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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
142/176

142.ナイトメアのボス

 最初の部屋に戻ると、すでにみんながそこにいた。

 

「ラル! よけて」

「えっ?」


 びっくりしたけれど、僕はさっと右へ動いた。

 

 マーミンやラズベリーが、あれって言う感じで動きを止める。

 

「どうかしたの?」

「レバーを引いたら、魔物が出現したでしょ」


 どうやら魔物から逃げてきたと思ったらしい。

 

「もう倒したよ。危なかったけどね」

「ポッポウ」


 体から痛みが消えていく。ポンちゃんがヒールをかけてくれたのだ。

 

「よくやるわね。私たちはここまで逃げてきて、みんなで倒したわよ」

 

 その手があったかと衝撃が走る。でも扉も開いていないかもしれないし、全然思いつかなかった。

 

「メッセージを送ったけれど、気がつかなかったのね」


 ログを見ると、たしかにメッセージがあった。レバーを引けば扉は開くから、中央で迎え撃とうみたいな内容だ。

 

「いきなりでびっくりして、全然気がつかなかったよ」

「無事でよかったわ」

 

 全員がレバーを引いて無事だった。とにかく最高の結果だ。

 

「この豪華な扉は開きそうかな?」

「触ったらワープするボス部屋らしいわ」


 定番のシステムだ。リーダーが扉に触れると、ボス部屋に転送される。


「ボス前に面倒な戦闘でござったが、これもナイトメアゆえでござるな」


 おそらくボスも強いだろう。でも今の僕らならば、きっと倒すことができるはずだ。

 

「準備はいい?」

「オーケー」

「はい」


 赤さんのうなずきを確認してから、僕は豪華な扉に触れた。


--------------------------


 ボスの部屋に転移すると、イベントが始まったらしく、体が動かなかった。

 

 大きな広間の奥に、大きめの邪妖精が浮かんでいる。なにがはじまるかと見ていたら、床に7つの魔法陣が浮かび、そこに3メートルくらいのタウロスが出現した。

 

「護衛の7体と邪妖精だ。厳しい戦いになりそうだね」

「開幕で魔法を叩き込んであげるわ」


 マーミンはいつでも準備完了って感じだった。僕もそろそろかと思っていたら、邪妖精の周りに、赤黒い球がふわふわと浮かび始める。


「こっちは動けないのに、ずるいです!」


 ラズベリーの文句もよく分かる。イベント中にダメージを受けるのは、かなりフェアではない気がした。だけど赤黒い球は、僕らに飛んで来ることはなく、召喚されたタウロスの方へと向かっていった。

 

 タウロスは声を上げながら、その赤黒い球へと吸い込まれていく。

 

「何が起こっているのでござる」

 

 タウロスを吸い込み終えても、まだふわふわと浮かぶ赤黒い球。それらが邪妖精へと動き出すと、口の中へと消えていく。

 

「まさか……タウロスの能力を食べたのか!」 

 

 邪妖精の羽が小さくなっていき、体は大きくなっていく。不気味に変化していく邪妖精は、やがて体は細くみえるけれど、筋肉がムキムキな、3メートルほどの巨人に変化した。

 

「バランス悪そう。手も長いわ」


 ひょろっと背の高い巨人で、直立した状態で手首が膝辺りに届くほどに、両手が長くなっている。戦いの間合いは取りにくい気がするけれど、勝手に倒れて転びそうなデザインだ。

 

「ヒュロォォォ」 

 

 ボスは妙な叫びを上げる。名前を確認したら『妖魔人』になっている。邪妖精とタウロスが合わさることで、名前は強そうになっている。

 

「ガァァァモォォォ!」

「バーストアローでござる」 

「ファイアショット!」


 ルードがいち早く雄叫びを上げて注目を浴びる。ほぼ同時に赤さんとマーミンが攻撃を開始した。

 

 もちろん僕はドロップリストを確認する。

 

 コモンに『魔人の爪』、アンコモンに『鉱石のレシピ』、レアに『流星の弓のレシピ』、ウルトラレアにはなにもなかった。

 

 赤さんには流星の弓のレシピは、当たりな気がする。罠が多い迷宮だけに、斥候にプラスなドロップになっているのかもしれない。

 

