156.秘密の難易度
必要なアイテムがなかなか取得できない間に、ビッグブラックラビットから、『純粋なる闇の塊』というアイテムがドロップした。ドロップリストには載っていないアイテムだったので、なんだか不思議な感じがするけれど、ドロップには何かしらの条件があるのかもしれない。
『純粋なる闇の塊』の説明には、新たな異界の扉を開くとか書いてあるけれど、ちょうど種や心臓などのアイテムが集まったので、気にせずガメールのところへと戻った。
アイテムを交換すると102ポイント。これで星砂は十分な数が手に入る。
早速ポイントを使用して、星砂を交換しようとしたとき、不意に僕の中で不安が生まれてきた。
星砂が10必要なのは確実だ。なぜだろうと記憶をたどっていくと、人造卵の仕様を思い出した。
人造卵に継承できる技能は全部で10だけど、そのうちの3つは技符というものが必要になる。そしてそれは、ここのポイントでしか交換できない。
星砂ばかり気にしていたけれど、技符用のポイントをすっかり忘れていた。
というか、星砂ばかりに注目して、リストに並ぶ他のアイテムは、あまり目に入っていなかった。僕はあらためて、召喚師用の交換リストを確認していく。
事前の情報にあった通り、上位の魔法の技符があった。烈火、流水などの基本4属性の上位はもちろんのこと、虚無魔法に爆裂魔法、治癒魔法に補助魔法まで存在する。
中でも驚きなのは、闇魔法と光魔法があり、轟雷魔法まであることだ。
存在は明らかになっていても、取得方法がわからないと言われている魔法まで、技符として交換可能だった。
ただ烈火などの比較的ポピュラーな魔法でも、交換ポイントは100必要で、爆裂、治癒、補助は200ポイント、轟雷魔法は300ポイント。光と闇に至っては、500ポイントも必要だった。
現実的なポイントではあるけれど、集めるのには数日かかるだろう。ナイトメアで戦えて、もっとポイントが稼げるならば、早く準備できる可能性はある。
星砂が必要なのは確実なので、2ポイントを残して、星砂10個と交換した。
僕の召喚獣から考えて、雫から取得できない魔法は、爆裂、補助、虚無、闇、光、轟雷だろう。
この魔法の内、爆裂は範囲が主流で、使い勝手は良くないイメージがある。虚無は僕が使えるので、あえて取得させる必要もなさそうだ。
光や闇の魔法に興味はあるけれど、どういう効果があるのか、全く情報が存在しない。なによりその魔法用の魔導書が必要になるのに、その入手方法がわからない。
でもそこでピンときた。ここで魔法技能が取得できるならば、魔導書だって取得できておかしくはない。
召喚師用のリストではなく、普通の交換リストを確認する。
「あった!」
各種魔導書が揃っていた。どうやら異界迷宮の仕事をこなして、戦力を充実させるのが良さそうだ。
僕の覚えていない虚無魔法の魔導書もあるし、これら全てを取得できたら、かなりの戦力アップになるだろう。
例の魔導書クエストでも手に入るようなのは、一律100ポイントでいいらしい。だけど上位になると、最低でも300ポイントは交換に必要になる。
このポイント設定や、異界迷宮の難易度を考えると、おそらくナイトメアファームを想定していると予想できる。
ハード周回で面倒な異界迷宮が終わったと思ったけれど、まだまだここからは逃れられないらしい。
でもさっきまでとは、モチベーションが全く違う。
ただの予想でしかないけれど、ナイトメアはきっと面白くなっている。ハイズが手に入れたとか言う、槍のドロップもまだ見つかってはいない。
ノーマルとハードが面白くなかった分、ナイトメアに全てが詰まっているはずだ。
すぐにでもナイトメアに行きたいけれど、無理にソロで行く必要はない気がする。ポイントは誰でも欲しいと思うし、せっかくなのでフレンドリストでログインしている人を誘って行くことにしよう。
フレンドリストを見ると、4人がログインしていた。ラズベリーは黒騎士の迷宮を攻略中みたいだし、ゴリはパーティを組んでいる。
マーミンとパンクがクランハウスにいるみたいなので、早速メッセージを送ってみる。
ラル:いよぉ。時間があるなら、ロッカテルナ湖の異界迷宮ナイトメアに行かない?
マーミン:やっほー。いいよ。パンクもいるけど、一緒に誘う?
ラル:おねがい
パーフェクトタンク:よろしくな
少しの間の後に、パンクから返事が来た。
遠距離ではあるけれど、僕はマーミンとパンクをパーティに誘った。
ラル:ガメールのところで待ってるね
マーミン:オーケー。またあとでね
ここに到着するまでには、少し時間がかかるだろう。パンクがいるので、今回はルードを召喚せずに、ラビィ、サクラ、エリーの布陣が良さそうだ。
ただ湖の中には連れていけないので、異界迷宮に侵入してから召喚しよう。
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ガメールのところで二人と合流し、湖の中へと潜った。
『純粋なる闇の塊の力を開放します』
異界迷宮の入り口に近づいて、ナイトメアを選択しようとした時、当然そんなメッセージが流れた。
「どういうこと?」
「どうしたの?」
僕のつぶやきに、マーミンが反応した。
普通の迷宮で選択できるのは、ノーマル、ハード、ナイトメアの3種類だ。なのに4番目の選択肢として、ダークワールドという項目が増えている。
「難易度の選択にダークワールドって言うのが追加されたんだ。『純粋なる闇の塊』っていう、アイテムのおかげみたい」
「よくわかんねぇけど、面白そうだな」
「初めて聞くわ。そのアイテムも気になるけど、ナイトメアよりも難易度が高そうね」
マーミンもパンクも知らないなら、なおさらダークワールドには興味がでてくる。
難しければ撤退すればいいし、どうせなら挑戦してみたい。
「えっと、ダークワールドでいいかな?」
「いいわよ。あとで『純粋なる闇の塊』についても教えてね」
「行こうぜ!」
あれが単にリストに載らないレアドロップなのか、何かしらの条件でドロップするのかはわからないけれど、マーミンが攻略した時と、僕が攻略した時の違いを調べれば、何かしらのヒントは見つかるだろう。
今はあのアイテムの入手方法よりも、このダークワールドが先だ。
「ありがとう。それじゃ行くね」
僕はダークワールドを選択した。