144.クランイベント開始
鉱山迷宮に入ってから、サクラとルードとエリーを召喚する。せっかくゴリがいるのだから、普段はできない布陣にした。
「ルード。よろしくね」
ルードは僕の方をチラッと見ると、槍を構えて直進する。ルードの侵入に反応して、周りの岩が岩石人形へと変化する。
「あれっ」
チラッとドロップリストを見たら、コモン、アンコモン、レア、ウルトラレアの全てに『イベントポイントボックス』が追加されていた。
ボックスにはドロップ率の区分があるので、レアなものほどポイントが高いのかもしれない。
「ガァァァモォォォ!」
ルードの咆哮に3体の岩石人形が集まってくる。
サクラは2刀で岩石人形を斬りつけ、気持ちよくダメージエフェクトを飛ばしている。
エリーは水魔法に火魔法と、連続で魔法を撃ち込んでいた。
「いい感じだね」
ルードはナイトメアのボス戦での実績があるし、ハードならば余裕だろう。サクラとエリーの攻撃力も、ここなら十分に力を発揮してくれる。
「うぉぉぉぉ。我が神よ。ルードに癒やしを! ヒールでゴンス」
ゴリも余裕はあるみたいだ。でもナイトメアに行けるほど、僕らは強くないだろう。
ナイトメアを気楽に攻略するためには、爆裂魔法などが必要になる。
それは一度体験したので、僕はしっかりと理解していた。
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イベントポイントボックスUC×1 を手に入れました
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最初の一体目で、アンコモンのボックスを手に入れた。戦闘中だけど、気になって箱の説明を読んでしまう。
「2~5ポイント手に入る。ランダムなんだね」
「コモンのボックスは1固定でゴンス」
せっかくなので開けてみたら、ポイントは3増えた。ゴリと合わせて4ポイントだけど、イベントのランキングリストのトップは、300ポイントを越えていたはずだ。
「努力と運でポイントたっぷりって感じだね。ムーンスピア」
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イベントポイントボックスUC×1 を手に入れました
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3体しか倒していないのに、まさかのアンコモンが2連続だった。久しぶりに僕は恵まれている気がする。
「ウルトラレアのボックスなら、一気に大逆転でゴンス」
根拠はなさそうだけれど、かなりのポイントが予想できる。そもそもウルトラレアとか言っておきながら、100ポイント程度しか入らないならば、嬉しくなさすぎてつまらない。
でも多すぎると、ウルトラレアをドロップしなければ勝てないとかになりそうだし、運営もさじ加減が難しいところだろう。
卵と同じくらいの難度なのだから、ポコポコドロップしてもびっくりする。
「ちょっと余裕っぽいけど、範囲系が少ないからまとめて狩りもできないし、落ち着いて進んでいこう」
「任せるでゴンス」
さて次へ行こうとした時、ゴリがなんだか不思議そうな顔でこっちを見ていた。
「どうかしたの?」
「いまさらでゴンスが、なんでミニ浴衣を着てるでゴンス?」
ハードの迷宮に挑む格好としては、確かに不適格に見えるだろう。ミニ浴衣にイモキンの王冠、イモキンマント。モコモコの手甲もいまだに装備しているし、冒険者らしさには自分でも自信がなくなる。
「ラズベリーが裁縫でつくってくれたんだ。こうみえて、前の装備よりも防御力が高いんだよ」
「いくつでゴンスか?」
「7だよ」
鉱山迷宮が静かになった。どこかに空いた隙間から、風が鳴る音だけが聞こえてくる。
「防御力なんて関係ねぇでゴンスな」
「当たらなければいいのさって言いたいけど、そのうち良い付与が見つかったら頑張るよ」
ナイトメアで魔法を浴びた割には、なんとか耐えることができた。もしあれが物理攻撃だったなら、僕は負けていたかもしれない。
そんな事にならないように、これからは防具にも気を使っていこう。
なによりサクラの着物が目的なのだ。今はメイド装備の性能が良くて、着替えが難しい気がするけれど、最終的にはなんとかしたい。
「そろそろ行くでゴンス」
「そうだね。ルードよろしく」
僕らはルードを先頭に、なんども来た迷宮を歩いて行く。
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ハードはなんの問題もなくクリアできた。せっかくなので限界まで周回し、経験値とイベントポイントを溜めていく。
一度だけレアのボックスがドロップしたけれど、手に入るのは10~50ポイントと、かなりの差が存在した。
ボックスをドロップする運があっても、高ポイントとは限らないと言うわけだ。
そして僕が開いた時は、17ポイントを手に入れた。期待値は30なので、かなりダメダメだと言える。
ゴリが休憩でログアウトしていったので、僕はクランハウスのエントランスで、ソファに座ってだらけていた。
イベントのランキングを確認すると、すでにトップは1300を越えていた。
僕らのクランは533ポイントなので、稼ぐスピードも負けている。トップ目指してってわけでもないから気にしないけれど、トップを取るというのは難しいものなのだ。
「もう少しでロッカテルナ湖レベルなんだよな」
あのゾーンを攻略目標にしてから、結構な時間が経過している。ラズベリーはバーガーを食べてレベル上げしたみたいだから、僕と同じかそれ以上になっているはずだ。
どこかでレベル上げを兼ねて、イベントのポイントを貯めてもいいし、直接クランポイントになるのだから、どんどん戦っておきたい。
どうしたものかと腕を組み、ソファにぐっと体を沈めた。