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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
160/176

160.ボス系じゃなかった

 デザートメイドの姿が霞むと、ファイアショットは目標を失ったように壁にあたって消えた。

 

「魔法を回避できるタイプみたいだ!」

「ならこれだ!」


 パンクがいち早く近づき、メイスを振り下ろした。はっきりと姿を見せたデザートメイドは、なぜか無防備にその一撃を受けた。

 

 気持ちよく飛び散るダメージエフェクト。どうやら霞んだ後は行動が抑制されるようだ。そのせいでメイスをくらい、きっちりとダメージを受けたらしい。

 

 ファイアショットのダメージに比べれば、メイスの方が弱い気もするけれど、魔法を避けさせて物理攻撃という作戦が、いまの状況では最適だろう。

 

「いい感じだ。それでいこう」

「ウッピィ」


 エリーからフレアアローが飛んでいく。デザートメイドは持っていたトレーでフレアアローを払い落とした。

 

 気がつけばそのトレーの上に、イチゴのショートケーキが乗っていた。

 

「ムーンシールド」

 

 飛んできたショートケーキがムーンシールドに当たって弾け飛んだ。ちょっともったいなく見えるけれど、もともと食べられるケーキではない。

 

「ほいさ」


 デザートメイドはこれまでの魔物とは違い、なかなかのう防御能力を持っている。でも攻撃方法は単純だし、それほどピンチにはなりそうにない。

 

 その僕の予想通りに、ほどなくしてデザートメイドは、多角形の板を撒き散らしながら消えていった。

 

「やったわ。生クリームをゲットよ」

 

 ドロップ表示がなかったので、そういうことだとわかっていた。インベントリを確認すると、まさかのスポンジすらドロップしていない。

 

「うそだろ……」

「どうかしたのか?」


 僕はコモンすらドロップしていない事を説明した。

 

「あれよ。ドロップ運が貯まって、あとからドカーンてレアドロップするパターンじゃない?」


 そんなシステムは存在しないけれど、これをグチグチ言っても仕方がない。

 

「そうだね。次はレアをいただくぜ!」


 マーミンにノせられるようにして、僕は気合を入れ直す。


「それじゃ、奥を見てみようか」


 デザートメイドが現れた扉は、開きっぱなしになっている。パンクは警戒しながら近づくと、すっと扉の奥へと進んだ。

 

--------------------------


 左右に伸びた廊下を、右に向かって進んでいく。お城の中は予想していたよりも、ずっと広くて探索しがいがある。

 

 しばらく廊下を進んでいくと、通路の奥にメイド姿の魔物が3体歩いていた。

 

「中ボスじゃなかったのか」

「デザートメイドで間違いないわね。ショートケーキチャンスよ」

「よし。行くか。我が名は……」

「待って」


 戦闘を始めようとしたパンクを、マーミンが慌てて止めた。

 

 何かの魔法を使ったような感じがした後、マーミンはパンクに向かってうなずいた。

 

「我が名はパーフェクトタンク!」

 

 3体のデザートメイドは一斉にこちらを振り返る。大きな口しかない顔が、相変わらず気持ちが悪い。

 

 近づいていくパンクへ向けて、トレーからショートケーキが飛んでいく。

 

「リフレクトシールド!」

 

 マーミンが魔法を発動させた。どうやらさっき準備していた魔法は、この魔法だったらしい。

 

 そう言えばイモキンと戦った時、僕はこの魔法に助けられている。あの時も同じように準備が必要だとしたら、あの混戦のなかでマーミンは、とんでもない先読みで魔法を使用していたことになる。

 

 マーミンは僕が思っている以上に、凄腕のプレイヤーなのかもしれない。

 

「あっ」

 

 って思っていたら、3つのショートケーキがパンクの前で跳ね返り、デザートメイドへと飛んでいった。

 

 ナイスダメージとか思っていたら、デザートメイドは大きな口を開け、戻っていったショートケーキを食べてしまう。

 

