150.施設ランクアップ
ズラッと並ぶ受付に近づくと、勝手にオークションのメニューが開いた。話さなくていいのは楽な気もするけれど、ちょっとだけ寂しく思える。
でも欲しいものを探すのに、いちいち尋ねるよりは、ぱっとリストを見たほうが楽だ。とりあえず鍛冶で作成できる武器を見たら、強そうな刀が売っていた。
ただよく見るとフォレンチノを使っているらしく、修理不可の武器だった。オークションでは販売者もアイテムの製作者も隠すことができるのに、この人はあえてなのか名前を表示している。
製作者の名前はマサムネ。きっとそれもロールプレイの一つなのだろう。
頑張れば僕にも作れそうな数値だったので、特に買う気にならなかった。
布装備のリストには、ミニ浴衣を見つけた。製作者が隠れているけれど、もしかするとラズベリーかもしれない。
一着5000ウェドだけど、高いか安いかはわからない。レシピの取得が大変というのから考えたら、安い気もするけれど、性能を考えたら高いかもしれない。
そういう風に考えたら、5000ウェドは意外と適正な気がした。
鬼の村で買ったレシピも売っている。行けない人には需要がありそうだ。ただ3万ウェドが最低ラインなのは、石貨を集める手間も入っているのだろう。
こうやってリストを眺めていると、鬼の村に行ける人がいることもわかるし、いろいろ考えさせられる。
そういえば卵は売ってないのかなと、絞込で検索してみた。
あまり期待していなかったけれど、3種類の卵が売っていた。
一つは森狼の卵で、100万ウェドが相場らしい。もう一つは色猫の卵で、強気の300万ウェドになっていた。
そしてもう一つ売っている卵は、驚くことにホワイトウルフの卵だった。
ただ価格が5万BPで、ウェドでの販売ではない。円で考えたら5万円だ。
ウェドが手に入ったから、これを使って銀級を引けば当選するかもしれない。
もちろん当選しないこともある。
でもここで5万円を払えば、確実に手にれることができるのだ。
「買っちゃえ」
躊躇する価格だけど、自分の背中を押すように声を出し、ホワイトウルフの卵を購入する。
『BPでの販売ですがよろしいですか?』の問いかけにも、迷うことなくはいと答えた。
リストからホワイトウルフの卵は消え、僕のインベントリに格納された。すぐに取り出したくなるけれど、ここで眺めるのは目立ちそうだ。
とくにこんな高いアイテムを買ったと知られて、絡まれるのは面倒くさい。
クランハウスで確認するために、僕はオークションハウスをでた。
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クランハウスに戻ると、何人からかメールが返ってきていた。誰も駄目だと言っていないので、全員がOKと言ったら、すぐに仮想契約卵部屋をランクアップしよう。
僕はソファに座ると、早速インベントリからホワイトウルフの卵を取り出した。その卵の表面には白い毛が生えていて、撫でると気持ちいい感じがする。
光沢もあって、高級感ただようインテリアにもなりそうだ。
とは言え、さすがに部屋に飾っておこうとは思わない。契約しないと意味がないし、インテリアには高すぎる。
無くさないようにすぐにインベントリにしまうと、契約したくてワクワクする。ただやっぱりホワイトウルフもどう戦うのかわからないので、契約は後になるだろう。
この短時間で3つも卵が増えてしまった。
どれも貴重なものだから、失敗する訳にはいかない。
全員のOKがもらえるまで時間がかかりそうなので、まずは魔物の卵屋へ行って、上位属性のエッセンスを100づつ買おう。
そしてここに戻って、のんびりログアウトして待つのだ。
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ゲームに戻ってくると、ログインしているのはパンクとゴリの二人だけだった。
だけど全員からメールが返ってきていた。しかも反対している人はいない。
僕は安心して、仮想契約卵部屋をランクアップする。
早速部屋に向かってみると、扉の上のプレートが、仮想契約卵部屋ランク2に変わっていた。
僕はラビィを召喚し、はやる気持ちを抑えながら、部屋の中へと入る。
少し部屋が広くなっていた。そして設備も大きくなっている。
ただ大きくなっただけな気もするけれど、それで性能が良くなっていれば文句はない。
僕はまず色猫の卵をセットした。
予想通りにステータスが見えるようになっている。とはいえ、能力値はまだ見られないようだ。
確認できるようになったのは、所持スキルの方だった。
色猫は通常のスキルに爪1。固有スキルに人化があった。しかもスキルの詳細がわかるようだ。
僕は人化が気になって、すぐに詳細を確認した。
『人化:人のように変化できる』となっている。人に変化ではなく、人のようにが微妙なところだ。猫が人のようなになるとすれば、猫又みたいな感じだろうか。
ただこの所持スキルから考えたら、近接系なのかもしれない。
属性のエッセンスしか投入できないので、全部をじっくり試していこう。
まずは烈火のエッセンスを100投入する。
すると全身が赤くなり、顔以外が炎上していた。火の粉が上がっているのも見えるし、どうやら烈火では赤が強くなり、炎上エフェクトも追加されるようだ。
しかもスキルを見たら、烈火魔法1も増えている。
この流れで行くならば、それぞれの上位属性の魔法を覚えてくれそうだ。
個数が影響する気がするので、烈火魔法を覚える最低のエッセンス数を調査する。
すると烈火のエッセンスを1投入するだけで、すぐに魔法を取得していた。
その状態で流水のエッセンスを1投入したら、烈火魔法が消えてしまった。しかも流水魔法も覚えていない。
なんとなく流水エッセンスを2にしたら、流水魔法が追加される。
「多いほうが有効になるのか……」
エリーの時は、火と水を取得していたのに、上位属性ではうまくいかないようだ。ただ魔物にもよるかもしれないし、妖精なら両方覚えられる可能性もあるかもしれない。
いくつかパターンを試していたら、烈火と暴風、流水と堅土ならば同時に取得してくれた。
個数は烈火と堅土を1づつでも魔法を取得するけれど、他のエッセンスが烈火と堅土の数を越えたら、魔法は消えてしまう。
流水は青いベールのエフェクトで、小魚が泳いでいたり跳ねたりしている。暴風は木の葉が舞う感じだった。堅土はシャイニー系のオーラで、ふわっとした感じで体の周りを漂っている。
上位の属性は見た目も特別な感じだ。
だからこそ、性能と見た目を両立させたい。
使い勝手も含めて、もっと検証していこう。