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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
素敵なマントを手に入れたい
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16.迷宮制覇のご褒美

 ボス部屋の奥には迷宮脱出用の魔法陣があった。僕らがそれで脱出すると、『小鬼の村長』が拍手で出迎えてくれた。 

 

「おめでとう。さすが我が友だ。小鬼の成人の儀と同じように、これを我が友に贈ろう」


 小鬼の村長は僕に武器を渡してくれた。詳細を見ると『小鬼の脇差』という名前だった。ちょっと短い感じで装飾が金を使った派手な感じだから、儀礼用の短刀みたいな気がする。でも分類的には刀なので、ちょうど必要としている武器だった。

  

(やった。これはサクラが装備できるはずだ) 


「ありがとうございます」

「強力な武器が欲しければ、小鬼の鍛冶師に聞くと良い。あの建物だ」

 

 小鬼の村長が指差した先には、住居のような建物があった。おそらくはあそこに住んでいるのだろう。

 何より強力な武器は興味があるので、お礼を言ってすぐに向かった。

 

--------------------------


 一度ラビイを送還し、サクラを召喚して『小鬼の脇差』を装備させた。攻撃力は5しかないが、最初の武器ならば仕方がないところだろう。それに鍛冶師に話を聞けば、もっといい武器が手に入るかもしれない。

 

「おっ、我が友よ。鍛冶屋になんのようだい?」 

「あの、強力な武器について知りたければ、聞いてみろと言われてきました」

「ほほう。強力な武器が欲しいのか」


 鍛冶師は少しだけ思案すると、ニカッと笑った。


「なら自分で作ってみるか? よかったら俺が教えてやるぞ」


 この提案に少しだけ迷う。でもサクラの武器を自分で造れるとするならば、これほど素晴らしいことはない。まだスキル枠は二つ空いているから、鍛冶スキルは取得しても良さそうだ。

 

「おねがいします」 

「いい返事だ。だがまずは鍛冶のスキルを……ってあるのか。よし。奥へ来い」


 話の途中で鍛冶スキルを取得した。剣の時とは違って、鍛冶を習得する話ではなく、鍛冶を鍛える感じだったからだ。

 

 家の中に入ると、イメージとは違う部屋だった。普通ならば火で熱く、炉がすごいことになっているだろう。でもそもそも炉が存在していない。あるのはゴロゴロと転がった鉱石と、テーブルとハンマーだけだ。

 

「鍛冶のスキルを見てみろ。素材作成や装備作成があるだろう」


 確認すると素材作成に『鉄のインゴット』、装備作成には『短剣』『長剣』の二つがあった。どうやら最初はこれしか作成できないらしい。

 

「鍛冶のレベル上昇とともに、できることも増えていく。だが中にはレシピを手に入れなければ作成できないものもある。さあそこに立て。まずは『鉄のインゴット』の作成だ」


 鉄鉱石を30個ほど渡された。

 

「えっと……」 


 戸惑っていると、鍛冶師がアドバイスしてくれる。

 

「作成しようとすればわかるが、鉄鉱石3つをテーブルに並べ、そこのハンマーで叩くんだ。そうすれば『鉄のインゴット』が完成する」 

「はい」


 僕はテーブルに鉄鉱石を三つならべ、それをハンマーで叩いてみた。するとピカッと鉄鉱石が輝いて、そこに『鉄のインゴット』が現れる。

 

「うわっ、すぐできた」 

「まだまだ。鉄鉱石30個を使って、インゴットを10個作るんだ」

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。

 

「できました!」 

 

 すると鍛冶のレベルも上昇する。素材作成に『銀のインゴット』、装備作成に『槍』『斧』が追加されていた。

 

「うむ。いい出来だ」 


 おそらく完成品に差はないだろう。でもいい出来だと言われると、なんだか嬉しくなってくる。

 

「では短剣だ。それを5つ作成するんだ。やり方はわかるな?」 

「はい」


 さっきの素材と同じやり方で、短剣を作成しようとすると『鉄のインゴット』を一つ消費することがわかる。僕は『鉄のインゴット』をテーブルにおいて、コンッとハンマーで叩いた。

 

 ピカッ。

 

 そこに短剣が現れる。鍛冶とか言うからもっと大げさなのを想像していたけれど、ゲーム的にかなり簡略化しているようだ。僕は短剣の詳細を見てみる。

 

(攻撃力3か……。必要筋力も制限もなにもないし、最初はこんなものかな)


「さぁ、どんどん作成するんだ」

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。

 

 っと、5つ作成したところで鍛冶のレベルが上った。素材作成に『金のインゴット』『黒鉄のインゴット』、装備作成には『大剣』『兜』『鎧』『手甲』『足甲』の5種類が追加されている。

 

「いい出来だ。やるじゃないか」 

「ありがとうございます」

「そのまま長剣を5つ作成してくれ」

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。

 

 いわゆる長剣を5つ作成したが、特にレベルは上がらなかった。詳細を見ると攻撃力5なのだけど、使用する素材も一つだし、これなら短剣はいらない気がする。

 

「まだまだやるぞ。次は『黒鉄のインゴット』の作成だ」 

「はい」


 レシピにあれば必要な素材もわかる。『黒鉄のインゴット』作成には、銀鉱石を一つ、鉄鉱石を二つ使うらしい。それらをテーブルに乗せると、僕はハンマーでコツンと叩く。


(真っ黒なインゴットだ) 