「少しはダメージを受けなさいよ!」

 

 マーミンの言葉でという訳でもないと思うけれど、いきなりデザートメイドの全身から多角形の板が激しく飛び出した。

 

 あっと思う間もなく、デザートメイドは消えていく。

 

>>>>>>>

デザートメイドからの贈り物×3 を手に入れました

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「裏技発見? 経験値も普通に増えるし、伝説の魔女に不可能はないのよ!」


 なんとなく懐かしいフレーズも気になるけれど、手に入れたアイテムのほうがもっと気になった。なによりこれはドロップリストにはなかったアイテムだ。

 

 つまり、ショートケーキを食べさせることでしか手に入らないアイテムだと予想できる。

 

「贈り物は使えばアイテムになるみたいね」

「やってみる」


 インベントリから取り出すと、赤いリボンで縛られた白い袋のアイテムだった。この中がプレゼントだよって言う感じらしい。

 

 僕は使いますかの質問に、すばやくイエスと答えた。

 

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技能書:料理 を手に入れました

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 体中に電撃が走る。このゲームにはたくさんスキルがあるけれど、料理というスキルは初めて見た。

 

 何より食べ物はバーガーしかないはずだから、技能として存在するのがありえない。

 

「あっ、技能書まで手に入ったわ。料理ができるようになるみたいね」

「僕も手に入れたよ。これってすごくない?」


 パンクもマーミンもなんだか興奮気味だった。


「もちろんよ。こうやって技能を取得するパターンもあるのね」

 

 僕は残り二つの贈り物も使ってみた。

 

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料理レシピ:イチゴのショートケーキ×1

料理レシピ:カツ丼×1 を手に入れました

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 バーガー以外の料理のレシピだった。バーガーは経験値増加アイテムだから、もともと作成する概念はないけれど、もしかするとないかしら効果のある食べ物になるのかもしれない。

 

「料理も面白そうだね」

「なら技能書をあげるわ。魔女の私には、これで枠を使うのはもったいない気がする」

「ありがとう。でも僕も料理の技能書を手に入れたから大丈夫だよ」

「手に入らなかったのは俺だけかよ!」


 本気ではない感じで、パンクが憤っていた。マーミンがそれをからかいながら、いつもと同じくじゃれている。


 僕はスキル枠が余っている状態なので、この場で技能書を使ってみた。

 

 僕のスキルに料理1が追加される。

 

「料理技能習得! ついでにレシピも覚えちゃおう」

 

 って思ったら、イチゴのショートケーキはレベル3で、カツ丼はまさかのレベル5だ。レベル1で使えるレシピがなかったら、せっかくの技能も鍛えられない。

 

「げぇ、レベル1で覚えられるレシピがない!」

「なら俺のをやるよ。レベル1で覚えられる炭酸水ってレシピだ」

「私のもあげるわ。レベル1のパンと、レベル2のハンバーグだって」

「ありがとう! 遠慮なくもらうよ」

 

 一緒に探索してドロップしたアイテムだから、対価を払ってとかはあまり気にならなかった。もちろん僕に二人がほしいアイテムがドロップしたら、無償で譲るつもりだ。

 

 むしろ一緒に探索して、ドロップしたアイテムを有償でやり取りする意味がわからない。

 

 確かにそれが正統なのかもしれないけれど、お互いが欲しいものを融通し合うことで、戦力が充実するわけだし、っていうか、野良パーティでもないので普通だろう。

 

「バッチリ覚えたよ。炭酸水は水だけで作成できて、パンは小麦粉と水が必要みたい。小麦粉なんて売ってたかな?」

「売ってないならドロップかしら? 見つけたら情報交換しましょう」

「どうやらデザートメイドはリフレクトでうまくやれば倒せるようだし、ドンドン倒していこうぜ」


 僕らは気合を入れ直し、長い通路を歩いていく。

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