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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
141/176

141.試練の間

 地下10階まで探索し、ほぼマップを埋めることができた。残りは目の前にある扉の先だけで、おそらくボスがいるだろう。

 

「ナイトメアは無駄に長いわね」

「魔物は1階から変わらないし、罠もたくさんで面倒だったね」

 

 ここまで踏破した感想がこれだった。赤さんがいなければ到着できなかっただろうし、火力がなければ、いくら時間があっても足りなくなる。

 

 これでドロップが良くなければ、もう一度やろうとは思わない。と言いたいところだけど、経験値はいい感じなので、僕は32レベルになっていた。

 

 クリアできる条件が整うならば、レベル上げには悪くない迷宮だ。

 

「試練の間と書かれているのが、少し気になるでござる」 

「ボスまではまだ先って言うパターンだね。とにかく入ってみようか」 

「オーケー」 

 

 僕らは試練の間と書かれた扉を開け、中に入った。

 

 そこは長方形の部屋になっており、正面に3つ、左右の壁に2つづつの扉があった。その中でも正面にある扉だけ大きく豪華になっている。

 

「6つの部屋のレバーを同時に引けば、この豪華な扉が開くみたいね」 

 

 マーミンが豪華な扉に書かれたメッセージを読んだ。6つの部屋にあるレバーを同時に引くということは、パーティメンバー全員が、バラバラに部屋に入るということだ。

 

「それが試練でござるか?」 

「レバーだけで済むわけないよね」 

 

 パーティを分裂させての襲撃。おそらくそんなところだろう。

 

「メッセージ機能を使って合図するから、それでレバーを引くことにしない?」

「それでいいけど、誰がどの部屋に行くわけ?」 

 

 何が出てくるかわからないけれど、出来る限り有利な状況になってほしい。扉に赤とか青とか色がついていて、何か違いがあるのは予想できるけれど、それがどういう意味を持つのかは、事前にわかるはずもない。

 

「こういうものは感覚でいいのでござる」 

 

 そう言うと赤さんは、赤い扉に入っていった。

 

 赤忍者だし、赤さんがその扉へ行くのは当然かもしれない。

 

「好きな色でいいんじゃない。ルードは黄色で、僕は緑にしようかな」 

「私は炎の赤が好きだけど、今回はオレンジにしてあげるわ」 

「ポンちゃんは毛の色と同じ白で、私は青にします」 

 

 これで全員の色が決まった。

 

赤忍者:一度入ると出られないでござる 

 

「っと、出られないみたいだけど、みんながんばろうね」 

「伝説の魔女に不可能はないわ」 

「はい」 

 

 それぞれのメンバーが扉の中へと入るのを見届けると、僕は最後に緑の扉を開けた。

  

--------------------------


 下りの通路が10メートルくらい続いた先に、部屋のような物が見えた。近づくとわかったけれど、そこは正方形の部屋で、レバーが床から伸びている。

 

 これを引けば、中央の扉が開くはずだ。

 

「識別によると罠はない」 

 

 少し部屋が広いのは、戦闘があるからかもしれない。何が来ても大丈夫なように、心の準備をしながら、僕はレバーに手をかけた。

 

「触るだけでは何も起きないらしいね」 

 

 一人でいる不安から、なんだか喋らずにはいられなくなる。

 

マーミン:少し広めの部屋でレバーだけだわ。こっちはいつでも引けるわよ 

ラズベリー:こちらも同じ部屋です。準備は万全です。あっ、ポンちゃんも大丈夫です

赤忍者:いつでもいいでござるよ

ラル:了解。僕が行くよー、て言ったら、はいのタイミングで引いてね

ラル:今回はテストね。行くよー


 僕は少しだけ間をとった。

 

ラル:はい。って言う感じだよ

マーミン:オーケー 

赤忍者:了解でござる

ラズベリー:はい

 

 どうやらタイミングは大丈夫らしい。あとはタイミングよく、レバーを引くだけだ。

 

 僕はふぅっと息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。

 

 タイミングがずれたらどうなるとか、今は考えてはならない。

 

