151.驚くほどの神スキル
覚えられる魔法が暴風と堅土だったら、僕らには使えない魔法をコンプリートできていた感じだ。
あとはどの魔法を選ぶのかと、見た目の色を決めるだけなので、色猫の卵を機械から外した。
次は自力で当選したロングキャットの卵をセットする。
「これは……」
表示された固有技能の名前に、期待して声が漏れた。
ロングキャットの固有技能は双運。ドロップ判定を2回行い、レア度の高い方をドロップするという技能だった。
「神スキルだ! ドロップ自体が増えるわけではないけれど、100体倒せば、200回ドロップ判定をしてくれるってことだ」
僕の体は震えていた。どこでも有効なスキルだけど、挑戦回数に制限がある迷宮でも、試行回数が倍になるというのは、とてつもないアドバンテージになるだろう。
「まてよ……」
金の特賞がこのスキルならば、銀の特賞はどうなのだろう。僕はロングキャットの卵を外すと、ホワイトウルフの卵をセットした。
「やっぱりだ!」
ホワイトウルフの固有技能は幸運。レア以上のドロップ率を上昇させるというスキルだった。
つまり、ホワイトウルフとロングキャットを同時に召喚して戦えば、幸運でレアドロップの確率が上昇し、双運で2回判定してくれる。
レアハントには最適なスキルだった。
だけど他のスキルを何も持っていない。固有技能が神スキルなせいで、戦闘では運用が難しそうだ。
でも戦闘できなければ、そもそもドロップすることがない。
「むむむ……」
痛し痒しの状況に、思わず僕も声が出る。
セットしているホワイトウルフに上位属性のエッセンスを入れてみたら、せっかく真っ白な毛並みなのに、属性の色がついてしまう。
ホワイトウルフはデフォルメされた可愛い系で、真っ白こそが似合っている。ラズベリーのイッちゃんが真っ白だったのは、色が変わるのが嫌だったのだろう。
鬼エッセンスを入れてみたら、額から角が生えてきた。わかりやすい変化だけど、可愛らしさが消えて、リアルなフェイスに変化していた。
獣エッセンスならば爪が伸び、全体的にふわっとした感じではなく、シャープさが目立ってくる。
その他色々投入してみたけれど、何も入れない素の状態が、見た目で言えば最高だった。
ホワイトウルフは悩みそうなので、ロングキャットの卵と入れ替えた。
鬼や獣のエッセンスを投入して確認したら、ホワイトウルフの時と傾向が似ていた。鬼なら角が生えてきて怖くなるし、獣ならシャープで筋肉質に変化する。
人エッセンスを投入したら毛がなくなるだけで、ツルンとして怖かったし、妖エッセンスは全ての毛が黒くなって、闇の生き物っぽく変化してた。
竜は毛が鱗になって、幻は体が半透明になっていた。
ただいずれにしても、新たなスキルは覚えない。
属性以外のエッセンスをいろいろなパターンで試してみたけれど、何もスキルを取得しなかったのだ。
「ペット系なのか。とすればこれは、ハンデにしかならない」
戦闘で役に立たない魔物を召喚しながら、ドロップに期待して戦闘をする。1体だけならまだしも、幸運と双運の2体を召喚して戦うのは、かなり不安になってくる。
運悪く倒されでもしたら、それでスキルの効果もなくなるだろうし、逆に効率が悪くなるかもしれない。
「そうだ。人造卵だ!」
確かなんとかの星砂を使えば、確実に継承できると言っていた。あの館のシステムを使えば、幸運と双運を二つ取得した魔物を実現できる。
星砂の入手場所は、異界迷宮だったはずだ。
そして異界迷宮へは、ロッカテルナ湖を攻略するクエストを進めていけば、行けるようになるとマーミンが言っている。
「僕の進むべき道が、ロッカテルナ湖で一つになる」
もともと攻略したくて、レベル上げしている途中だ。推奨は35だけれど、僕のレベルは32で、それほど大きく違いはない。
エリーのレベルも高くなっているし、例のクエストにチャレンジしてもいい時期な気がした。
あのクエストに向かう前に、人造卵に設定したいスキルをまとめておこう。
まずは幸運と双運。この二つは外せない。できれば欲しいものは、水中活動と熱耐性だ。
ルードの火耐性から考えるに、熱耐性は熱に関する耐性なのだろう。だから暑くても寒くても、問題なく活動できるというスキルのはずだ。
サクラの二刀流は、刀がなければ無意味かもしれないし、これを覚えさせるならば、前衛の魔物になるだろう。
使う雫で能力値が変わるはずだから、ラビィの魔導とかを習得させて、エリー以上の後衛タイプを作成しても面白い。
むしろ前衛だったら倒される危険があるし、後衛の方が危険は少ないはずだ。
この時点で幸運、双運、魔導、水中活動、熱耐性。残りは2つ選択できて、3つは技符ってやつで覚えさせるわけだ。
人造卵は進化しないから、初期スキルが全てだろう。これで妥協したら、絶対に僕は後悔する。
そういえば、前にかったヘビやトカゲにも、固有技能があるかもしれない。
僕はヘビの卵をセットする。
「期待はずれか……」
固有技能は存在しなかった。技能に噛みつきって言うのがあるけど、特に興味も沸いてこない。
なんとはなしに、上位の属性エッセンスを入れてみる。
色猫とかはそれで魔法を覚えたけれど、それすら取得しなかった。
「使い所がなさそう……って」
暴風と堅土のエッセンスを同数入れたとき、ヘビは新たなスキルを取得した。それは雷魔法。いままで出会ったことのない魔法だった。
「ヘビだから覚えている? とはいえ雷なのか。これは下位の魔法のはずだ」
脅威の魔法は2文字が普通だ。癒魔法の上位が治癒魔法のように、なにかしら名前が変わるはず。
どうせ覚えさせるならば、上位の魔法がいい。とは言えこのヘビは進化しないし、大蛇の卵を手に入れれば、雷も上位にできる可能性がある。
15レベルくらいならば、すぐにでもあげられるだろう。進化は難しくないとしても、卵を手に入れるのが難しい。
思惑通りに雷魔法を覚えるとも限らないし、こっちは異界迷宮の様子を見てから、卵チャレンジするかを考えよう。
ヘビの卵は落ち着いたので、トカゲの卵を確認する。固有技能に鱗があって、防御力を上昇させる効果だった。
それならルードの鉄皮膚を継承したほうが、より効果は高いだろう。魔法も覚えてくれないようだし、この卵はずっとインベントリにしまったままになりそうだ。
最後にカエルの卵をセットする。
固有技能にまさかの水中活動をもっていた。でも同じスキルならば、エリーをベースにしたほうが、能力値的にも優遇される気がする。
水と相性が良いのか、流水エッセンスで流水魔法が取得できる。進化はできないけれど、序盤の戦力としては、かなり有効といえるだろう。
もちろん流水魔法も、ラビィかエリーをベースにしたほうが、より良い結果になるはずだ。
「確定といえるのは固有技能5つだな」
残りの技能2つと技符の3つは、異界迷宮に行けるようになってから詰めていこう。
それではロッカテルナ湖へ向かう前に、色猫のエッセンスを決めてしまおう。
流水と堅土で攻防一体にするとして、青ベースのキラキラ感で勝負だ。