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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
140/176

140.マーミンの究極魔法

 ルードがブレイクを使い、鶏頭人へと肉薄する。ダメージエフェクトの飛び散り具合から、いい感じに攻撃できているのがわかった。

 

「どんどん攻撃でござる」 


 いつものように弓を構え、赤さんは矢を放つ。鶏頭人が行動する前に、すでに二本も命中させていた。

 

「ムーンスピア」 


 僕の魔法と鶏頭人の攻撃は同時だった。鶏頭人に魔法は直撃したけれど、負けじとルードにパンチを決めている。

 

「しまった。ヒーラーがいないよ!」 

「任せてください」


 ラズベリーがそう言った。知らないうちに、癒魔法を取得したのかもしれない。

 

「ポッポウ」

 

 とか思ったら、ポンちゃんがルードを回復してくれた。ラズベリーのパーティでは、ポンちゃんが回復役らしい。

 

 そう言えば僕らはラビィがヒーラーだし、うさぎ系は癒魔法を覚えやすいのかもしれない。

 

「よかった。いいぞポンちゃん」 

「あらゆる癒やしのポンちゃんです」 

 

 おそらく見た目でも癒やされますよという意味を込めて、ラズベリーは言っているのだろう。

 

 ふわふわとした毛に埋もれたい人や、可愛らしいもの好きな人は、きっとポンちゃんで癒やされるはずだ。

 

「ファイアショット!」 

 

 高火力のマーミンの魔法が飛んで行く。このパーティのダメージディーラーは、マーミンと赤さんで間違いはない。

 

 5つの赤い光が直撃しながらも、鶏頭人はまだまだ元気に見える。ナイトメアのボス系だから、おそらくかなり強いはずだ。

 

「消えた?」

「あそこよ。少し離れた所に転移したみたい」

 

 鶏頭人が両手を上げると、いきなり黄色く光りだす。

 

「むむっ、全員ルード殿のところへ集まるでござる」 

 

 よくわからないけれど、赤さんの言葉に操られるように、僕らはルードのもとへ集まった。その瞬間、天井から稲妻が落ちてくる。

 

「ポポポゥ」 

 

 低周波マッサージ機を全身につけられたような、微妙な痛みとくすぐったさが体の中を駆け巡った。それと同時に、全てが気持ちよく癒やされていく。

 

「ポンちゃんのヒールサークルだ。だから集まれって言ったんだね」


 稲妻は部屋中に広がっていた。赤さんのアドバイスがなければ、バラバラにヒールで大変だったはずだ。


「次はルード殿のブレイクに期待でござる」


 最初にブレイクで近づいたから、リキャストタイムのせいで、使用することができなかった。でもこういう攻撃がくるとわかれば、次はルードが止めてくれるはずだ。

 

「ムーンボール」 

「ウィンドショット」 


 トルネードをのぞいて、おそらくはラズベリーの最強の風魔法だ。僕の魔法とともに、いい感じで多角形の板を飛ばした。

 

「さすがナイトメアって感じかしら。でも私の奥義で倒せない魔物はいない」

「マーミンの奥義?」


 フッと笑いながら、マーミンは右手を突き上げた。

 

「30秒よ。30秒だけ、私を守って」 

「いきなりかよ! ルード。範囲攻撃に気をつけてくれ」


 何をするのかわからないけれど、マーミンは胸の前で両手を組んだ。まるで何かの儀式のように、様々な形で組んでいく。

 

「魔法使いがレベル30で取得できる、オリジナル魔法みたいです」 

「そんなのあるの?」

「規定ポイントを消費して、魔法が作成できるらしいです」


 ラズベリーの説明で、マーミンの行動が理解できた。そのオリジナル魔法を発動させるために、30秒の時間が必要なのだろう。

 

「全ては炎より生まれ、炎によって滅んでいく。地獄に燃え盛る黒き火よ。天空にありし白き火よ。合わさりて炎となれ!」 

 

