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召喚師で遊ぶVRMMOの話  作者: 北野十人
ロッカテルナ湖を攻略したい
137/176

137.宝箱の中身

 中に入ると前と同じように、5体の邪妖精と3体のタウロスガードが見えた。

 

「邪妖精はマーミンが、タウロスガードはルードが抱えてみんなで殲滅しよう」 

「オーケー」


 全員の了承を確認すると、マーミンがファイアショットを発動させる。

 

 5つの火の塊がタウロスガードの頭を越え、背後の邪妖精に命中した。

 

「相変わらずの高火力だね」 

「伝説の魔女に不可能はないのよ」


 なんだか懐かしいフレーズだ。

 

 向かってくるタウロスガード3体へ向けてルードが走り出すと、サークルアタックで迎撃した。

 

 雄叫びを使わずに、ダメージで注目を浴びる作戦のようだ。実際にマーミンはタウロスガードに攻撃をしていないので、それだけでルードに注目が集まった。

 

「ポンちゃん、やっちゃって!」 

「ポッポゥ」

 

 ぴょんと飛び上がると、ルードの右側にいたタウロスガードへ突進する。しかもよく見れば、あのふわふわだった毛が、うにの棘のようになっていた。

 

 もろに攻撃を受けたタウロスガードは、たくさんの多角形の板を撒き散らしながら消えていく。あんな針山みたいなのに突進されたらと考えるだけで、ちょっと背筋が寒くなる。

 

「ポンちゃん最高です!」


 戻ってきたポンちゃんを、ラズベリーはワシャワシャとしている。さっきまで硬くなっていたのがウソのように、柔らかくなってみえた。


 赤さんが矢を放ち、ルードが槍を突き刺した。

 

 攻撃力は十分な僕らのパーティは、ほどなくして魔物達を倒しきる。

 

「前よりも強くなっているし、赤さんもいるから、戦闘は楽になった気がするね」

「問題はあれでしょ。やっぱり今回もありそう?」 

 

 少し進んだ通路の真ん中に、前は落とし穴の罠があった。通らなければならない場所にあるので、安全に進むためには、どうしても罠解除の必要がある。

 

「拙者に任せるでござる」 

 

 赤さんが通路を進んでいくと、不意に屈んで床を見た。そこへさっと手をかざすと、一瞬通路がピカッと光る。

 

「ミニゲームなしで解除できたでござる」 

「さすがだね」 


 罠を安全に外せそうなことに安心したけれど、罠はどこにあるかわからない。

 

「ルードと赤さんが先頭で、ポンちゃんとマーミンが中央、僕とラズベリーが後ろって感じで進もう」

「それがいいでござるな」 

「オーケー」 

 

 僕らは隊列をそう決めて、さらに奥へと進んでいった。

 

--------------------------


 ハードのときよりも狭いかなと思ったけれど、その代わりという感じで、階層が深くなっていた。

 

 僕らは単調な狩りを続けながら、地下7階までやってきた。そして半分くらい探索した時に、罠の掛かった扉を発見する。

 

「ノーマルだと3階にある宝箱の部屋かな?」 

「迷宮の形も違うから、何があっても不思議じゃないわね」

「珍しい扉でござるな」


 赤さんがそう言いながら、扉の前に片膝をついた。

 

「珍しいの?」 

「罠だけでなく、鍵までかかっているでござる。よほど大事な何かが、この部屋にはあるのでござろうな」


 その言葉でワクワクが止まらなくなってくる。罠と鍵に守られた部屋には、どんなお宝があるのだろう。

 

「なにがあるんでしょうね」

 

 ラズベリーも期待しているようだ。

 

 そんな事を話していたら、扉がピカッと光る。

 

「微妙でござるな。罠も鍵も、それほど難しくなかったでござる」 

 

 重要そうに守る割には、難易度は低かったらしい。

 

 赤さんが扉を押し開くと、部屋の中央に台座が有り、そこに卵が飾られていた。

 

「すごい。格好いい杖だわ」 

「待つでござる!」

 

