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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
139/176

139.謎の祭壇

 通路は意外と長かった。

 

 転ばないように気をつけながら、僕はマーミンを追って走る。しばらく走ると、遠くに赤さんが立っているのが見えた。

 

「赤さん」


 こっちに気がついた赤さんが、右手をすっと上げてこたえる。

 

 赤さんのいるよりも遠くに、砕け散った岩が見えた。

 

「無事だったみたいね」 

「行き止まりでござったが、当たらずにすんだでござる」 

 

 僕らがたどり着くと、なにごともなかったかのように、赤さんが落ち着いていた。僕らが避けられたのだから、赤さんには余裕だったのかもしれない。

 

「あれを見るでござる」 

 

 僕らの呼吸が整ったのを確認すると、赤さんが通路の奥を指差した。

 

 岩が砕けた破片の向こうに、通路の壁が壊れているのが確認できる。

 

「もしかして、岩で通路の壁が壊れたの?」 

「むしろ罠の岩で、壁を破壊したとも言えるでござる。予想でしかないでござるが、これが先へ進む唯一の方法な気がするでござる」

 

 罠の流れを考えるに、最初に左へ行っていれば、この罠を解除していたかもしれない。右へ行くことで罠を発動させ、岩をかわして壁を壊す。

 

 壊れた壁の向こうに何があるのかわからないけれど、何かの空間が広がっているのがわかる。

 

「楽しみだね」 

「全員無事だし、壁の向こうに行きましょうよ」 

 

 赤さんを先頭に、僕らは先へと進んだ。

  

--------------------------


 崩れた壁の中に入ると、広い部屋が広がっていた。そして奥の方に、祭壇っぽい何かが見える。

 

「何かを祀っているようでござるな」 

「祭壇っぽいよね」

「ちょっとこわいです」

 

 ラズベリーがポンちゃんを抱きしめながら、僕に近づいてくる。

 

 なんとなくだけど陰気な感じが、雰囲気を暗くさせていた。

 

「近づいたら何かあるパターンかしら?」 

「罠のようなものはないでござる。ボスのような魔物が出現するでござれば、拙者にはわからないでござる」 

 

 広い空間で、遠くに祭壇がある。明らかに罠っぽいのに、なぜだか罠はないらしい。

 

 このまま様子を見ていても、何も変化はなさそうなので、隊列を組んで進むことにする。

 

「ルード。先頭よろしく」 

 

 ルードはコクリと頷くと、祭壇へ向けて歩いて行く。なにが起きてもいいように、僕らも警戒しながら進んだ。

 

「何も……起こらないわね?」 

「不思議だねぇ」 

 

 何も起こらないことに拍子抜けしながらも、僕らは祭壇らしきものの前に着いた。

 

 近づいたらわかったけれど、やっぱりここは祭壇だ。

 

「鶏頭人の像でござるか?」 

「クランクエストで見た事があるよ。どうやら鶏頭人を祀っているみたいだね」

 

 あのクエストの時は忘れ去られたとかで、襲われた気がするけれど、特にそういう様子もみられない。

 

「4体の鶏頭人の像があって、その下にプレート……謎解きかな」 

 

 僕はプレートを確認する。

 

『怒りを潤いを持って沈めよ。笑顔には果実を、悲しみにはパンを、無なるものには力を』


 短い文章だけど、それだけに比喩とかではなく、直接的な意味しかない気がした。

 

「謎解きというよりは、指示に従えば良さそうでござる。そこに果実の像とパンの像もあるでござる。鶏頭人の像の台座を回転させて、正面に怒りの像とかセットしながら、果実の像とかを与えれば楽勝でござろう」

 

 鶏頭人の像は、怒り、悲しみ、笑顔、無表情の4体がある。円形の台座に乗っているので、それを回せばよさそうだ。

 

「果実とパンはあるけれど、潤いはどうすればいいのかしら?」 

「最初から怒りの像が正面にあるよね。きっと台座を回そうとしても、今は回らないと思うんだ」 

 

 マーミンが台座を回そうと試したけれど、予想通りに動かなかった。

 

「どういうこと?」 

「果実やパンの像を乗せられる台座に、穴があいているでしょ? つまり潤いっていうのは、そこに水でも流せばいいのさ。それをやって初めて台座が回るという仕組みだよ。 多分ね……」


 僕の多分に、マーミンの顔が暗くなる。

 

「でも水なんて持ってるの?」

「マーミンの水魔法でいいんじゃない?」


 簡単に考えていたけれど、魔法は攻撃メインだし、対象に命中すると弾けて消滅するようだ。普通の水のように流し込むことはできないと、断られてしまう。

 

「だれか催してきた人はいない?」 

「システム的にできないし、何で潤す気なんだよ!」 

「冗談よ。ラルったら真面目さん」 

 

 これが本当の冒険ならば、その発想力には脱帽だ。でもこれはゲームなのだから、そんな事をさせるはずがない。

 

「安心するでござる。拙者が水筒を持っているでござる」 

 

 赤さんがインベントリから、竹製の水筒を取り出した。

 

「見た目だけのつもりでござったが、どうやら役に立つときが来たでござる」

「さすが赤さん!」 

 

 赤さんは台座の穴に向けて、水筒を傾けた。チョロチョロと水が流れ出し、まるで飲み込んでいるかのように、台座の穴へと流れ込んでいく。

 

 するとゆっくりと、鶏頭人の乗った台座が回りだした。

 

「自動で動くみたいだね」 

 

 ゆっくりと回った台座は、笑顔の鶏頭人を正面にしてとまった。

 

「笑顔には果実よね」 

 

 マーミンが台座に果実の像を乗せる。

 

 ピカッと果実の像が光ると、一瞬でなくなってしまう。それと同時に、再び鶏頭人の台座が回りだした。

 

「ふふっ。全自動だわ」 

「すごいです」 

 

 回転していた台座は、悲しみの鶏頭人を正面にしてとまった。

 

「これでパンの像を乗せればいいのね」 

「ちょっと待つでござる」 

 

 僕がマーミンを止めようとするより先に、赤さんが制止した。

 

「最後の力をと言うのは、おそらく無表情の鶏頭人が襲ってくるという意味でござる。みんな気持ちの準備をしておくといいでござる」

「オーケー」 

「大丈夫」 

 

 マーミンはみんなを見渡して、準備ができたことを確認すると、パンの像を台座に置いた。

 

 パンの像はピカッと光り、一瞬で姿を消した。鶏頭人の像の台座が回りだし、やがて無表情の鶏頭人が正面へと移動した。

 

『力を示せ!』 

 

 無表情の鶏頭人は光って消え、広間の中央に現れた。

 

「ここからが本番でござる」

「ルード。戦闘開始だ」


 予想通りの展開に、僕はワクワクしてしまう。

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