 マーミンが詠唱を続けている。普通の魔法に詠唱はいらないから、特別な魔法だという雰囲気に、威力も期待してしまう。

 

「鶏頭人に集中するでござる」 


 赤さんはそう言いながら、いくつも矢を放った。僕はついついマーミンにみとれ、攻撃するのを忘れていた。

 

「ムーンアップ!」


 さらに威力をあげるために、僕はマーミンに補助魔法をかける。

 

「ムーンボール」 


 そして魔法を飛ばし、少しづつ鶏頭人を削っていく。


「来たでござるよ」


 不意に鶏頭人が姿を消した。

 

「あっちでござる!」 


 その声と同時に、ルードがブレイクを仕掛ける。ワープしたんじゃないかってくらいに高速移動したルードの槍が、鶏頭人に命中して技をキャンセルさせた。

 

「いいぞ。ルード!」

「闇の冥王、地の覇王。天の皇帝、光の女王。あらゆる火の力もて、全てを滅する炎を……」


 長い詠唱が続いている。途中聞けてないけれど、きっと複雑な詠唱なのだろう。

 

「ムーンブラスト」 

「ポッポウ」

 

 ポンちゃんのヒールもいい感じだし、ルードの硬さも十分だ。マーミンを守りきって魔法が発動すれば、それで決着がつくだろう。

 

「トルネード!」 

 

 ラズベリーの切り札とも言えるトルネード。ルードを範囲に入れないように、うまく位置を調整していた。

 

「連続射ちでござる」 

 

 さり気ない感じだけれど、矢が三本も飛んでいく。しかもそれが鶏頭人に命中するたびに、激しく多角形の板を飛ばしていた。

 

 赤さん得意の爆裂属性の矢みたいだ。

 

「行きます。ウィンドショット!」 

 

 さらにラズベリーが魔法を飛ばす。そこへルードがサークルアタックを重ね、しかも黒騎士の槍の力を開放する。

 

「うげぇ、見てるだけで痛いよ。って、あれ……」 

 

 激しくダメージエフェクトを飛ばしながら、鶏頭人が消えていった。

 

「今こそ……」 

 

 マーミンの詠唱の声が、小さくなって消えていく。振り返ってマーミンを見ると、なんとも言えない表情をしていた。


「えっと、あの……」 

「ふっ。切り札は最後までとっておくものよ。この程度の相手に、私の究極魔法はもったいなさすぎるもの」

「そうでござる。マーミン殿の手を煩わすほどの、相手ではないでござるよ」

 

 ラズベリーもうんうんと頷いていた。

 

『試練に打ち勝ちし者たちよ。受け取るがいい!』


>>>>>>>

勇気のトパーズ×1 を手に入れました

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 以前もらった烈火のルビーと同じ系統のアイテムみたいだ。装飾では使えないらしいから、なにかしら特別な意味があるのだろう。

 

 マーミンの究極魔法事件もうやむやになるし、ナイスタイミングの鶏頭人だ。

 

「装飾では使えない宝石のようでござるな」

「赤さんは知ってるの?」


 赤さんは右手を顎に当て、コクリと頷いて話し出す。

 

「他にも種類があるようでござる。ただ使用方法は不明でござるから、何も知らないのと一緒でござるな」 


 この宝石シリーズが、他にもあるとわかっただけでも収穫だ。どこにあるのかわからないから、積極的には無理だけれど、鶏頭人がらみで見つかりそうな気がした。

 

「どうやらここはこれで終わりみたいだね。面倒だけれど戻って、本来のルートへ行こう」 

「オーケー」 

「ポンポン送還、トツゲキング召喚」


 おもむろにパーティメンバーを入れ替えると、ラズベリーはキンちゃんの中へ潜り込んだ。

 

「上に戻ったら召喚しなおします」 

「召喚師の特権でござるな」

「いいわねぇ。私も一緒にいいかしら?」

「ごめんなさい。建前で主以外は無理って言ってます」


 建前かよ! と内心で思いながら、僕は広間から宝箱の部屋へと向かった。

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