを取り出した。

 

「それは?」

「一度だけ死を防ぐネックレスよ。確率一割だけど、今日は運がよかったわ」


 思わず僕の口が開く。そんなアイテムを準備しているのはさすがだけど、九割は即死していたということになる。

 

 いくら宝を手に入れるためとはいえ、無謀にも程があるだろう。

 

「無茶がすぎるよ。それで即死したらどうするのさ」

「別に。それはそれで呪いを受けて死亡したらどうなるかの、検証くらいにはなるでしょ。助かったんだし、オールオーケーってことね」


 そう言うとマーミンは、ヒョイッと箱の中を覗き込んだ。

 

「なにかしらこの赤い石? 触って調べてよ」

「まかせて」


 僕は赤い石に触れて、鑑定を発動する。

 

「解放の爆炎。時が止まるかのように凍りついたすべてを氷解させるだって」

「何か重要そうな……」

「お前らそこで何をしている!」


 マーミンの言葉の途中で、さっきまで反応がなかった『ケヴィン・シルフォード』が部屋の入口で叫んでいた。

 

「ケヴィンさんには聞きたいことがいっぱいあるんです」

「問答無用。巨人を解放しようとするやつは、すべて抹殺する!」


 ケヴィンは腰のサーベルを抜くことなく、僕に向かって走ってきた。

 

「ファイアショット!」


 マーミンがきらめく五つの炎を呼び出し、そのすべてをケヴィンへ叩き込む。

 

「ぐあぁぁぁぁ」

 

 一気に炎に包まれたケヴィンから、大量の多角形の板がほとばしった。

 

「くそっ、巨人に破滅を……」


 そう言い残し、ケヴィンはすぅっと消え去った。


>>>>>>>

切裂きのサーベル×1 を手に入れました

<<<<<<<


「うぉっ、サーベルをドロップした」

「サーベルはレアドロップだったのに、さすがはレアハンターね」

 

 そんなことよりも、人間を倒してしまったことに、僕はかなりドキドキしていた。

 

「NPCを倒しちゃったんじゃないの?」

「狂気に取り憑かれたケヴィン・シルフォードって言う名前だったわよ。ドロップリストもあったし、魔物扱いじゃないかしら。ほら、宝箱も」

 

 宝箱を確認すると、即死の宝箱として復活していた。

 

「繰り返し系のクエストの一部なのかな。特に受注はしてないけれど」

「ちょっと待ってて」


 マーミンはそう言うと、部屋の外へと駆け出した。少しして戻ってくると、やっぱりだわとつぶやいた。

 

「さっきのケヴィン、また部屋にいたわよ。もしかするとこの砦の連中は、敵になったりもするみたいね」


 普段はNPCだけど、条件を満たすと襲ってくるということらしい。今回の場合は、宝箱を開けた事かもしれない。

 

「ケヴィンの日記はドロップしたでしょ? ちょっと読んで見ましょうよ」

「日記? そんなのドロップしてないよ」

「コモンだったのに? さすがはレアハンターね」


 そう言うとマーミンはニンマリと笑う。からかわれているのはわかっているけれど、今は日記が気になった。

 

「面倒だと思うけど、読んで説明してよ」

「もっとかまってくれてもいのよ。ドライモードのラルだわ」


 そう言いながら、マーミンは本を取り出した。サラサラと目を通していくと、僕の方へと顔を向ける。


「巨人は全生物巨人化計画を発動し、この雪原に呪いを振りまいた。その呪いを封じ込めるために、この砦を建設する。その後、巨人の城を封印の爆氷で、氷の中に閉じ込めた。そして封印が解けぬよう、解放の爆炎を封印し、呪いを受けた人間たちで砦を守る」


 人間対巨人の戦いがあって、呪い封じのために砦ができた。呪われた人は砦から出られないので、解放の爆炎の守護者となった。っていう感じだろう。

 

「巨人の城には、巨人の力がなくては到達できない。呪いを受けた勇敢な戦士たちを、人間に戻す解呪の輝石までも、巨人の城に封じてしまったのは痛恨である。なんかあとは懺悔の話が、延々続いているわ」


 まとめると、僕らが受けた巨人の呪いは、解呪の輝石を使えば解けるようだ。でもその解呪の輝石は、巨人の城に封印されてしまった。

 

 巨人の城の封印は、解放の爆炎を使えば解ける。

 

 巨人の城に行くためには、巨人の力が必要だ。

 

「これって呪われて、解放の爆炎を手に入れて、巨人の城を解放して、解呪の輝石を使って呪いを解くって手順だよね。ようは、何もしなければ何もしなくてよかったってことだよね」

「全生物を巨人化しようなんて奴らを、私は伝説の魔女として放ってはおかない。真実を知っても、私の行動は変わらないわ」

「巨人の城にはお宝もありそうだしね」

「そうよ。まだ見ぬ巨人のお宝をって、私はそこまでがめつくないわ」


 いままでも別にお宝大好きキャラでもなかったし、マーミンののりの良さは最高だ。


「とりあえず、砦の外に出てみようか」

「オーケー」


 僕らはついに、砦から脱出するのだ。

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