 でも誰にでもプラスなのは鉱石のレシピだろう。これが手に入れば、修理できないけど強いとかではなく、普通に強い装備が作成できるはずだ。

 

「ウィンドショット」 

「ポッポウ」 

 

 妖魔人は長い手を鞭のようにして、ルードに攻撃を加えていた。バチーンって感じで当たる腕は、かなり痛そうに見える。

 

 でもこの状況が維持できるなら、はっきり言って余裕だろう。

 

「演出はすごかったけど、思ったほどでもないわね」 


 マーミンがそう言うと、妖魔人は両手を左右に広げた。

 

「横に飛ぶでござる!」 

 

 なんでって思う前に、僕の体は反応していた。赤さんは無駄な事をさせるタイプではない。そこには必ず意味がある。

 

 ゴロッと体を回転させて起き上がると、空中に半透明のタウロスが浮いていた。それは構えていた大きな斧を、さっきまで僕がいた場所へと振り下ろす。

 

 ガキーンと石と斧がぶつかりあう音を響かせ、タウロスはスゥッと姿を消した。

 

「なによこれ!」 

「怖すぎです」 

 

 どうやらパーティメンバーへの全体攻撃みたいだ。さっき吸収したタウロスを、亡霊なのか幻影なのか、とにかく攻撃させる技らしい。

 

「両手を広げるのが、出現タイミングのようでござる」 

「了解」 

 

 あんな攻撃があるのなら、注目だけ気にして攻撃ってわけにもいかない。

 

「ポッポウ」 

 

 ルードは妖魔人の攻撃でも、一気に倒されることはなさそうだ。唯一避けていなかったのに、ポンちゃんのヒールだけで耐えている。

 

「ムーンボール」 

 

 そう状況を判断すると、ちょっと戦闘が長引くだけで、安定して倒せそうだと安心する。

 

 そしたらそれをあざ笑うかのように、再び7つの魔法陣が床に浮かんだ。

 

「これがナイトメア。シークレットダンジョンのナイトメアなんだ」 

 

 タウロスが7体現れた。運がいいのか悪いのか、その7体は再び赤黒い球の中に吸収され、妖魔人がそれを飲み込んだ。

 

 妖魔人の細い体が、さっきよりも太くなる。

 

「攻撃力と防御力が上昇したかもでござるな」 

「早く倒さないと、どんどん強化されるパターンかもね」 

「強化するならしなさいよ。この伝説の魔女が、消し炭にしてあげるわ。ファイアランス」 


 マーミンは元気だった。僕の予想では攻撃の厚みがなくなっていき、長期戦になって敗北する。この状況を打破する何かを掴まない限り、高確率でそうなってしまうだろう。

 

「まずはこの戦況を維持だ。ルードへのヒールを絶やさないで」 

「はい」 

 

 そこへ妖魔人が両手を開く。さっと横にジャンプして確認したが、僕の背後に半透明のタウロスはいなかった。赤さんもマーミンも、なんだか戸惑っている。

 

「げぇ、集まってる!」 

 

 ポンちゃんが7体の半透明のタウロスに囲まれてしまったようだ。体を透過して見える先に、ポンちゃんの白い姿が見えた。

 

 ポンちゃんは逃げ出そうと動いているけれど、半透明でも体をすり抜けていくことはできないようだ。

 

「ムーンブラスト!」


 白っぽい半透明のタウロスには当たらなかったけれど、薄っすらと青いタウロスには魔法が命中した。

 

 このことから考えると、半透明のタウロスを通り抜けることは無理なくせに、攻撃を当てることもできないってことだ。

 

 ただし、薄っすらと青いタウロスにだけは攻撃できる。

 

「バーンアローでござる」 

「アクアランス」

 

 青いタウロスを倒せば、ポンちゃんを救えるはずだと言う前に、赤さんもマーミンも気がついたようだ。魔法と矢は正確に命中し、多角形の板を撒き散らしている。

 

 なのに半透明のタウロスたちは、まだ斧を振り上げていた。急がなければ間に合いそうにない。

 

「ムーンスピア!」

 

 僕の魔法は命中したが、斧は振り下ろされてしまった。

 

「パゥ」 

「ああっ、ポンちゃん!」 

 

 スゥッと消えるタウロスと一緒に、ポンちゃんが姿を消した。

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