 それであっさりと『黒鉄のインゴット』は作成できた。名前からして鉄の上位なのだろう。


「全部で10個作るんだ」 

「はい」


 鉄鉱石などの素材は、全部提供してもらっている。僕は遠慮なく『黒鉄のインゴット』を作成していった。


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。


「いい感じだな。まあこの辺のレシピはまず失敗しない。というか失敗したのを見たこともない。それで長剣を作成してみるんだ」

「はい」


 もっと先のレシピになると、作成失敗があるらしい。でも今はないらしいから、気にせず長剣を作成する。

 

 カンッ、ピカッ。

 

 詳細を見てみると、攻撃力が12になっていた。やはり素材を変えることで、同じ武器でも攻撃力が変わるらしい。というかあっさりと脇差の性能を越えていた。

 

「どんどん作成だ」 

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。


 そうやって5つ作成すると、鍛冶レベルが上がって4になった。でも素材作成にも、装備作成にも特に追加はなかった。


「よし。次は鎧だ。ブレストプレートも『黒鉄のインゴット』が一つで作成できる。それを5つ作成するんだ」

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。


 完成したブレストプレートを見ると、必要筋力21、防御力13という性能だった。

 

「うーん。これってすごいのかな」 

「性能は悪くない。だが鍛冶の真髄はどれだけプラスがつけられるかだ」

「プラスですか?」

「そうだ。『黒鉄のインゴット』を使って、短剣を作成して見るんだ。それでわかるだろう」

「はい」


 ちょっともったいない気もするが、僕は言われたとおりに短剣を作成する。黒い素材を使っているせいか、刀身も黒い短剣ができた。僕は詳細を確認する。

 

(短剣+2だって! 攻撃力は10だ。鉄の短剣が3だったから、かなりの威力の上昇だ) 


「どうだ。プラスがつくと強いだろう。だがプラスをつけるには鍛冶に習熟しなくてはならない。日々努力というわけだ」


 簡単に言うと、鍛冶レベルを上げればプラスがつきやすい。ブレストプレートはレベル3で作成できるようになったから、鍛冶レベル4ではプラスがつきにくい。だから最初に覚えた短剣を作成することで、プラスの確認をしたのだ。

 

「そういえば付与でさらに強くできるとか」 

「おっ、物知りなんだな。素材に付与をすることで、装備にスロットができる。そのスロットにさらに魔法を付与することで、魔法の装備の出来上がりだ」


 ちょっと複雑っぽいシステムだけど、なんの変哲もない短剣でも、魔法の装備になるわけだ。でも少しだけ気になることがある。

 

「あっ、もしかして完成品には付与できないんですか?」 

「空きスロットがあれば可能だが、スロットのない装備には付与できない」


 魔物からドロップした装備でスロットがない場合、それを魔法武器にはできないってことだ。最初から魔法がかかっているものは、もちろん例外だけど。


「どうやったら付与ができるようになるのだろう」


 僕は思わずつぶやいた。

 

「付与魔法を覚えて、付与スキルを習得したらできるぞ」 


 そんなつぶやきに、鍛冶師が返答してくれる。

 

「付与魔法?」 

「基本となるのは無属性の魔力。これを素材にかけることで、装備にスロットが作成できる。ただ魔法だけを覚えても、付与というスキルを習得しなければ、実際には付与できない」


 つまり魔力という魔法を覚えて、付与というスキルを取得すればいいって言うことだ。その基本魔法が無属性だなんて、どうやら運がいいらしい。

 

「シャープネスなど攻撃力を上げる魔法や、火魔法の火とかが手に入りやすいな。後は能力値をあげたり、特殊効果を付与したりと、いろいろ面白いぞ」 


 以前武器屋で見せてもらったシャープネスは、プレイヤーでも付与できるようだ。そして付与できる魔法は無属性だけじゃなくて、火魔法とかにもあるらしい。

 

(燃える剣とかを作成するなら、火魔法が必要ってことだよね) 


「付与系の魔導書も『邪妖精の迷宮』で手に入るだろう。そんなことより、鍛冶を5レベルにするぞ。どんどん作成だ」

「はい」


 カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ、カンッ、ピカッ……。


 そうやっていろいろ作成していると、ついに鍛冶レベルが5になった。でも残念ながら新しく追加されたレシピはない。

 

「よく頑張った。それでは迷宮制覇のプレゼントだ」

「えっ」


 鍛冶師は一枚の紙を手渡してきた。そのアイテムを確認すると『鍛冶レシピ:刀1』と書いてある。

 

「これは……」 

「迷宮制覇のお祝いだよ。我が友は小鬼の一族のために、尽力してくれたからな。ただ鍛冶が5レベルでないと、覚えられないんでな。いろいろがんばってもらったんだ」


 その言葉にじーんとする。僕はありがとうと感謝しながら、レシピを追加した。項目に『脇差』『小刀』が増えている。正直に言えば、脇差と小刀ってある意味同じじゃないかと思うけれど、このゲームでは脇差が短刀みたいな感じで、小刀はそれよりも少し長いという位置づけのようだ。

 

「最初は特別な材料もいらない。精進してくれよ」

「はい。ありがとうございました」


 そう言って僕はその場を後にする。もちろんこれから『邪妖精の迷宮』に行くためだ。鍛冶のために『鉱石迷宮』に行くのもいいけれど、付与にはとても興味がある。まだまだ魔導書もドロップしそうだし、『邪妖精の迷宮』ファームをしよう。

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