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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
146/176

146.おじさん召喚師

 念のためと言うことで、ラビィ、ルード、エリーを召喚した。駆け抜ける感じで戦闘するので、ダメージはほとんど受けないはずだけれど、事故には注意しておきたい。

 

「ガァァァモォォォ!」


 ルードが雄叫びをあげ、岩石人形が起き上がってくる。

 

 ハイズは小走りで、まだ距離があるにも関わらず、槍をすっと突き出した。

 

「アクアバレット!」

 

 薄青い槍の先端から、水の弾が飛び出した。魔法ならば水の軌跡を残して飛んでいくが、あまりに早いせいか、槍の先端と岩石人形の命中箇所が、水のチューブで結ばれたように見える。

 

 迸る水とダメージエフェクト。綺麗だなと思っている内に、岩石人形は姿を消した。

 

 しばらく会わない内に、ハイズもレベルが上っているようだ。

 

「どうよ。これが異界迷宮で手に入れた、水の槍の力よ」


 異界迷宮という言葉に体が震える。以前にマーミンから聞いたのは、ロッカテルナ湖のクエストを進めれば、そのうち分かるというものだった。

 

「異界迷宮に行ったんだね。ハイズってレベルいくつなの?」

「女性にレベルを聞くなんて……まあいいわ。レベル37よ」

 

 新規プレイヤーで、前までは初心者って感じだったのに、僕よりも高くなっていた。ロッカテルナ湖レベルも越えているし、異界迷宮にも行けるレベルなのだろう。

 

「僕より高いね。ムーンスピア」 

「バーガーオンラインで頑張ったからね。シュシュッ」 

 

 経験値上昇を使用して戦えば、レベルは驚くほど上がっていく。僕も食べようと思ったこともあるけれど、レアドロップのために周回したりするから、早くレベルが上っても周回はやめたりしない。

 

 レベルが上っても周回を止めないなら、バーガーを食べても意味がない気がするのだ。

 

「ムーンボール。バーガーは凄いね」

「装備も良くなったし、絶好調よ」


 バーガーと装備は直接関係ないけれど、筋力などの条件をクリアするのには有効だろう。黒騎士の槍でなくても、水の槍を手に入れて、満足している感じだ。

 

 剣の時はシャシャだったのに、槍になってシュシュッになっているのも面白い。

 

>>>>>>>

イベントポイントボックスR×1 を手に入れました

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「おっ、レアボックスだ!」

「3万ウェドおめでとー」


 ハイズの話によると、売れにくいけど3万になるらしい。でも僕は、今のところ売る気はない。

 

「どんどん行くわよ」 

 

 レアがドロップしたことで、僕のミニ浴衣の話はどうでもよくなったらしく、ハイズのペースが上がっていく。

 

 近くにいる岩石人形を倒し切ると、結構な速さで洞窟を進んでいく。

 

「いちおうルードを先頭でよろしく」 

「早い者勝ちよ!」 

 

 パーティを組んでいるのだから、誰が倒してもドロップ判定は発生する。早くても遅くても関係ないけれど、気分の問題ってやつかもしれない。

 

 もしくは最後にダメージを与えたプレイヤーに、良いボックスがドロップするとか、都市伝説があるのだろう。

 

 ジンクスは気になるけれど、今回に限っては全然気にならなかった。

 

「了解。早い者勝ちだね! ムーンスピア」 

 

 ハイズが飛び込んで攻撃しようとしたターゲットへ、先に魔法を撃ち込んだ。


--------------------------


 競い合っていたせいか、あっという間に10周が終わった。ずっと走り続けていたせいか、久しぶりにはぁはぁと呼吸が乱れていた。

 

「やりきった。楽しかったね」

「なかなかやるじゃない」


 僕らは洞窟の前に座り込み、お互いを称えあっていた。

 

「今回は絶好調だったわ。ただレアが2つもドロップしたのはいいけれど、売れにくいのよね」


 3万ウェドでコモンボックスを30個買えば、確実に30ポイントが手に入る。レアボックスは10~50なので、確実に得をするかはわからない。

 

 考え方次第だけれど、イベント1位を目指す人は、どれでも買いそうな気がした。

 