 二列目にいたマーミンが、すっと部屋の中に入ってしまう。釣られたのか、ルードもすぐに部屋の中に入る。

 

 するとカァンと鉄同士がぶつかった音が聞こえた。

 

「ルード殿に感謝でござる。そのままでよろしくでござる」 

 

 理由はわからなかったけれど、赤さんは部屋の床の方に手をかざした。やがて床全体が光ると、さっきまであったはずの台座も卵も消えていた。

 

「これは?」

「幻影の罠と矢の罠でござるな。仕組みはわからんでござるが、床に乗ると矢が飛んで来るようでござる」


 どうやらさっきまで見えていた卵は、幻影の罠だったらしい。お宝につられて部屋に入ると、矢が飛んで来るといういやらしい罠だ。

 

 お宝に注意を引いて、床の罠を発動させる。罠にかかった人は強欲とも言えるかもしれないけれど、罠の扉を開いた後で、欲しいお宝があったら、さらに罠があるなんて思わないだろう。

 

「罠に罠とか、迷宮の製作者の性格が悪いよ」 

「赤さん、ルード。ありがとう。助かったわ」


 幻影が消えた後には、なんども見たことのある宝箱に変わっていた。

 

「あの宝箱は本物?」 

「鍵がかかってござるが、本物でござる」


 赤さんは部屋の中を歩いて、宝箱の前で片膝をついた。

 

「これは鍵だけでござるな」

「ワクワクしますね」

 

 ラズベリーがポンちゃんを抱きしめながら、ニコニコとしている。僕も笑顔になりながら、なにが出てくるかなと楽しみで仕方がない。

 

 宝箱がピカッと光り、鍵開けが終わったことを教えてくれた。

 

「鍵開け成功でござる。開けてもいいでござるか?」 

「いいわよ」

「よろしく」


 赤さんがガバッと宝箱の蓋を開けた。

 

「あれっ?」


 少し待ってみても、ドロップログが出てこない。せっかくの宝箱なのに、コモンだったのかと、インベントリを確かめる。

 

「なにも手に入ってないわね」

「むむっ、どうやらこの宝箱は、宝箱ではなかったようでござる」

「どういうこと?」


 なんだかわからなくて、考えもせずに聞いてしまった。すると赤さんは、宝箱の中を指差した。

 

 僕は宝箱に近づいて、中を覗き込む。

 

「地下への入り口だ。宝箱はダミーだったんだ!」 

「へー。面白そうじゃない」 

「こんな仕掛けがあるんですね」


 宝箱の入り口がそれほど大きくないせいか、階段ではなく、はしごで降りていくタイプだった。

 

「赤さん、様子を見てきてくれる?」

「もちろんでござる。忍者の得意分野でござるよ」


 赤さんはヒョイッとはしごをつかむと、そのままスルスルと降りていった。

 

「身軽なのね」

「すごいです」


 おそらく1階か2階分くらい、はしごを降りた赤さんは、脇道があるのか、その姿が見えなくなった。

 

「迷宮の隠し道ってワクワクするよね」 

「そうね。楽しみだわ」


 ラズベリーはポンちゃんを抱きながら、ずっと下を覗いている。

 

「あっ、戻ってきました」

「降りても大丈夫でござる。まだまだ通路が続いているようでござるから、探索するでござる」

「オーケー」

「了解」


 誰から降りようかなと思ったら、ポンちゃんがポンっと飛び出して、はしごに絡みついた。あのふわふわな毛をはしごに括り付け、器用にはしごを降りていく。

 

「さすがポンちゃんですね。次は私が行きます」 


 ポンちゃんを追うように、ラズベリーがはしごを降りていく。誰一人怖いとか言うこともなく、やがてあっさりと全員がはしごを降りた。

 

「すぐ先にT字路なんだ」 

「どちらも先が長そうでござるよ」 

 

 特殊なルートかもしれないけれど、通路の広さは変わらないし、隊列はさっきのままでいいだろう。

 

「よし。未知なる道へ行こう」 

「オーケー?」

「行きましょう」

 

 ルードと赤さんは、なにも聞かなかったかのように、通路を進んでいった。

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