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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
147/176

147.NPCとのトラブル

 始まりの街へ行く間に、これまでどんなプレイをしていたのか聞いてみた。

 

 戦っていればそのうち契約できるだろうと、レベルが上がりにくくなったら次のゾーン、また次のゾーンへと進んでいくプレイだったようだ。

 

 召喚師は魔法使い系だからと棒がメイン装備で、土魔法と合わせての戦闘が得意らしい。

 

 そんな話をしながら、魔物の卵屋へ向かっていると、近くの通りで人垣ができているのに気がついた。

 

「人が集まっているようだな」

「魔物の卵屋の近くですね。ちょっと様子を見てきます」 

 

 ごめんなさいと言いながら人をかき分けると、通りに魔物の卵屋の主人と、見たことのあるプレイヤーが2人立っていた。

 

 一人はキックスと契約している召喚師で、もう一人は性格の悪い剣士だ。前にも会ったけれど、やっぱり名前は思い出せない。

 

「なにしてるんだろう」 

「魔物の卵屋でくじ引きをしたが、特賞が入っていなかったらしいぞ。だから懲らしめるんだとよ」 

 

 近くで見ていた他のプレイヤーが、僕の独り言に答えてくれた。

 

 くじ引きができるということは、あの召喚師は銀級以上なのだろう。でもいくら使ったのか知らないけれど、くじ引きの中に特賞が入っていないとか、どうやって判断したのか不思議になる。

 

「野次馬共よ聞け! こいつはくじ引きの中に、特賞を入れていなかった」

「そうだ。俺は50万ウェドも使ったんだ。これで出ないなんて、最初から入っていないとしか思えねぇ!」

 

 剣士のあとに、召喚師も話を補足していた。ようは50万ウェド分くじを引いたのに、特賞がでないのはおかしいって話らしい。

 

 そもそも確率なんだから、100万使っても出ない時は出ない。それを難癖をつけて、こんな事をするなんて、やっぱり関わりたくない連中のようだ。

 

「私は嘘はつかない。確率は低いが、ちゃんと特賞は入っている。その証拠に、すでに当選した人たちもいるんだ」

「うるせぇ。どうせそいつらの確率も操作してたんだろ。そうじゃなきゃ、俺様に当たらないはずはねぇ!」


 完全な言いがかりだった。悪役プレイなのと思うくらい、理不尽な話だ。

 

「もうこんなことをしないで帰ってくれ。これ以上こんなことを続けたら、始まりの街の商人を敵に回すことになるぞ」 

「ほう。この俺を脅迫しようと言うわけか。盗っ人猛々しいとはこのことだ」 

 

 どのことだとか思うけれど、そこを気にしている場合でもない。

 

 店主を助けようと思ったら、誰かに肩を掴まれた。

 

「あっ、ガゼルか。脅かさないでよ」

「悪い。っで、どんな感じだ」

「見たとおりさ」


 説明するのも大変なので、3人の方を指差した。

 

「よくわからんが、喧嘩だな」 

 

 それがわかれば十分だ。

 

「ふん。俺たちを脅迫したことを後悔するが良い」

「おっさん。くたばりやがれ」

「連撃! 連撃! 連撃ぃ!」

 

 僕が止めに行く暇もなく、剣士と召喚師は店主に攻撃をした。召喚師の杖は店主の頭を捉え、剣士の攻撃は首に向かっている。

 

 しっかりと命中しているのに、ダメージエフェクトがほとんど出ていない。

 

「痛いぞばかやろう!」 

 

 店主が召喚師へパンチ。そして剣士をキックした。胸に攻撃を受けた召喚師は、全身からダメージエフェクトを飛ばしながら姿を消した。

 

 剣士が左腕に蹴りを受けたのに、衝撃が凄いのか、全身から多角形の板を飛ばしている。

 

「一撃で倒した?」 

「二度と近づくな」 

 

 二人が消えた空間へ向けて、店主が声を残すと、そのまま店へと戻っていく。

 

 どうやらNPCに攻撃はできるけれど、予想以上に強いらしい。

 

「ドラゴンでも倒せそうだよね」 

「俺が前にやっていたゲームでは、人には強くても、魔物には弱いって言う設定だったな」 


 そういう設定もあるだろう。このゲームの設定がどうであれ、友好度はあるから、あいつらはこの街では買い物できないかもしれない。

 

 でも僕が心配するところではない。

 

「なんか怖かったけど、今の人が魔物の卵屋の店主だよ」 

「強くていいじゃないか。早速行こう」 

 

 ガゼルはスタスタと歩いていく。その勢いのせいか、思わず僕もついていった。

 

--------------------------


 店の中に変わりはなく。店主もさっき騒動があったなどとは、感じさせない普通さだった。

 

「いらっしゃい」

「ガゼルに卵を売って欲しいんだ」


 店内を見回しているガゼルに変わって、僕が店主に話しかけた。

 

「初めてだね。ランクは黒鉄だから、ヘビとトカゲの卵が買えるよ」

「全部売ってくれ」

 

 ガゼルは豪快に2つとも買うらしい。鉱石迷宮まで行けるレベルなのだから、お金もあるだろうし、本人のレベルも高そうだ。

 

「っと、くじ引きはできるか?」 

「それは銀級からになるな。まずは魔物を進化させ、銅級を目指すと良いよ。おっと、進化に成功すれば銀級になれるな」

 

 銅から銀は、レベルを上げればなれるから、ガゼルはレベルの条件は満たしているということだ。

 

 とはいえ、難しいのは進化のほうだ。卵をドロップしない限り、これを満たすことはできない。

 

「そうだ。契約する前に……」


 エッセンスの話をしようと思ったら、目の前にヘビとトカゲが現れた。どうやらエッセンスを使わずに、そのまま契約したらしい。

 

「やっと初召喚だ。ラル。ありがとよ!」 

「どういたしまして」


 契約時にエッセンスをどうするかは、ちゃんと知らされるようになっている。その上で使用していないのは、ガゼルの意思なのだから、そこになにか言う必要もない。

 

「ラル。フレンド登録してくれ」 

「いいよ」 

 

 特に断る理由もないので、そのままフレンド登録する。

 

「それじゃ、召喚師っぽく狩りをしてくるぜ。またな」

「またね」


 ガゼルは意気揚々と店を出ていった。

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