「僕のコモン30個と交換しようか?」 

「えっ、なんで? 価値は一緒だけど、売れるのに時間がかかるのよ」


 今のところ売る気はないし、コモンボックス30個と交換なら、それほど悪くも感じない。

 

 高いポイントが出ればラッキーだし、トップを目指しているわけでもないから、低くてもあちゃって思うくらいでダメージはない。

 

「僕はクランに入っているから、箱は売らずにしばらく保持している予定なんだ」 

「ラルってクランに入ってたんだ。全然そういうイメージがなかったわ」


 普段からレアハントとか言っているし、召喚師でもあるから、仲間とプレイを想像しにくいのかもしれない。

 

「そろそろクランも考えていたんだけど、ラルのクランってどんな感じなの?」 


 僕はレアハンターズのことを、ハイズに全部説明する。

 

「へー。まさかのクランリーダーなのね。しかもすごい自由なんだ」 

「クランには入りたいけど、縛られたくないって人にはいい感じさ。勧誘がうざいって言う人も歓迎するよ」


 ただうちのクランの弱点といえば、目標がないことかもしれない。施設を充実させようとかはあるけれど、そのためのノルマなどはないので、いつ達成するかのスケジュールなどはないのだ。

 

「たまに誘われたりもするのだけど、まだこれってクランがないのよね。今すぐじゃなくても、私が入れてって言ったら、入れてくれる?」 

「来るもの拒まず、去るもの追わずさ。他人に変な迷惑をかけないなら、誰でもウェルカムだよ」

「ありがとう。その時はよろしくね」

 

 そんな感じで話がまとまると、ハイズのレアボックス2個と、コモンボックス60個を交換した。

 

「さっそくオークションで売ってくるわ」 

「ああ。またね」 

「またよろしくね」 


 ハイズはパーティを抜けると、ポータルで消えていった。それを見送った僕は、呼吸をしっかりと整えた後で、ゆっくりと立ち上がる。

 

 クランハウスに戻ろうかとしたところで、目の前に男が現れた。

 

「ちくしょう! なんで仲間にならないんだ!」 

 

 男はがっくりと膝をつき、両手を地面に叩きつけて悔しがっていた。言葉から察するに、召喚師な気がする。

 

 たまたま迷宮の出口にいたせいで、すぐ側に男が出現した。これも何かの縁な気がするし、僕は男に声をかけてみる。

 

「こんにちは。召喚師のかたですか?」 

「ん? ああ。そうなんだ。もしかして君もか?」


 男はボサボサの長髪なのに、髭は生やさずにツルンとした感じの顔をしていた。薄汚れたローブを着ているところから、仙人っぽいロールプレイかと思ったのに、この丸っこいきれいな顔はいただけない。

 

 でも自分の趣味を押しつける気はないし、仙人プレイとも限らない。僕は話を進めていく。

 

「はい。仲間にならないと言うと、卵が手に入らないってことですか?」 

「卵? 魔物を倒したり弱らせたりしたら、仲間になりたそうにしてくれるんじゃないのか?」 

 

 さっきから全て質問されているが、そのおかげで男がどういうタイプかわかってきた。


 僕は攻略サイトなどでじっくりとは調べずに、初見で楽しむタイプだけれど、この人は攻略サイトどころか、説明書すら読まないタイプなのだ。

 

 だから召喚師が卵をドロップさせて、それと契約することすら知らない。

 

 家電とかならわからなくもないけれど、ゲームでそれをやると、普通に得るべき情報まで、見落とすことになってしまう。

 

「召喚師は魔物を倒して卵をドロップさせます。そしてその卵と契約を結ぶことで、召喚が可能になるんです」

「そうなのか。だが卵なんて一度もドロップしていない。召喚師とか言いながら、全然召喚できないじゃないか」


 なんだか懐かしく思える文句だ。そういう意見が運営に寄せられて、魔物の卵屋が実装された。

 

「始まりの街で卵が買えます。よかったら案内しましょうか?」 

「ありがたい! ぜひ一緒に行ってくれ。そうだ。俺はガゼル。よろしくな」 

「僕はラルです。よろしくおねがいします」 

 

 僕らは握手を交わすと、ポータルで始まりの街へ向かった。

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