ラル:行くよー 

ラル:はい 

 

 僕は思い切りレバーを引いた。ガクンと言う感じで、レバーが倒れてくれた。

 

「よし。これで正面の扉が開くはずだ」 

 

 僕が部屋を出ようと振り返ったら、いつのまにかそこに邪妖精が浮かんでいた。

 

「瞬速剣!」

 

 心構えはできていた。魔物が襲ってくることも予想していた。でもこの先制攻撃で、邪妖精を倒すことはできなかった。

 

「ウキャニャ!」 

「ムーンボール!」

 

 邪妖精が風の魔法を撃ってきた。同時に僕も魔法を放ったけれど、それでもまだ倒せない。

 

 そして風の魔法が、僕のお腹に直撃する。

 

 バスケットボールをお腹に受けたくらいの痛みが、僕の体を駆け巡った。


「なんでこんなに硬いって、邪妖精長か!」 

 

 確認したら、まさかの邪妖精長だった。ボスで見たときよりも小さかったので、ただの邪妖精だと勘違いしていた。

 

「くっ、ムーンスピア!」 

 

 無属性の魔法は、いい感じで多角形の板を飛び散らせた。だが耐久力が段違いで、まだまだ元気な感じがする。

 

 さらに近づいて近接するか、魔法を主体に戦うか、どっちにするかと迷った瞬間、邪妖精長から強烈な風魔法が飛んできた。

 

「ぶふぇ」 

 

 部屋中に吹き荒れる風の範囲魔法だった。さっきの魔法はお腹から広がるダメージだったけれど、今回は全身にビリビリとくる痛さだった。

 

 このゲームをはじめて、ここまでダメージを受けた記憶がない。大抵の場合は避けることができたし、何よりラビィがそばに居てくれた。

 

 だからダメージを受けても、すぐに回復してもらえていた。

 

 でも僕一人では、このダメージをどうにもできない。できることがあるとすれば、とにかく攻撃して、やられる前にやるだけだ。

 

「瞬速剣!」 

 

 絶対に外さない一撃を、邪妖精長に食らわせる。ダメージエフェクトは飛んでいるけれど、倒すまでには届かない。

 

「ムーンシールド!」 

「ウキャニャ!」


 攻撃パターンの予想が当たり、風魔法を無属性の盾で防いだ。でもさっきのパターンならば、逃げる場所がないほどに、風の魔法が吹き荒れる。

 

「やるしかない!」 

 

 僕は邪妖精長に近接し、思い切り剣を振るう。瞬速剣を取得した時を思い出し、とにかく攻撃し続けた。

 

 だからといって、邪妖精長が攻撃するまでの間に、何十回も攻撃できるわけではない。残念ながら、倒し切ることはできなかった。

 

「だけど逃げる!」 

 

 僕はふわふわ浮いている邪妖精長の下へとしゃがみこんだ。

 

 魔法は平気で仲間に命中する。自分で自分に魔法を撃てば、それもダメージになる仕様だ。なのに邪妖精長は、さっきの魔法でダメージを受けていない。

 

 とすればそこが安全地帯だというのは、誰がみても明らかだろう。

 

 部屋中に風が吹き荒れるけれど、思った通りここは安全地帯だった。ふと上を見ると、弱点マークが灯っている。

 

「魔法を使っている間が弱点だ。ムーンスピア! ついでに連続斬りだ!」 

 

 技はないけれど、魔法を撃ち込んだ後に、なんども剣で突き刺した。連続斬りとか言ったけれど、剣を振る余裕はない。

 

 弱点のおかげで、ダメージエフェクトも大発生だ。キラキラを浴びながら、僕はとにかく剣を何度も突き刺した。

 

「おっ、手応えが消えた」

 

 ダメージエフェクトが薄くなると、邪妖精長も姿を消していた。

 

「よっし。討伐完了だ!」 

 

 部屋を見渡しても、邪妖精長は存在しない。少し体が痛むので、仲間と合流するために、僕は通路へと歩きだす。

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